喫茶翡翠
皆さんは「純喫茶」と呼ばれる喫茶店をご存知でしょうか。最近ではほとんど見かけることもなくなりましたが、管理人が子どもの頃はかなりの数の喫茶店が「純喫茶」を名乗っていました。純喫茶とは簡単に説明すると“酒類(アルコール類)を提供していない喫茶店” を指します。喫茶店やカフェでもお店によってはビールやワインなどが用意されていますが、純喫茶を名乗る以上は酒類(アルコール類)を提供しないのが原則。もっとも、最近では酒類(アルコール類)を提供しない喫茶店も増え、もはやわざわざ純喫茶と名乗るお店は少数派でしょう。ただ“純喫茶”の響きがレトロっぽくてノスタルジーを感じさせます。年の瀬を迎え、今回はすっかり見かけなくなった「純喫茶」を名乗る「喫茶翡翠(きっさひすい)」を訪問してみました。
北大路通と堀川通の交差点(堀川北大路)北東角を東へ40mほど行ったところにある大きめな喫茶店です。1961年(昭和36年)創業の立派な昭和の純喫茶で、クラシカルな外観が目をひきます。京都には以前REPORTした「築地」など、いわゆる繁華街にあるレトロな喫茶店は数軒存在しますが観光客もターゲットとしている側面もあり、京都の情報誌など各種メディアで頻繁に紹介されているようです。一方、こちらのお店はほとんどが地元のお客さん中心で、地域に密着して60年近く営業されている穴場店と言えるでしょう。時刻は14:30、遅めのランチがてら早速店内へ入ってみました。
この重厚な内装や調度品から昭和の香りを感じさせ、映画やドラマなどの撮影にも使われています。店内へ入ると想像以上にキャパが広く、満席の心配はまずありません。そして時代を思わせるのがテーブルです。だいたいは一般的な木のテーブルなのですが、ところどころゲーム機になっているテーブルが設置されています。40歳代後半以上の方にとってはピンとこられるでしょう。1979年(昭和54年)、日本で一大ブームを巻き起こしたコインゲーム「インベーダーゲーム」が大流行し、当時の喫茶店はこぞってテーブルになるゲーム機の筐体を導入。学生もビジネスマンもコーヒーなどのドリンクを飲みながら100円硬貨をテーブルに積み上げ、ゲームに熱中していました。その影響を受け、さまざまなゲーム機の筐体がテーブルとして使用されるものの、より収益性の高いポーカーゲーム機が増加。賭博性のあるゲームだったことが災いし、当局から摘発される喫茶店が続出、以降テーブルとなるゲーム機は姿を消しました。そんな昭和の“負”の時代を思い起こさせるゲーム機(もちろん違法性のない健全なゲーム機)が設置されているのも地元に密着したお店の証拠ではないでしょうか。ではメニューを確認してみましょう。
こちらは軽食だけでなく、洋食なども豊富に用意されていて定評があります。定食類も充実していてランチにもピッタリ。地元の方がフラっと気軽に立ち寄れるリーズナブルな価格設定です。そしてもちろん純喫茶ですので酒類(アルコール類)は提供されていないハズですが、「フライドポテト」¥400などのおつまみの一番下にシレっと「サッポロポテト」のような雰囲気で「サッポロビール」¥750が記載されています。…厳密に言えば純喫茶とは呼べないのでしょうが、「サッポロビール」1種類のみのため大目に見ましょう。オッサンのお客さんの中には、どうしてもビールを飲みたい方もいらっしゃるでしょうからね。今回は洋食メニューの中から「チーズハンバーグ定食」¥900とプラス¥330のセットドリンクから「ブレンドコーヒー」を注文してみました。
お弁当形式の「チーズハンバーグ定食」が到着。ご飯とほぼ変わらないサイズのハンバーグは自家製だそうで、人気メニューです。柴漬けが添えられているのもニクい心配りで京都らしさを感じます。ピリ辛で韓国料理風の肉の煮込みもご飯によく合う、喫茶店とは思えないオカズの充実ぶり。一般的な定食店を比べても遜色のない味だと感じました。それではチーズハンバーグをいただいてみましょう。
自家製とわかるフワトロなハンバーグです。この柔らかさが心地よく、食べると肉汁が口の中にあふれ出てきます。ソースはデミグラスソースではなく少し甘めのトマトベース。ウスターソースや中濃ソースが合わせられていて、喫茶店のハンバーグらしさがなつかしくもあり、おいしく感じました。とろけるチーズもフワトロなハンバーグと絶妙にマッチしています。これはやはりご飯のオカズで、箸が進むハンバーグと言えるでしょう。
純喫茶ですので「ブレンドコーヒー」も本格派。しかも最近では珍しくなった布フィルターを使ったネルドリップ方式で淹れられています。ペーパーフィルターに比べて口当たりがまろやかでコーヒー好きから根強い人気があるものの、布フィルターの洗浄などに手間がかかるため、フィルター抽出のお店ではペーパーフィルターが圧倒的に主流。そんな状況にあっても布フィルターを使われているのは、コーヒーへの愛着とこだわりが相当強いからでしょうか。確かに昭和の喫茶店の時代から親しまれてきた濃厚で香り高いコーヒーをじっくりと堪能することができました。休日や空いた時間にゆっくりと昼下がりを楽しみたい時、こちらの食事やコーヒーでのんびりとしたひとときを過ごしてみられてはいかがでしょうか。昭和をなつかしむ方はもちろん、昭和を知らない平成世代もぜひ一度利用していただきたいと思います。
[2019年12月21日訪問]
喫茶翡翠
●住所…京都市北区紫野西御所田町41-2(Google マップ)
●TEL…075-491-1021
●定休日…なし
●備考…喫煙可
●ホームページ
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