欧風キッチン しのん
日本で洋食の本場として挙げられるのは江戸時代末期に開業された日本初の西洋料理店「良林亭」があった長崎県や、西洋料理店の草分けの1軒として1872年(明治5年)から今なお営業されている「精養軒(現:上野精養軒)」の東京都、江戸時代末期から海外と交流があった横浜港周辺の神奈川県などでしょうか。関西では横浜市同様、海外交流が盛んな港町の神戸市や、関西経済の中心地である大阪市、そして京都市も古くから洋食文化が根付いていて現在でも多くの洋食店が営業されています。当ブログでも洋食の老舗店や有名店を何軒かREPORTしていますが、老舗店や有名店は昔ながらの高級レストランが多く、雰囲気的にも価格的にも小心者の管理人にはひとりで訪問できないお店も少なくありません。とは言え今では多くの洋食店が庶民派のお店で、誰もが気軽に利用できるカジュアル店なのも事実です。洋食好きの管理人としてはテレビ番組や情報誌などのメディアで頻繁に登場されている老舗店・有名店も好きなのですが、それ以上に地元の人のみがコッソリと楽しんでいる街の洋食店に心ひかれます。テレビ番組や情報誌はもちろん、ネットでも取り上げられることはほどんどない、まさに地域密着型の手軽な洋食店。今回はそんな1軒を訪問しようと、双ヶ丘へ向かいました。
天神川通と御池通の交差点(天神川御池)を北へ700mほど行き、屋内スイミングプール「スイトピア」の建物北側の道を西へ90m、細い道を北へ30mほど行ったところにある洋食店「欧風キッチン しのん」。住宅街に突如出現する飲食店であり、交通経路が少しわかりにくいため、初めて訪問される人はGoogle マップをご覧ください。こちらはJR「花園駅」から徒歩6分、嵐電「蚕ノ社駅」から徒歩8分程度と交通アクセスが便利なうえ、専用駐車場はないものの近隣の双ヶ丘周辺ならコインパーキングもありますので車でも行きやすいです。こちらのお昼の営業時間は11:30〜14時で本格的な洋食をいただけるランチメニューを用意されています。
こちらのランチメニューの定番はメイン料理2種類を選べる「おすすめランチ」¥1,300でしょう。サラダにライス、コーヒーなどのドリンク類とデザートまで付いています。もちろん同じくサラダ、ライス、ドリンク類、デザートが付く「えびフライ」¥1,650や「サイコロステーキ」¥2,600、「ビーフストロガノフ」¥2,700など、プチ贅沢なランチにもオススメです。時刻は13:40、早速店内へ入ってみましょう。
6名程度が座れる2名テーブル席と4名テーブル席を合わせた1卓と2名テーブル席2卓、4名テーブル席2卓のコンパクトな店内。洋食店らしいシンプルで清潔感のある雰囲気です。お昼の営業時間ギリギリにも関わらず、地元か近隣にお勤めと思われる女性2名グループ2組が食事をされていました。2名テーブル席があるため、お一人様でも気軽に利用できそうです。こちらのディナーメニューは撮影できませんでしたが、夜は洋食だけでなく西洋料理も提供されていて、記念日などハレの日の食事会などにもピッタリではないでしょうか。では改めてランチメニューを確認してみましょう。
初めての訪問なら「おすすめランチ」です。メイン料理は次の写真のメニューから2種類選べます。
19種類のメインメニューは以前から固定されていて、「鱧の天ぷら」や「かれいの姿あげ」といったお魚好きにもうれしいラインナップとなっています。以前伺った際、“鱧の天ぷら?かれいの姿あげ??”と洋食店らしからぬ料理だったことから覚えていました。おそらく女性シェフのこだわりなのでしょう。王道洋食あり、京都らしいハモの天ぷらもあり、四川料理の代表格・エビチリまである、老若男女が喜ぶメニュー構成。お客さんの気持ちや嗜好を考えたランチメニューと言えます。今回は「おすすめランチ」、メイン料理はかなり悩んだものの、ここは王道中の王道メニューである「ハンバーグ」と「海老クリームコロッケ」をチョイスしました。やはり洋食店の味を確かめるには、お店の腕がわかりやすい王道料理をREPORTするのが一番ですから。「おすすめランチ」の「ハンバーグ」と「海老クリームコロッケ」、食後のドリンク(コーヒーまたは紅茶のホット・アイス、オレンジジュース、リンゴジュース)からホットコーヒーをお願いすると、ウエルカムドリンクならぬウエルカムサラダ?が運ばれてきました。
サラダボウルにたっぷりのグリーンサラダです。ドレッシングはニンジンドレッシングとゴマドレッシングの2種類をかけ放題。食料品の相次ぐ値上げにも関わらず、このたっぷりのサラダはお得でしょう。洋食店のドレッシングと言えばニンジンドレッシングですが、そもそもなぜ洋食店でニンジンドレッシングが普及したのか、ちょっと調べてみたもののイチ洋食好きの管理人には“コレ!”といった理由を見つけることができませんでした。もし洋食に詳しい人や料理人でご存知の人がいらっしゃればぜひ教えてください。そんな洋食店ではお馴染みのニンジンドレッシングとゴマドレッシングでサラダを完食。これなら野菜不足も解消できると喜んでいると、メインのセットが到着しました。
ハンバーグにエビクリームコロッケ2個、付け合せはポテトサラダと茹でブロッコリー。ダイコンの味噌汁とライスは何とお替わり自由!提供時に店員さんから“ご飯はお替わりできますよ”と伝えられ、食事中にも“ご飯はお替わりできますよ”とシェフから声をかけられる徹底ぶりです。何ですか、この嬉しすぎるサービス悪魔の誘惑は。管理人も本当はライスのお替わりをしたい。でも50年間常時ダイエット中の身としては、ライスのお替わりはご法度なのです。それにライス自体、一般的なお茶碗1膳分より少し多めで、ひょっとして管理人の体型から察してご飯のお替わりサービスを勧めていらっしゃるのでは…?と、疑心暗鬼になりかけました。しかし実際には誰でもライスのお替わりはOKですので、ご飯をもっと食べたい人は遠慮せずご厚意を無にすることなくお替わりしましょう。
デミグラスソースたっぷりの「ハンバーグ」です。このデミグラスソースはさすがは洋食店の本格的な味わい。濃厚で奥深い味ながらビターさはほとんどなく、女性やお子さんでも食べやすいソースに仕上がっています。このソースに香ばしい「ハンバーグ」と肉汁の味わいがベストマッチ。ライスにも良く合うおいしさです。付け合せにポテトサラダや茹でブロッコリーも、このデミグラスソースを付けて食べるとこたえられません。ドリンク類やデザートまで付いて¥1,300は、かなりリーズナブルに感じました。
「海老クリームコロッケ」ももちろん本格派洋食店の味わい。なめらかでクリーミーなコクが豊かなベシャメルソースに、小エビがしっかり。エビクリームコロッケやカニクリームコロッケで“甲殻類はいずこへ???”と必死に捜索してしまう科捜研に依頼レベルのクリームコロッケを食べることも少なくない一方、こちらのようにエビやカニを味わえるのも良心的なお店の証です。あくまで管理人の経験ですが、エビやカニの味がしないクリームコロッケを提供している店舗でも、コーンクリームコロッケだけはなぜかコーンの味がするのも一層ムカつきます。エビクリームコロッケやカニクリームコロッケは、こちらのようなしっかりとした洋食店などの飲食店で食べないとストレスを感じますのでご注意ください。
食後のホットコーヒーと、デザートはわらび餅でした。わらび餅とはまた懐かしい味です。現在では和菓子店だけでなくスーパーやコンビニでも販売されていて多くの人に愛されるわらび餅は、管理人にとっては子どもの頃の引き売り、つまり移動販売の味。昭和後期ぐらいまででしょうか、初夏から秋にかけて京都市内のそこら中の道や路地にリヤカーなどを引きながらわらび餅が売られていました。春〜秋はわらび餅、秋〜冬は焼きイモの引き売りを商いとされていた人も多かったように記憶しています。焼きイモはまれに軽トラックなどで移動販売されているところを見かけるものの、わらび餅の引き売りを目にすることはなくなってしまいました。わらび餅は本来、本わらび粉を使用して作られていましたが、本わらび粉は希少で高価なため、和菓子の本場である京都でも一部の和菓子店などでしか本わらび粉のわらび餅は提供されていません。管理人も含めてほとんどの人にとって馴染み深いのは、イモなどのデンプンで作られた¥100〜¥200前後のわらび餅でしょう。管理人が幼い頃に買っていた引き売りのわらび餅は当時、おそらく¥50ぐらいだったと思うのですが、それぐらいの価格でないと子どもには買えません。オトナになってわらび餅を食べる機会などなくなり、久しぶりにわらび餅のモチモチッとした食感とキナコ、黒蜜の甘さを堪能できました。本格的な洋定食にドリンク、デザートが付いてお値打ち価格のランチをいただける良店です。穴場な洋食店ですので、洋食好きならぜひお試しください。テイクアウトも充実していてオススメですよ。
[2022年12月9日訪問]
欧風キッチン しのん
●住所…京都市右京区太秦和泉式部町8-9(Google マップ)
●TEL…075-882-8890
●定休日…木曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…Instagram
※さらに詳細は食べログ「欧風キッチン しのん」でご確認ください。
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