喫茶マリヤ
かつて、西陣千本商店街を中心とした千本通界隈は、京都ナンバーワンの繁華街・四条河原町に匹敵する賑わうを見せていたそうです。管理人が幼い頃、今では考えられない盛況ぶりだった千本通界隈の話を祖父母から聞いたので多分、昭和初期の頃だったのではないでしょうか。ここからは想像になるのでお許しいただきたいのですが、おそらくは市電(しでん)が通っていたため、交通の便も悪くなく人通りも良かったのではないか?と勝手に考えています。市電とは京都市交通局が運営していた路面電車で、1978年(昭和53年)に撤廃されました。管理人もわずかに記憶している程度で、市電は現在の市バスに置き換えられたことをうろ覚えながら覚えています。そんな千本通界隈の賑わいの面影が感じられるレトロな喫茶店を訪問してみました。
千本通と今出川通の交差点(千本今出川)を南へ600mほど行ったところにある「喫茶マリヤ」。現在ではレトロな昭和の喫茶店といったイメージですが、開業当初は当時最先端なモダンデザインであることが「マリヤ」のロゴタイプなどからも推察されます。このキリスト教文化の影響を受けたであろう店名やフォント、外観のレンガ風建物は、大正モダニズム(大正ロマン)そのもの。新しいモノ好きな京都人の気質を今に伝える貴重な喫茶店と言えそうです。客層はほぼ地元の方で占められていて、地域に根づいた喫茶店として今なお現役で活躍されています。時刻は14時、まずは店頭のメニューサンプルを確認してみましょう。
京都の喫茶店の特徴である「フード系が充実」を、こちらでもしっかりと実践されています。特に各種洋食メニューは洋食店にも負けないクオリティであり、ネット情報では創業60年!とのこと。水商売と言われる飲食店の中でも開店閉店が激しい個人経営の喫茶店にあって、60年の歴史は驚嘆に値します。どんなビジネスであっても60年経営するのは難しく、企業努力も相当なもの。そんな貴重な喫茶店へ早速伺ってみましょう。
クラシカルな雰囲気ながら清潔感のある店内。従業員は皆さんご年配の方々で客層もシニア多めながら、若いお客さんも多数見受けられます。そしてさすがは昭和の喫茶店、こちらは全面喫煙可。タバコを吸わない方にはオススメできませんが、今や喫煙可の飲食店をほとんど見かけない状況であることを考えると、本当に貴重なお店です。パチンコ店ですら禁煙のご時世、愛煙家にとってはパラダイスのようなお店ではないでしょうか。こちらではメニュー表はありません。店内のメニューサンプルでメニューを確認します。
食事メニューのセットドリンクはなぜかコーヒーではなくコーラ、というのもハイカラですね。そもそも喫茶店にコーラがある時点で、ほぼ昭和のお店と断定できます。昔はコーラはとても珍しいドリンクで、管理人の曾祖母が経営していた駄菓子屋でも一番人気。近所のオッちゃんやオバちゃんはコーラを飲みながら“薬みたいな炭酸やなぁ〜”と言っていたことを思い出しました。どんな薬を飲めばコーラが連想されるのか、管理人にはよくわかりませんが。さて、こちらに数ある洋食メニューの中でも、管理人イチオシなのが「カツカレー」¥650です。コーラ付なら¥750。カツカレーが¥650なのもちょっと驚きでしょ?一般的な飲食店のカツカレーなら¥1,000超えも当たり前の今の時代に¥650。昭和から時間が止まっているかのような価格設定ですが味は確かですのでご安心ください。今回は「カツカレー」と「ホットコーヒー」多分¥380(不正確な記載で申し訳ありません)を注文してみました。
「カツカレー」が到着。カップサラダ付きです。欧風カレーの芳しい香りに包まれます。こちらのカレー類は手作りで、家カレー的なおいしさが評判。ジャガイモやニンジンなどの具がゴロゴロと入っていてイマドキのカレーにはないワクワク感があります。紙ナプキンで包まれたスプーンも昭和スタイルで、管理人が学生時代に喫茶店でアルバイトをしていた際も、このスプーンに紙ナプキンを包む作業をひたすらしていました。こちらの包み方は正統派で高度な技術が求められます。管理人は生き方だけでなく手先も不器用なため、これほど美しく包むことはできません。では「カツカレー」をいただきましょう。
サクサクに揚げられたロースカツと欧風カレーのコンビネーションは最強レベルです。しかもこちらのカレーは牛肉もたっぷりと入ったビーフカレーで、カレーだけでも¥650以上の価値は十分あります。欧風カレーの濃厚なコクにほどよい辛味がマッチして、ご飯との相性も抜群。そこにロースカツが加わるのですから、価格を遥かに超える満足度となっています。この近辺の方々の憩いの場として60年に渡って愛され続けているのも納得できる味わいではないでしょうか。
食後には「ホットコーヒー」です。こちらもコーヒーの香りと味わいが脳をガツンと刺激する、古きよき時代の喫茶店の「ホットコーヒー」。眠たい目もシャキッとする味わいです。こちらは喫茶店ですのでドリンクメニューだけでの利用ももちろんOK。西陣千本商店街や二条城近辺にお越しの際には、こちらまで足を伸ばされ、ランチや喫茶を楽しまれてはいかがでしょうか。作られたレトロさではなく、京都の歴史が自然と育んだ本物のレトロな喫茶店がここにはありますよ。
[2020年10月25日訪問]
喫茶マリヤ
●住所…京都市上京区亀屋町58(Google マップ)
●TEL…075-464-0465
●定休日…なし
●備考…喫煙可
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「喫茶マリヤ」で検索してください。
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