PHOTO・COFFEE 鈴屋
まったく知らない飲食店に初めて訪問するのはワクワク感やドキドキ感があります。当ブログでは基本、行ったことがある飲食店のREPORTがほとんどで、初訪問のお店であったとしても存在自体は知っているお店ばかり。少なくとも西京区・山科区・伏見区・南区を除く京都市内であれば、新しめのお店ならともかく、古くから営業しているお店で存在すら知らないなんてあり得ないと思っていました。が、しかし。先日、twitterのフォロワーさんから大量のオススメ店を教えていただいた際、“これはどこ?”という1軒が目に留まりました。ちょっと調べてみると、管理人がかつては週末にほぼ必ずウロウロしていた京都三条会商店街のすぐ近くだと判明。しかも創業は1946年(昭和21年)と、75年の歴史があるとのこと。なんか悔しい。もしウッカリ90歳ぐらいまで長生きをしてしまったら、誰も知らないのをいいことに京都の飲食店の近代史を偉そうに語ろうと思っていたのに得意分野の洋食店や喫茶店、しかも土地勘のあるエリアでまさかの未訪問、まさかの存在未確認店があったとは。これはすぐにでも訪問して、未訪問&存在未確認店の黒歴史を解消しなくてはと考え、京都三条会商店街へと向かいました。
三条通と千本通の交差点(千本三条)から京都三条会商店街の千本通側の入口を東へ150mほど行き、スーパーフレスコ三条店を南へ50mほど行ったところにある「PHOTO・COFFEE 鈴屋(ふぉと・こーひー すずや)」。外観からしてクラシカルな喫茶店で、昭和の喫茶店が大好きな管理人がなぜこちらを見落としていたのかまったくわかりません。“PHOTOって何?”と思い観察していると“D.P.E”の文字が。最近の方には意味がわからないかとは思いますが、デジカメやカメラ機能付き携帯電話が登場するまで、撮影した写真はフィルムに記録され現像という工程を経てプリント(印画紙出力)されていて、DPEとは撮影フィルムの現像所のこと。今でも一部で根強いファンを持つ使い捨てフィルムカメラ「写ルンです」で撮影した場合、現像しないと写真そのものを見ることができません。平成の中盤ぐらいまでは街中のいたるところに現像所があったものですが、デジカメなどの普及に伴い急速に減少、今では現像できる場所はカメラ専門店や家電量販店などに限られます。こちらで現在でも現像をお願いできるかはわからないものの、デジカメが普及するまでは街の現像所兼喫茶店として地元に浸透していたのでしょう。そんなノスタルジー漂うこちらに12:50、入店してみました。
これはもう、まごうことなき昭和のクラシカルな喫茶店です。店内には“スタジオ”の文字があってステンドグラス調の扉がありますので、現像だけでなく、カメラスタジオ(写真館)としても使われていたのでしょう。こちらは7時〜14時までの営業で、主な活動時間が昼過ぎ〜深夜の管理人が気づけなかった理由なのかも知れません。お客さんはいかにも地元な方ばかり、店主は上品なシニアマダムと、地元に愛されている喫茶店と言えそうです。ではテーブルに設置されてあるメニューを確認してみましょう。
トーストなどの軽食から「海老フライ・ライス」¥1,800といった本格的な洋食まで用意されていて、さすがはフードメニューのこだわりがハンパではない京都の喫茶店です。特にカレー各種が名物のようで、「スペシャルカレー」¥1,500など贅沢なカレーも楽しめそう。サンドウィッチをこよなく愛する管理人は「海老フライサンド」¥1,000や「ビーフカツサンド」¥1,300などにも心惹かれたものの、こちらを教えていただいたtwitterのフォロワーさんが「海老シチューピラフ」¥1,100の写真をアップされていて、どうせなら同じ料理をいただきたいと考えていたため、今回は「海老シチューピラフ」を注文してみました。
カップサラダが付いた「海老シチューピラフ」が到着。ダムカレー?のような造形で、クグロフ型に抜かれたピラフの中央に海老シチューが入れられています。このビジュアルを見た瞬間、昔の喫茶店では“ホワイトシチュー+ピラフ”の組み合わせは、クリームピラフやシチューピラフなどの名称で割とよくあったメニューだと思い出しました。最近の喫茶店ではほぼほぼ絶滅したメニューであり、管理人もすっかり忘れていた料理です。ハヤシライスのホワイトシチュー版であり、ドリアに近い料理ながら、喫茶店に行きまくっている管理人でもこちらで久しぶりに目にすることができました。遠い遠い青春時代の旧友と再開したかのような涙なしには語れない感情を抱きながら、涙を拭って旧友をガブリといただきます。
ピラフはカレー風味でドライカレーほどの辛味はないものの、ピリ辛な味わいで食欲が高まる味わい。そこにあっさりめのミルキーでマイルドなホワイトシチューが加わり、絶妙なバランスのおいしさとなっています。よく考えれば管理人はもう何十年もホワイトシチューを食べていないことに気づきました。ビーフシチューやタンシチューなどのブラウン系シチューは洋食の定番メニューであり、いただく機会も多いのですが、ホワイトシチューは洋食店でも用意されているものの注文することはありません。おそらく洋食店では主に女性やお子さんに好まれるシチューであり、メインで活躍する場は自宅ではないでしょうか。自炊ならビーフシチューよりホワイトシチューが定番化されていて、市販のホワイトシチュールーのCMは冬の風物詩となっています。
海老シチューは海老の旨味とさっぱりとしたホワイトシチューが絶妙な味わいです。近頃発売されている市販のホワイトシチュールーはかなり濃厚な味をめざして改良されているようですが、こちらの海老シチューは素材の味を素直に堪能できる手作りのおいしさがあります。ミルキーながらクドさはまったくなく、おそらく食べ飽きることはないでしょう。何よりミルクや生クリーム、バター以外の余計な脂肪分はまったく感じられず、海老などの具材の味が活きています。クリームシチューやグラタン、ドリア、中華の定番料理である白菜のクリーム煮など、ホワイトソース系の料理は食べ進むに連れちょっとその味に飽きるのですが、こちらのあっさりとした海老シチューであればいくらでも食べられそうです。
コーヒーも苦味が効いた濃厚なブレンドコーヒーで昭和の喫茶店を現代に体現されています。イマドキのシアトル系カフェチェーンなどにはない深い味わいは、人生の味と言えなくもないような気がしないでもありません。地元の方に愛されて75年の歴史が刻まれた料理やコーヒーの数々を、ゆったりと愉しむことができる空間です。京都の喫茶店文化には欠かせない1軒ながら間違いなく穴場店ですので、京都三条会商店街や二条城近くまでお越しの際には、ぜひ一度立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
[2021年1月30日訪問]
PHOTO・COFFEE 鈴屋
●住所…京都市中京区壬生馬場町15(Google マップ)
●TEL…075-841-9041
●定休日…第2・第4日曜日
●備考…禁煙(?)
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「鈴屋」で検索してください。
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