広東料理 開花(かいほう)
現在、京都でドラマや映画の撮影のメッカと言えば京都市右京区にある太秦(うずまさ)エリアでしょう。時代劇が少なくなり、また、このコロナ禍でロケや撮影所での撮影は少なくなっているとは思いますが、それでもいくつかのドラマなどでは京都を舞台としていることもあり、太秦エリアの撮影所も稼働していると思います。太秦エリアにある撮影所の中でも「東映京都撮影所」は規模も大きく、多くのドラマや映画の撮影現場となっており、隣接する嵐電「撮影所前駅」も京都市民や映画・ドラマファンに親しまれている駅です。周囲には飲食店も点在していて、著名なスターや役者が足繁く通うお店も少なくありません。その中でも「東映京都撮影所」からほど近くにある中華料理店は、2017年(平成29年)3月に逝去された渡瀬恒彦さんがお気に入りだったお店として知られています。
三条通と京都府道132号太秦上桂線(通称:梅津街道)の交差点(太秦)を西へ450mほど行き、道を北へ90m、Y字路を東へ30mほど行ったところにある「広東料理 開花(かんとんりょうり かいほう)」。「東映京都撮影所」の真向かいにあり、嵐電「撮影所前駅」から徒歩1分の便利な場所にあるお店です。手間暇かけられた自家製麺を使った麺メニューが有名ですが、町中華のメニュー全般に高いクオリティの料理を提供されています。時刻は12:10、早速店内へ入ってみましょう。
いきなりメニューの写真4連発で肝心の店内写真がないのは、お客さんが次々に入店してこられて撮影するタイミングを逃してしまったからです。申し訳ございません。カウンター席とテーブル席がある店内は清潔感があり、ゆったりとした配置ですのでお一人様でもグループでも利用しやすい雰囲気。このコロナ禍でお昼どきとしてはお客さんが少なく感じるものの、人気店らしくお一人様や家族連れが食事を楽しまれていました。ランチでは麺メニューや麺類のセットメニューを注文されるお客さんがほとんど。ちなみに渡瀬恒彦さんは「辛いラーメン(おろしにんにく入り)」¥900をよく召しあがっておられたそうです。管理人は渡瀬恒彦さんほどハンサムでも演技が上手なわけでも喧嘩が強いわけでもありませんので、「辛いラーメン(おろしにんにく入り)」ではなく「冷麺(並)」と「ミニ(焼き飯・中華丼・海老玉丼・鶏玉丼)」のいずれかが付く「冷麺(冷やし中華セット)」¥1,050をチョイス。今回はミニ鶏玉丼を注文してみました。
まずは「冷麺(並)」が到着。酢醤油ベースのスープで、具はチャーシュー、錦糸玉子、キュウリのシンプルスタイルです。昭和の時代の町中華店の冷やし中華を思われるビジュアルで懐かしい感じ。こちらの「冷麺」は夏季限定ながらゴールデンウイークから10月初旬までと、5ヵ月間ほど味わえます。最近、やっと夏らしい猛暑、というか厳しい残暑の日々が続いており、冷やし中華を食べるには絶好の気候となりました。では早速いただきましょう。
細麺ながら自家製麺らしいコシ強めの食感がおいしい。酢醤油ベースのスープにはカラシが仕込まれていて、ピリリとした辛味も心地よく、昔ながらのオトナな冷やし中華の味わいです。チャーシュー、錦糸玉子、キュウリの3種類の具も、具の種類が少ないからこそ、それぞれの味がよくわかります。チャーシューは本格的な中華の焼豚で、麺やスープとの相性も抜群。錦糸玉子のほのかな甘みやキュウリの清涼感も味のアクセントとなっています。暑い夏にピッタリな、食べるごとに食欲が増していく正統派の冷やし中華ではないでしょうか。
そして「ミニ鶏玉丼」です。中華風親子丼といったビジュアルで、この鶏玉は京都中華の祖である高華吉氏の名物メニューの1つ「鳳凰蛋」。玉子と鶏肉、タマネギの中華風オムレツといったところでしょうか。高華吉氏が手掛けられた複数の中華料理店で修行された料理人がそれぞれ独立され、京都市内には高華吉氏の味を伝承されている中華料理店が今なお数軒は営業されているものの、「鳳凰蛋」は芙蓉園や中国料理 龍鳳など、一部のお店でのみ提供されています。こちらの大将が高華吉氏のお店で修行されたかはわかりませんが、「鳳凰蛋」を「かしわ(鶏)の玉子焼き」¥600として単品メニューでも提供されているので、おそらく無関係ではないと感じています。
玉子がトロトロの火加減で中華餡と合わさって絶品です。そして味付けはやはり高華吉氏の「鳳凰蛋」を彷彿とさせる、どこまでもやさしいまろやかな味わい。こういう味加減は一歩間違えるとボンヤリとした味になりがちなのですが、この鶏玉は心にもやさしい絶妙なおいしさです。丼になると、幼児の頃に大好物だった玉子丼を思い出します。管理人も来年で50歳となり、戦国時代であればそろそろ寿命を迎えるお年頃なのですが、こちらの「ミニ鶏玉丼」を食べながら“50年生きてきて随分と薄汚れてしまった”と気づいてしまいました。幼児の頃は玉子丼さえ食べていれば幸せだったのに、今はいろいろなものを食べておいしいだのまずいだのと思うことこそあれ、日々の生活で幸せを感じることなどまったくありません。幸せを実感できるピュアな心がいつの間にか失われ、毎日どうすれば働かずにお金が儲かるか、かわいい女性が向こうから言い寄ってくれないかなとか、そんなことばかり考える薄汚れたダメ人間になっていました。お父さん、お母さん、ごめんなさい。こちらの料理を食べて皆さんがご自身の人生を反省されるかどうかは知りませんが、京都の町中華の味を楽しめることは保証いたします。近隣は「東映太秦映画村」や広隆寺などの古刹も多い観光スポットですので、コロナ禍が終息した際にはぜひ太秦エリアで観光され、こちらで幸せなおいしさをご堪能ください。
[2021年8月28日訪問]
広東料理 開花(かいほう)
●住所…京都市右京区太秦西蜂岡町9-99(Google マップ)
●TEL…075-881-9320
●定休日…日曜日
●備考…禁煙(?)
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「開花(カイホウ)」を確認してください。
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