旬彩ダイニング 葵匠
鴨川デルタの西側、賀茂川に架かる出町橋。この橋の西詰が若狭よりつながる「鯖街道」の終着であり、この橋より西側が天下人となった豊臣秀吉により「洛中」と呼ばれる地域となりました。
そして河原町通の向かい側には、かつて鯖街道の終着地で多くの商人で賑わったであろう「出町枡形商店街」の入口があります。
今では地元民の台所として機能している商店街ですが、数十年前には不景気のあおりなどにより一時衰退していました。しかし商店街の人々の活躍により、最近ではまた活気ある商店街として多くの人が買物や観光に訪れています。そんな出町枡形商店街入口から河原町通沿いに50mほど北へ行くと見えてくるのが1875年(明治8年)創業の漬物店「田辺宗(たなべそう)」です。
管理人の自宅に近いこともあり、幼い頃から漬物と言えば田辺宗でした。昔は古くて薄暗い土蔵のような店舗で老舗感がハンパありませんでしたが、数年前に改築され美しい建物と家賃の高そうなマンションになっています。改築を期に2階で開業されたのが和食店「旬彩ダイニング 葵匠(しゅんさいだいにんぐ あおいしょう)」です。当然田辺宗の漬物も提供されている和食店で、地元のハイソなマダムや観光客で賑わっています。今回は町の古老(母)に命令され、田辺宗の漬物を買いに伺ったのですが、お昼どきということもあり「旬彩ダイニング 葵匠」でランチをいただこうと入店してみました。
1階は田辺宗の店舗となっています。140年を超える漬物と味噌の老舗ですが、漬物の価格自体は他の京漬物の老舗と比べてもそんなに高くはありません。しかも最近ではトマトの漬物やチーズの味噌漬けなども販売されていて、意欲的に商売をされています。さすがは根っからの商人(あきんど)、こうでなくてはこの一等地に巨大なマンションを建築できないのでしょう。もし管理人が田辺宗の社長だったら、もう漬物店は閉めてマンションの家賃収入という不労所得のみで毎日遊んで暮らしていると断言できます。漬物店で漬物を眺めながら妄想をしていても迷惑なだけですので、2階の「旬彩ダイニング 葵匠」へ向かうことにしました。
4名テーブル席4組と奥には掘りごたつ式の座敷があります。お店の向かいからは、以前REPORTした「COFFEE HOUSE maki」があるなど、周辺を見渡せる眺望です。落ち着いた和食店らしい雰囲気で、お一人様も利用しやすい感じでした。とりあえずランチメニューを確認してみましょう。
「お昼の御膳」は¥1,000台の価格でリーズナブルです。アルコール類や単品料理も充実していて、昼間からでも飲むことができます。弁当や会席も用意されていて、法事や会食などにも便利ではないでしょうか。今回はせっかく老舗漬物店が経営する和食店ですので、ノンアルコールビールと「京漬物寿司御膳(京漬物寿司八貫・天麩羅・赤だし・小鉢三種)」¥1,600を注文してみました。
目にも鮮やかな御膳です。いかにも京都マッダームが好きそうな感じですが、健康にも良さそう。天麩羅のキス天以外はすべて野菜です。管理人もアラフィフとなり、もう肉や油モノ、デカ盛りに歓喜する年齢ではありません。穏やかに、そして丁寧に暮らしていこうと思っていたところですので、野菜だらけの御膳もうれしく感じます。まずは小鉢からいただきましょう。
冷奴はナムル風のピリ辛味でゴマ油の風味が効いているおいしさです。トマトは店頭でも販売されているトマトの漬物。漬物というよりは甘酢で漬けこまれたピクルスのような味わいで、トマトの甘みと爽やかな酸味が強調されています。漬物と言えばご飯のお供ですが、アルコール類のツマミによく合いそう。ノンアルコールビールとともにいただくと、残暑も忘れる心地よさを味わうことができました。
天麩羅はサックサクでお菓子のような軽やかな仕上がりです。ナスやサツマイモ、青唐など、野菜の旨味を存分に引き立たています。天つゆもまろやかなごく薄味で軽やかな天麩羅とよく合いますが、できれば大根とショウガおろしがあればよりおいしくいただけたのではないでしょうか。この御膳唯一の動物性タンパク質であるキス天も旬の終わりでしたが、上品なおいしさを堪能できました。
そしていよいよ京漬物寿司8貫です。柴漬けやキュウリの浅漬、タクアン、カブ、キュウリの味噌漬けといったお馴染みのものから、カボチャやヤングコーン、タマネギといった変わりダネも楽しむことができます。一品一品異なる味わいに漬物の奥深さを感じ、京都人の漬物愛を改めて実感できました。また、漬物を寿司で楽しむことで、ノンアルコールビールもグイグイと進んでしまいます。お酒を飲まれる方ならツマミ兼〆の一品としてもピッタリでしょう。
本日は漬物を買いに来たつもりが京都らしいランチをいただくことができました。昼の御膳には「イベリコ豚朴葉焼御膳」¥1,600や「銀鱈西京焼御膳」¥1,600などもあり、肉や魚を食べたい方でも満足できるハズです。京阪「出町柳駅」から徒歩5分ほどの「出町枡形商店街」を散策ついでにでも、ランチやディナーで京漬物を楽しんでみてはいかがでしょうか。おみやげは1階の田辺宗で京漬物や味噌などがオススメですよ。
[2019年9月8日訪問]
旬彩ダイニング 葵匠
●住所…京都市上京区青龍町218
●TEL…075-213-3559
●定休日…なし
●備考…禁煙
●ホームページ
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