喫茶クラウン
“ご当地飲み物”と呼ばれる、その都道府県や地域でのみ愛飲され知名度が高い飲み物があります。例えば「レモン牛乳」。関西人である管理人にはまったく馴染みもなく想像もつかない味なのですが、栃木県ではメジャーな飲み物だと、以前テレビ番組「秘密のケンミンSHOW極」で紹介されていました。京都のご当地飲み物は…ちょっと思い浮かびません。ただ、自分たちにとっては当たり前に全国区の飲み物だと勘違いしていたものの、実はご当地飲み物だった、という可能性はあります。管理人は学生の頃に京都市内の喫茶店でアルバイトをしている際、当たり前のように提供していた飲み物が「ミックスジュース」で、しばらくしてほぼ関西圏限定の飲み物であることを知りました。発祥は大阪市の喫茶店らしく、管理人が子どもの頃にはすでに京都市内でもミックスジュースは当然のように飲まれており、喫茶店はもちろん、デパートやショッピングセンター、駅などのジューススタンドでも販売され、ミキサーを使って作られているご家庭も少なくなかったと思います。そして同じ大阪市の発祥ながら「ミックスジュース」ほどメジャーにはならず、京都市内の喫茶店でもほとんど見かけることがなくなったマボロシの“ご当地飲み物”を提供している喫茶店を訪問してみました。
葛野大路通と五条通の交差点(葛野大路五条)を南へ210mほど行ったところにある「喫茶クラウン」。店頭には車を10台ほど停められる駐車場があり、阪急「西京極駅」から徒歩4分程度と、交通アクセスも便利なお店です。こちらは間違いなく昭和の喫茶店で、支店?としてほぼ同じメニューを提供されている「八条店」があります。管理人は喫茶店好きで長年、京都市内の喫茶店をウロウロしているものの、マボロシの“ご当地飲み物”をメニューに記載されているお店はこちらしか知りません。そしてさんざんマボロシの“ご当地飲み物”と引っ張っていますが、管理人は飲みません。なぜなら…それはこちらのメニューを拝見しながら理由を述べさせていただきます。こちらは7時〜18時の通し営業となっていて時刻は14:40、早速店内へ入ってみましょう。
思った以上にオオバコな郊外型の昔ながらの喫茶店ながら、連日かなり混雑する人気店です。もちろん昭和の喫茶店ですので時代と逆行しているかのように喫煙可。タバコが得意でない人にはオススメできません。このような昭和の喫茶店はたいていミドル&シニア男性の巣窟となっているのが常なのですが、訪問した日はたまたまかも知れないものの若い男性客が多く、ちょっとビックリしました。わずかに女性客も見受けられ、さすがは喫茶店だけあってグループよりもお一人様での利用の方が多い印象です。管理人はこちらではランチ利用が多く、店内には休日の昼下がりにノンビリと食事をするのにうってつけの、ゆったりとした時間が流れています。ではメニューを確認してみましょう。
サテ、まずは例のマボロシの“ご当地飲み物”から。お飲み物の欄にある「キューピット」¥490です。おそらく、京都市民でももはやほとんどの人はご存知ないのでは?というほど、マボロシとなった飲み物ではないでしょうか。管理人が子どもの頃はおぼろげながら、当時の個人経営の喫茶店では提供されていたお店も数軒はあったように記憶しています。この「キューピット」、実はカルピスをコーラで割った飲み物で、一説にはノンアルコールカクテルとして大阪市内のバーで提供されたのが発祥なのだとか。原液のカルピスを冷水ではなくコーラで割った飲み物…想像してご覧。それはもうとんでもなく甘い飲み物なのです。管理人は幼児の頃に初めて飲んで“甘っま!!!”と衝撃を受けたのを昨日のことのように覚えています。あくまで個人の感想ですが、飲み物なのに喉が渇く系の飲み物で、管理人は幼児の頃に飲んで以来飲むことはなく、これから先も飲む予定はありません。ただ、京都市内では貴重な昭和の関西ご当地飲み物ですので、甘いものがお好きな人はぜひトライしていただきたいと願っています。マボロシの“ご当地飲み物”「キューピット」はこれぐらいにして、今回はランチとして「洋風弁当」¥950と「食後のコーヒー(アイス)」¥290を注文してみました。
「洋風弁当」が到着。こちらではトーストやサンドイッチ類、「ピラフ」¥690やカレー、スパゲティー各種といった軽食だけでなく、一般的な定食に相当する弁当も5種類と充実しています。喫茶店の焼肉定食をこよなく愛する管理人は「焼肉弁当」¥900も魅力的だったのですが、ここは洋定食の代表格とも言える「洋風弁当」に決めました。ちなみに最高額メニューは「トンカツ弁当」¥1,000で、食事だけなら¥1,000以下で楽しめます。ただ、喫茶店ではやはり食後のコーヒーはいただきたい。通常、単品の「コーヒー」¥410または「アイスコーヒー」¥430ですが、食事とセットの場合はホット・アイスを問わず¥290プラスで大丈夫です。「洋風弁当」のメインはそれぞれにタルタルソースがかけられた3種類の揚げ物となっており、左からエビフライ・コロッケ・ミンチカツの陣容。ではコロッケからいただきます。
“エッ?クリームコロッケ??”と一瞬、勘違いしそうな、とにかくクリーミーなポテトコロッケです。ジャガイモの風味は確かに感じられるものの、マッシュポテトなどのちょっとざらつく粒子感はまったくなく、なめらかな舌触り。おそらくミルクか生クリームで伸ばしたタネで揚げられているのでしょう、単なるポテトコロッケにはない甘さも感じられます。この甘さは例えるなら昔のお肉屋さんのコロッケの自然な甘さに近く、タルタルソースとも意外に良く合うと思いました。ただ、ご飯のオカズとしては少々物足りないため、合わせて提供される瓶のウスターソースの出番です。ウスターソースとポテトコロッケは合わないハズもなく、ご飯のオカズとしても有能。久しぶりにポテトコロッケをオカズにご飯を楽しむことができました。
ミンチカツも洋食店などの本格的なものではなく、昔懐かしいミートコロッケの挽き肉多め、といった味わいです。こちらも昔のお肉屋さんで提供されていたミンチカツに近いと感じました。そしてもちろん、ご飯のオカズとしてはウスターソースは必須でしょう。洋食店に行き慣れてしまうとウスターソースを使う機会はめっきりと少なくなるのですが、今回は改めてウスターソースの実力を再認識できました。スパイシーな刺激とフルーティーな酸味と甘味が複雑に調合されていて、デミグラスソースの原型でありながらデミグラスソースにはない親しみやすさと、明治時代から日本人に愛された懐かしい味わいが食欲を高める、まさに万能ソースです。特に揚げ物では真価を発揮し、管理人はあまり言いたくはないのですが、天ぷらは自宅限定ではあるものの天つゆではなくウスターソース派です。本当は天ぷらなら自宅でも抹茶塩、とか言って嘘でもツウぶりたいのですが、勢いでカミングアウトしてしまいました。
「食後のコーヒー(アイス)」も昭和の喫茶店らしい、濃厚な苦味とコクがある正統派の味わいです。コーヒー好きならおそらくミルクもシロップも要らないでしょう。ちなみに注文時、甘さアリナシを尋ねられますので、アイスコーヒーの味を純粋に楽しみたい場合は甘さナシをお選びください。管理人が激甘飲み物を苦手でさえなければ「キューピット」をREPORTするのですが、「キューピット」の良さがわからない人間が無理やりREPORTしても意味がありませんので、今回は控えさせていただきました。とは言え、一時期は間違いなく大阪や京都で人気があったご当地飲み物ですので、昭和の味を懐かしみたい人や甘い飲み物がお好きな人は試していただければと思います。飲み物だけなく、軽食や弁当各種もリーズナブルで気軽に楽しめますので、ランチだけでなく小腹が減った際にも、ぜひ。
[2022年9月11訪問]
喫茶クラウン
●住所…京都市右京区西京極東大丸町62(Google マップ)
●TEL…075-311-5673
●定休日…第1・第3日曜日
●備考…喫煙可
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「喫茶クラウン」でご確認ください。
コメント