富錦亭
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言も解除され、京都の街にも活気や賑わいが少しずつ戻ってきているように感じます。外国人観光客はまだあまり目にすることはないものの、他都道府県ナンバーの車は随分と見かけるようになりました。京都市内も近頃はグッと冷え込み、つい数週間前までクーラーを使用していたのに、今では暖房を使われている方も少ないのではないでしょうか。京都に来られる方は気温の寒暖差が激しい時期であり、新型コロナウイルスだけでなく体調には十分に気をつけてお過ごしいただきたいと思います。そんな京都の、特に京都市内で最も人気がある観光スポットの1つと言えば、“京の台所”とも呼ばれる錦市場でしょう。
地元の人だけでなく、近隣の飲食店でも古くから利用されてきた錦市場は、卸売市場さながらの豊富な品揃えと質の高さで、近年では京都有数の観光スポットとして新型コロナウイルス感染拡大前は外国人観光客だらけとなっていました。鮮魚や青果だけでなく、京都の名物・名産でもある漬物やお茶など、さまざまな食材を目で見てお店によっては試食も楽しむことができます。子どもの頃から錦市場に親しんできた管理人にとって、錦市場を最も感じることができるのは淡水魚販売店の多さです。隣県の滋賀県・琵琶湖産のホンモロコやフナ、コイ、稚アユ、湖産エビなどを生や加工して販売されていて、他の地域では食べることができない味を堪能できます。管理人は子持ちフナの飴炊きが大好物で、子どもの頃は両親によく買ってもらって食べていました。久しぶりに錦市場に伺い、子持ちフナの飴炊きを購入しようか迷ったのですが、さすがに独り身では食べきれないので諦めました。最近興味がある風水でいずれ黒ギャルと結婚できるハズですので、所帯を持ってから黒ギャルのような色合いの子持ちフナの飴炊きを購入して嫁(黒ギャル)と二人でいただきたいと思います。サテ、錦市場に立ち寄ったからには訪問したい洋食店へ久しぶりに伺ってみることにしました。
四条通と河原町通の交差点(四条河原町)を西へ400mほど行き、富小路通を北へ120mほど行ったところにある洋食店「富錦亭(ふうきんてい)」。富小路通と錦市場のある錦小路通の交差点を南へすぐの場所にあり、おそらくそこから「富錦亭」と名付けられたのでしょう。昔からある洋食店で、錦市場の関係者をはじめ、地元の方などにも古くから人気のお店です。普段使いに最適な洋食店であり、価格もマチナカにあるとは思えないほどにリーズナブル。手軽に地元で愛されてきた洋食を楽しめる名店です。こちらは10時から16時までの通し営業で、10時にガッツリランチを食べることも可能。市場関係者にも配慮された営業時間となっています。時刻は11:30、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。
ほとんどのお客さんは5種類ある¥980均一の定食類を注文されます。が、「カツカレー」¥1,130や「ミックス定食」¥1,150、「洋食弁当「¥980」などもあり、洋食店らしいラインナップ。喫煙可のあたりも昔ながらの昭和の洋食店といったおもむきです。こちらのような通し営業の場合、管理人は昼過ぎまでダラダラ過ごすのが好きなダメ人間ですので、本来は14時や15時にお店へ伺うことが多いのですが、今回は気力を振り絞ってランチで混み合う12時前に到着しました。その理由は、こちらの定食の“ご飯”にあります。こちらの定食の“ご飯”は「炊き込みご飯」がデフォルトなものの、なくなるとホワイトライスが提供されるシステム。つまり、14時や15時ではせっかくの炊き込みご飯がホワイトライスに変更されている可能性がとても高く、チョッピリ損した気分になるのですよ。“洋食に炊き込みご飯は合うのか?”と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうが、合う合わないの問題ではなく、オッサンという生き物は炊き込みご飯となるとなぜか色めき立ちソワソワする性質があります。医学や人類学などに詳しい方は、なぜオッサンは炊き込みご飯を溺愛するのか、ぜひ教えていただきたい。年齢も見た目もプロのオッサンである管理人も11:30ならさすがに炊き込みご飯にありつけると安心し、店内へ入ってみました。
鰻の寝床のような店内にはお客さんがいらっしゃいませんでした。ゆったりと食事できると着席した瞬間、7名ぐらいのグループが入店して来られ、慌ててオカアサンに注文しようとメニューを急いで検討します。こちらでは何を食べても間違いないものの、お得感で考えれば「ビーフカツ定食」です。「トンカツ定食」も「チキンカツ定食」も同じ¥980。牛・豚・鶏を比較すると、一般的な価格では“牛>豚>鶏”もしくは“牛>豚=鶏”でしょう。近所のスーパーマーケットで検証したので間違いありません。最も高価な牛肉のカツと豚肉や鶏肉のカツが同じ価格で提供されていることからも、お得が大好きな管理人としては「ビーフカツ定食」一択です。最近“牛カツ”と呼ばれるビーフカツ(またはビフカツ)が東京でも人気と、あるテレビ番組で放送されていましたが、京阪神を中心とする関西エリアではビーフカツの歴史は古く、京都でも昔から馴染みある料理でした。本場であり発祥は海外との交易が盛んであった神戸市とされているものの、個人的には明治時代の初頭に日本文化の中心地である京都へ西洋料理が伝わり、ビーフカツが供されるようになったのでは?と思っています。知らんけど。何はともあれ、炊き込みご飯をゲットするべく、オカアサンに「ビーフカツ定食」をお願いしてみました。
最高です!このボリューム感で¥980は、もはや現代の奇跡と言えるでしょう。しかもビーフカツと炊き込みご飯ですよ?自宅で再現しようとしても¥980では絶対にムリ。お料理上手のステキな奥様が家族分を作るのであれば一人前¥980は可能かも知れませんが、独身貴族のオッサンでは絶対にムリ。そもそも炊き込みご飯を1合分作っても、多いめの二人前ぐらいできてしまうので、お茶碗1杯分の炊き込みご飯は作れないのです。味噌汁だけなく、付け合せのフライドカボチャやキノコパスタ、デザートのフルーツの盛り合わせなど、充実した内容も¥980では再現不可能。近頃コロナ禍で自炊をしていてつくづく感じるのですが、自炊って結構コスパが悪い。もちろんヤリクリ下手のせいもあるのでしょうが、管理人のような雑なオッサンには大量に作って小分けにして保存、などがメンドクサくて仕方がない。しかもしばらくは同じ料理を食べ続けないといけないし。だんだんおいしく感じなくなるし。やはりお一人様はお店選びさえ間違えなければ外食が一番コスパが良いと実感します。と、ひとしきり独身中年のグチを吐き出したところで、ビーフカツをいただきましょう。
赤身と脂が適度に入った牛肉です。最近でこそ高級店や価格の高いビーフカツほどブ厚く、ミディアムレアのような仕上がりのものが多い傾向ですが、こちらのようにステーキより少し薄めの牛肉で揚げるのが本来のビーフカツ。ビーフカツはもともとステーキのような高級品ではなく、庶民のご馳走でした。ステーキにするには少し硬めのお手頃価格の牛肉を、肉を叩くなどの処理をし、ラードで揚げることでリーズナブルに贅沢な味わいを生み出す料理です。こちらのビーフカツもラードの香ばしい風味が食欲をそそり、噛むと柔らかな牛肉の旨味を楽しむことができるクラシックスタイルのビーフカツだと感じました。もちろん最近のブ厚いビーフカツもおいしいのですが、価格面ではやはり高級品で、日頃から頻繁に食べられるシロモノではありません。街の定食店感覚で気軽にいただけるビーフカツとしては質・量とも十分なレベルです。また、おそらく味噌か醤油をベースにウスターソースなどを調合された昔なつかしい味のサラッとしたソースもビーフカツによく合います。
そしてオッサン歓喜の炊き込みご飯です。通年提供されていますが、やはりこの時期のシメジの炊き込みご飯は格別。どこか郷愁を誘うあっさり味でありながらダシとシメジの味わいがクッキリと楽しめます。この炊き込みご飯は食べないとモッタイナイので、ぜひ早い時刻に訪問して味わってください。こちらは¥1,000でオツリがくるお手頃さでありながら、本格的な洋定食をいただける貴重なお店です。観光などで錦市場にお立ち寄りの際には、お土産に淡水魚などの生鮮食品を購入しつつ、ランチで昔から京都人に愛されてきたこちらの手軽な洋食をぜひお試しください。
[2021年10月19日訪問]
富錦亭
●住所…京都市中京区西大文字町601(Google マップ)
●TEL…075-241-2378
●定休日…日曜日
●備考…喫煙可
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「富錦亭」をご確認ください。
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