みや古食堂
京都ではかつて、さまざまな定食店や食堂が営業していました。特に「大力食堂/大力餅食堂」や「千成食堂/千成餅食堂」などは、京都府内のアチラコチラに点在していて、全国チェーン店だと勘違いしている京都人も多数見受けられるほど。そんな定食店や食堂は昭和の頃、子どもからお年寄りまで幅広い層の食欲を満たす代表的な飲食店でした。しかし時代が平成に移ると食文化の多様性がより顕著になると同時に、店主の後継者問題なども浮上し、昔ながらの定食店や食堂が徐々に姿を消していきます。京都は学生の街でもあり、貧乏な学生でも利用できる定食店や食堂は薄利多売の営業形態。現在でも後継者問題は深刻で、さらに今回の新型コロナウイルスによる影響もあり、続々と閉業されているのが現状です。そんな問題を抱えている定食店や食堂ですが、それでも頑張って営業を続けておられるお店も少なからず存在します。昭和の京都市内では「大力食堂/大力餅食堂」や「千成食堂/千成餅食堂」に次いで店舗数が多かった「みや古食堂/みやこ食堂」も、今では管理人が知る限り京都市内に3〜4軒ぐらいが営業中。その中から今回は、同志社大学今出川キャンパス近くにある「みや古食堂(みやこしょくどう)」を訪問してみました。
烏丸通と今出川通の交差点(烏丸今出川)から北へ650mほど行ったところにある食堂で、地下鉄「鞍馬口駅」から徒歩3分程度と便利な立地にあります。近隣の同志社大学や大谷大学などの学生はもちろん、地元民や近隣のビジネスパーソンなどで賑わう繁盛店です。そんなこちらのお店でも2年ほど前でしょうか、閉業を伝える貼り紙がされていました。お店の方は皆さんご高齢であったため、仕方ないのかなぁ…と思っていたのですが、どのような経緯があったかは知らないものの、現在はその貼り紙もはずされ、営業を続けておられています。管理人も子どもの頃には幾度もお世話になったお店です。これからもできる限り続けていただきたいと願っています。時刻はちょうど12時、まずは店頭のメニューサンプルを確認してみましょう。
食堂の王道メニューが並びます。「きつねうどん」¥420や「玉子丼」¥480などは¥400台という安さ。ヘタな学食より安い、お財布にも優しい価格設定です。¥1,000を超えるメニューはありません。これぞ昔ながらの食堂です。学生が多い立地上、値上げもほどほどに抑えられているのでしょうが、これでは続けるのは難しいと思わざるを得ません。とは言え、現在の競合店は大資本のコンビニです。コンビニの麺類や丼はおおむね¥300〜¥500であり、学生にとってはうどん1杯¥800のお店は利用しづらいでしょう。せめて社会人の皆さんには、少しぐらいお高くても定食店や食堂を利用していただきたい、と思います。アラフィフのオッサンのタワゴトかも知れませんが、定食店や食堂の味は思い出に残る味であり、人生を豊かにする味だと考えているからです。少なくとも管理人は、若い頃にコンビニでアルバイトをしていたにも関わらず、コンビニの食事で思い出に残っているものはほとんどありません。単に物忘れがヒドくなっているだけかも、ですが。では、店内へ入ってみましょう。
昼どきだけあって、多くのお客さんで賑わっています。訪問したのが土曜日であったため学生は少なめ、ミドルやシニアは多めの客層でしたが、ご近所の方でしょうか、若い女性も食事をされていました。当然、お一人様での利用も多く、特にお一人様の学生を見かけた時はうれしくなり、勝手に応援したくなります。定食店や食堂の味を知っている学生は、社会でもきっと伸びる。大学の先生方や大企業の経営陣、人事部でも気づいていないであろう真理を、サラッと書いてしまいました。なぜなのか、エビデンスはあるのか、などの質問には一切答えません。先生や経営者、人事のプロで優秀な方なら気づくハズですからね。ではメニューを…と、こちらで注文するメニューは決まっています。それはこちらの名物である「肉鍋ライス」¥700。¥700で牛肉の定食が食べられる、とってもリーズナブルなメニューでおそらく人気ナンバーワンでしょう。お茶とヤカンを持って来られたご年配のオカアサンに「肉鍋ライス」をお願いします。
名物の「肉鍋ライス」が到着しました。薄切り牛肉に白菜、ネギ、麩などが入っている肉鍋は、関西風のすき焼きでも関東風の牛鍋でもなく、大阪が本場の「肉吸い」に近い料理です。肉吸いとは簡単に説明すると“肉うどんのうどん抜き”であり、かなりのツユダク具合が特徴。もっともこちらの肉鍋は、肉吸いよりも具だくさんです。この肉鍋に小袋の七味唐辛子をかけていただくと、こたえられないおいしさ。早速いただきましょう。
京都風のやさしく甘いめのうどんダシに牛肉や野菜の旨味が溶け出した汁の味わいが見事です。牛肉や野菜、玉子まで付いて、食べごたえも十分。お安い牛肉ながら、上品な味に仕上がっていて、さすがは名物と呼べる逸品ではないでしょうか。心身ともに温まる気取らないおいしさで、庶民のご馳走と言っても過言ではありません。こちらでは「肉鍋ライス」だけでなく、麺類や丼、各種定食類も安定した味を提供されています。何を食べてもガッカリすることはまずありませんので、昭和の食堂の底力を感じてみたい方は、ぜひ足を運んでみてください。
[2020年5月30日訪問]
みや古食堂
●住所…京都市上京区相国寺門前町647(Google マップ)
●TEL…075-441-1597
●定休日…日曜日(不定休の場合あり)
●備考…禁煙
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「みやこ食堂」で検索してください。
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