前田商店 力餅食堂
当ブログの「自家製麺 だいりき」や「千成食堂」のREPORTでも少しふれましたが、関西にはチェーン店ではない個人経営のお店でありながら同じような屋号の食堂が営業されています。以前のREPORTでは代表的なお店として「大力食堂/大力餅食堂」、「力餅食堂」、「千成食堂/千成餅食堂」と御三家のようにお伝えしていたものの、京都市内では「相生食堂/相生餅食堂」も有名なため、餅食堂界の四天王といったところでしょうか。「相生食堂/相生餅食堂」はまたタイミングをみてREPORTするとして、いずれの餅食堂も同じ屋号でありながらお店によってメニューがかなり異なります。どのお店も古いお店なのは間違いありませんが、代替わりしているお店はメニューも進化していて定食類が充実している傾向にあるようです。一方、昔ながらのメニューにこだわり続けているお店も存在し、多くはうどん、蕎麦、中華そばの麺類と丼、赤飯や餅のみを提供されています。定食類はほとんどなく流行などとは無縁の、店構えから内装まで昭和の食堂を今に伝えるお店。数は少なくなったものの、独特のノスタルジーがあり、昭和世代だけでなく平成・令和世代にとっても新鮮ではないでしょうか。そこで今回は餅食堂界の四天王の一角「力餅食堂」から、時が止まっているかのような昔なつかしい1軒を求めて、鞍馬口エリアへと向かいました。
鞍馬口通と烏丸通の交差点(烏丸鞍馬口)を西へ140mほど行ったところにある「前田商店 力餅食堂(まえだしょうてん ちからもちしょくどう)」。管理人が幼児の頃にはすでに老舗店の風格があり、もうどのぐらいの歴史があるのかサッパリわからないほど年季の入ったお店です。客層はほぼほぼ地元の人と近隣にお勤めのビジネスパーソン、たま〜に同志社大学や大谷大学など近くの学校の学生が利用する、完全に地元密着型の食堂と言えるでしょう。このエリアの飲食店は昔ながらのお店とスタイリッシュなカフェなど新しいお店が共存していて、地元民から学生まで飲食には困らないと思います。こちらは地下鉄「鞍馬口駅」から徒歩3分程度とアクセスも便利。現在の営業時間は11時〜15時と昼のみの営業となっていました。時刻は13:50、早速店内へ入ってみましょう。
ランチとしては遅い時刻にも関わらず、訪問した日はお一人様ばかり4名ほどのお客さんが食事を楽しまれていました。意外?に広い店内で4名テーブル席がズラリと並んでいますが、お一人様でも安心して利用できます。まさに激シブな昭和の食堂といったおもむきです。管理人が自らの子ども時代を思い出させる、ゆったりとした時間と空間が流れているような印象を受けました。そう、昔はオトナも子どもも、もっとノンビリとしていたように感じます。いつの頃からでしょうか、物質的に便利で豊かになったものの、何となく人々から心の余裕が失われていったような気がしないでもありません。もちろん今さら昭和時代の不便な生活には戻れないものの、こちらに座ってみてかつてあった寛容さのようなモノを思い出させてくれるお店だと実感しました。ではメニューを確認してみましょう。
うどん・蕎麦などの麺類と丼が中心のメニュー構成です。京都のお店らしくうどん類では「あんかけ」¥500や「たぬき」¥600といった餡かけ系が人気。また、「中華そば」¥600も現在のラーメンとは異なる鶏ガラ醤油の素朴な味わいが評判となっているようです。そして餅食堂ですので「まんじゅう各種」¥120や「赤飯」¥160、「お(オケソク)餅」¥60などもラインナップ。「お(オケソク)餅」とは白くて丸い小餅のことで、京都の人なら仏壇やお墓、お地蔵さんにお供えされているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。京都人?関西人?は“お粥さん”や“お芋さん”などのように、なぜか食べ物にも“お”や“さん”を付ける不思議な風習があり、白くて丸い小餅も“オケソク”や“オケソクさん”と呼ばれています。ただ“おパクチーさん”とか“お牛タンさん”とは言わないので、何でもかんでも“お”や“さん”を付けているワケではありません。サテ、今回は久しぶりに「他人丼」¥800をいただきます。管理人は他人丼普及協会の会長を自称しており、全国に数名はいらっしゃるであろう他人丼愛好家にとっては神回となるREPORTになるハズです。カツ丼や天丼、他人丼、牛丼といった超メジャーな丼とは比べられないマイナーさではあるものの、牛肉を卵でとじた間違いのない味を全力でお伝えいたします。
「他人丼」が到着。ワカメと麩の味噌汁、刻みタクアンも付いています。「他人丼」は卵がトロットロの半熟タイプで卵好きは歓喜でしょう。そして昔ながらの京都のお店ですので、デフォルトで粉山椒がかかっているのも特徴です。具も京都らしく卵と牛肉、青ネギのシンプルスタイル。1枚だけ乗っている味付け海苔も良い味を出しています。では早速、「他人丼」をいただきましょう。
思った以上に牛肉たっぷりでおいしい!ダシの風味が香るトロットロの卵に牛肉、青ネギとご飯の組み合わせが最高です。こんなに優しい味わいなのに食べごたえは十分。しかも卵雑炊のようにスルスルと食べられますので、体調がちょっと良くないときでも食べられます。お酒を飲む人なら二日酔いのときなどにもピッタリではないでしょうか。京都では圧倒的に親子丼が人気なものの、牛肉好きなら他人丼もぜひ試していただきたい。昨今の物価高でこちらのような街の食堂でもそれなりの価格になってしまいましたが、昭和のいにしえの雰囲気を感じながら、麺類や丼、餅などを気軽にお楽しみください。
[2023年4月1日訪問]
前田商店 力餅食堂
●住所…京都市北区小山町218(Google マップ)
●TEL…075-451-2041
●定休日…日曜日および祝日
●備考…禁煙
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「力餅食堂」をご確認ください。
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