さらさ西陣
喫茶店文化が根づいている京都には、オシャレなカフェも数多くあります。特に「町家カフェ」と呼ばれる京都の町家を改装したカフェは観光客だけでなく、地元民にも人気です。今でこそ京都市内には多くの町家カフェが営業されていますが、京都の町家カフェブームの火付け役となったのはおそらく「さらさ」というカフェグループではないでしょうか。今から35年前の1984年(昭和59年)、富小路三条の町家にもの好きな若者たちがガラクタを持ち寄り、「さらさ」が始まったそうです。現在、富小路三条の店舗は新京極商店街の近くに移転し、本店格の「さらさ花遊小路」として営業されているほか、京都市内に5店舗を展開。各店とも若者を中心に賑わうなか、古い銭湯をリノベーションした個性的なカフェとして人気を集めているのが「さらさ西陣(さらさ にしじん)」です。


堀川紫明の交差点から鞍馬口通を西へ400mほど行ったところにあるこちらのお店は、19年前の2000年(平成13年)にさらさの2号店としてオープン。ドラマのセットのような古い銭湯や旅館を思わせる外観です。管理人はよく前を通るのですが、いつ見てもお客さんでいっぱい。ラストオーダー22:00ということで、たまたま近くにいたこともあり、21:15に店内へ入ってみました。




こちらもドラマに出てきそうなレトロな店内です。ホームページには“映画「千と千尋の神隠し」のお風呂屋さんの様な唐破風の屋根、格天井と呼ばれる立派な高い天井、和製マジョリカタイル全面張りのアンティークと呼ぶにふさわしい店内”と記載されています。管理人もそう思います。付け加えるなら、店内に掲出されている数々のポスターがアートな雰囲気を醸し出し、年代物のクラシカルな調度品など、遊び心にあふれた空間と言えるでしょう。もの好きな若者たちがガラクタを持ち寄って作ったとは思えない完成度ではないでしょうか。ではフードメニューを確認してみましょう。





フードメニューにも力を入れているお店だけあって、一般的なカフェ以上の充実ぶりです。個性的なメニューにも心惹かれますが、やはりここはカフェの王道メニューを試したいと考えていると「海老ピラフ」¥820を発見。メニューには“ピラフに海老入ってます”と記載されています。でしょうね。昔の喫茶店やカフェには当たり前のようにあったメニューですが、最近はあまり見かけません。実は管理人はエビピラフ評論家(自称)で数年前には数ヶ月間、さまざまなお店のエビピラフを食べ歩いていました。しばらくして飽きたためすっかりご無沙汰でしたが、今回は久しぶりとなる「海老ピラフ」といつもの「カフェオレ(ICE)」¥572を注文してみましょう。

まず「カフェオレ(ICE)」が到着。メニューに“さらさのカフェオレはミルク多めです”と書かれているとおり、かなりミルクが多めのアイスオーレです。個人的にはもう少しコーヒーを感じたい派ですが、ミルク好きな方には好まれる味わいなのかも知れません。まろやかでマイルドなカフェオレは、特に女性受けしそうな感じがしました。そしていよいよ「海老ピラフ」の到着です。

バターライスの香りが食欲を刺激します。具はシンプルにエビと緑・黄ピーマン、タマネギで、ドライパセリとパプリカが振られている正統派な一皿。思った以上にエビがたっぷりの「海老ピラフ」です。ピラフ自体、最近では喫茶店やカフェ、洋食店からも姿を消しつつあるメニューとなってしまいましたが、やはり手作りだとどうしても手間がかかってしまうからでしょうか。実際、ほとんどのお店で提供されているピラフは“洋風ヤキメシ”か“冷凍の既成品”のどちらか。本来はパエリアような“炊き込みご飯”なのですが、一人前を提供するは難しいのも事実です。“洋風ヤキメシ”でもピラフとして許容範囲だと思います。では、早速いただいてみましょう。

バターとコンソメの風味が香る、やさしく繊細な味わいです。あっさりとした薄味で胃にスルスルと入っていきます。エビの旨味とピーマンの苦味がアクセントとなり、ついつい食べ進められるおいしさ。具材の量も適切で、具材が多すぎるピラフはあまりおいしくありません。ピラフは米料理ですので、米の甘さが主張されているべきであり、こちらの「海老ピラフ」は十分においしいピラフだと感じました。ただ、できればマッシュルームは入れていただきたい。少量でもマッシュルームが入ると、より旨味の幅が広がると思います。「海老ピラフ」を食べ終えたものの、さらさの真骨頂は焼菓子ですので、「ダブルチョコレートケーキ」¥540を追加注文してみました。

ボリュームたっぷりの「ダブルチョコレートケーキ」をいただきます。“ダブル”というのはガドーショコラのようなチョコレート生地にチョコチップが入っているからだと思うのですが、チョコレートがとにかく濃厚!チョコレートの風味や味わいをダイレクトに楽しむことができる逸品です。生地は濃密ながらしっとりしていて、ガドーショコラにありがちなパサパサ感もありません。単調になりがちな味わいは、チョコチップとホイップクリームがアクセントとなり解決されています。チョコレート好きにはたまらないおいしさではないでしょうか。
店内の雰囲気からメニューまで、さすがは町家カフェの元祖とも言えるクオリティです。敏感な若者や女性から絶大な支持を受けているのもうなずけます。店員さんも全員若く、創業当時のコンセプトが現在にも息づいているのでしょう。カジュアルで普段使いでき、誰もが利用しやすいカフェです。京都のカフェ文化を体感したい方は訪問してみてはいかがでしょうか。京都市内にある6店舗はそれぞれが個性的ですので、各店を巡ってみるのもおもしろいかも知れませんね。
[2019年6月6日訪問]
さらさ西陣
●住所…京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
●TEL…075-432-5075
●定休日…年中無休
●備考…店内禁煙
●ホームページ
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