60年近く地元の名店として人気の餃子専門店

中華編
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龍園

京都で餃子と言えば日本一のメガ中華チェーンにまで成長した「餃子の王将」(以下、王将)が最も有名でしょう。ボリュームたっぷりで低価格、しかも実は餡も丁寧に作られていて、たまに王将の餃子が無性に食べたくなります。そして見逃せないのが独立系の餃子専門店です。京都はなぜか餃子を愛する人が多く、餃子専門店の名店が少なからず存在しています。京都の情報誌などでも頻繁に京都の餃子専門店を特集していて、観光客が集まり行列ができていることも珍しくない昨今。そんな中、メディアにはあまり登場していないものの、地元の方に厚い支持を受けている昔ながらの餃子専門店があります。

三条通千本通の交差点(千本三条)を西へ300mほど行き、七本松通を南へ250mほど行ったところにある餃子専門店「龍園(りゅうえん)」。昭和の中華店らしい外観で、ノスタルジーすら漂うお店です。管理人がこの辺りをウロウロしていた頃にはすでに営業されていて、少し調べてみると開業は1962年(昭和37年)。現在まで60年近くに渡って地元の方を中心に多くのお客さんに愛されてきたお店と言えます。12時〜1時過ぎぐらいのお昼どきは常に満席。お一人様からグループまで、さまざまな方がこちらの餃子を求めて足を運ばれます。時刻は13:40、そろそろ混雑も緩和されている頃合いですので、店内へ入ってみましょう。

座席はカウンター席のみ10席程度のコンパクトな店内。オープンキッチンの厨房には餃子の皮マシンと作りたての餃子の餡が置かれています。こちらは今ではほとんど見かけなくなった、注文が通ってから皮を作って餡を詰め、焼くスタイル。昔の大衆中華店はだいたいこの作り方で、暇な時に生餃子を大量に作ってタッパーなどに保存していたのは王将など一部の大型店に限られていました。冷静に考えれば作り立ての生餃子を焼く方が、作り置きの生餃子を焼くよりもおいしいという訳ではないのでしょうが、何となく作り立ての方がおいしそうに思えます。多分気のせいですが。ではメニューをご覧ください。

こちらに訪問される方のほとんどは、「ぎょうざ」を注文されます。メニューはシンプルで「ぎょうざ」にライスなどが付く定食は14時までの限定商品。もちろん「ぎょうざ定食(中)」¥800を注文するつもりだったのですが、ちょっと趣向を変えて今回は「ぎょうざ定食(小)」¥620と「ラーメン」¥600を注文してみました。ちなみに「ぎょうざ定食」の大・中・小は餃子の個数の違いで、大がおそらく16個、中は12個、小は8個となります。

なぜか「ラーメン」が先に到着してしまいました。この琥珀色のスープから発せられるかぐわしい香りは、子どもの頃によく食べた大衆中華店の中華そばを彷彿とさせます。シンプルなビジュアルは京都の名食堂「篠田屋」の中華そばなど、老舗店に共通した上品さが感じられ、ラーメンや中華そばの源流である中国の拉麺・拉面によく似ていると言えそうです。まずはスープからいただきましょう。

鶏ガラスープの風味と醤油の味わいが、薄味ながらスッキリとしたおいしさです。見た目以上にあっさりとしていて、いくらでも飲めそうな味わい。ただ、最近の凝ったラーメンに食べ慣れている特に若い方にとっては、少し物足りなく感じるかも知れません。イマドキのラーメンは“鶏ガラ+豚骨”とか“鶏ガラ+魚介系”などのダブルスープはもはや当たり前で、トリプル以上の旨味をかけ合わせたスープが人気です。実際、旨味や奥深さは昔ながらの中華そばやラーメンでは太刀打ちできないでしょう。しかし、管理人のようなミドル以上の世代は、鶏ガラと香味野菜だけで仕上げた醤油ラーメンがたまに食べたくなります。年齢を重ねると、雑味のない洗練された滋味や旨味といった、和の料理にも通じる味わいをおいしいと感じるようになるのでしょうか。

麺は細めの中華麺、具もあっさりとした醤油味のチャーシューと、昔ながらの味わいです。麺が柔らかめなのは京都流。たま〜に中華料理店でラーメンを注文して“麺は固めで” などと麺の茹で加減を指示される方がいらっしゃいますが、個人的にはお行儀のいい行為ではないと考えています。お客さんが麺の茹で加減を指定できるのはラーメン店、しかも店内などで茹で加減を選べると明示していたり、店員さんが麺の固さを尋ねてくるお店限定でしょう。大衆中華料理店であれ、高級中華料理店であれ、少なくとも中華料理店に“お客さんが麺の固さを指定する”文化はありません。調理人が思う最適なタイミングで麺を茹で提供しているハズで、よほど常連で調理人と親しい間柄でもない限り、単なるワガママオーダーではないでしょうか。もし中華料理店で麺の固さや餃子の焼き加減に不満があれば、そこでは麺類や餃子は注文しなければいいのです。何ならそこの店へは行かなければいいだけのこと。最近、何回か自分を神様と勘違いしているお客さんを目にすることがあり、つい柄にもなく意見を申し立ててしまいました。気を取り直していよいよ本命の「ぎょうざ定食(小)」をいただきましょう。

小サイズとは言え、餃子8個と十分なボリュームです。スープはいわゆる青湯と呼ばれる中国伝統のもの。醤油味ではなく塩とコショウで味付けされています。鶏ガラスープと香味油の風味がよく効いた、先ほどのラーメンスープ以上にさっぱりとした、ホッとする味わいです。

餃子のつけダレはオーソドックスな酢醤油ラー油と味噌ダレがテーブルに設置されています。酢醤油は自分で調合する昔ながらのスタイル。昔はどこの中華店でも“餃子のタレ”なんてものはありませんでした。個人的には酢多め&ラー油多めが好みですので、自分で塩梅を決められるのは高ポイントです。始めは酢醤油ラー油で餃子をいただきます。

まず皮がおいしい!現在主流のパリッとした食感ではなく、モチッ&フワッとしたやさしい食感です。皮自体にも味があり、水餃子やワンタン、ラビオリをイメージさせる、舌に馴染む味わい。もちろん焼き餃子の香ばしさは損なわれていません。餡はニンニクがよく効いた、ガツンとした旨味が直接脳へ届く“これぞ焼餃子!”な逸品です。酢醤油ラー油で食べると、安定感のある昔ながらの焼餃子でビールが欠かせないでしょう。味噌ダレは味噌のコクと餃子の旨味が相乗効果となって、これはもう白メシです。白メシがグイグイ進む、食いしん坊のためのオカズではないでしょうか。

こちらは11時〜19:30までの通し営業です。ランチタイムである12時〜13時をはずせば、多少の混雑はあるでしょうが、待つことなく着席できると思います。最近でこそ観光客などもチラホラと目にするようになりましたが、基本的には地元の方に長年愛されてきた餃子の名店。餃子の地方発送もされていますが、京都に観光や商用で訪問された餃子好きな方には、ぜひ一度お店で試していただきたい味わいです。意外(?)と女性のお一人様も来店されますので、どなたでも気軽に伺えるのではないでしょうか。

[2020年2月23日訪問]

龍園
●住所…京都市中京区壬生神明町1-132(Google マップ
●TEL…075-811-7501
●定休日…月曜日
●備考…喫煙可(?)
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「龍園」で検索してください。

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