85年の歴史に幕を閉じようとしている洋食店

洋食編
スポンサーリンク

洋食 のらくろ 【閉業】

※お知らせ※
「洋食 のらくろ」は2020年(令和2年)12月31日で営業を終了されました。管理人の地元である下鴨では昔ながらの洋食をいただける貴重な1軒でとても残念です。長きに渡りお疲れ様でした。

下鴨神社世界遺産に登録されて周辺には少しずつですが新しい飲食店が増えています。また、今はなき伝説の洋食店とも言われる「グリル富永」を筆頭に、多くの人で賑わう洋食店が多い地域です。先日REPORTした人気洋食店「洋食とワインのお店 浅井食堂」はまだ新しいお店で勢いもありますが、昔から地域に根ざして落ち着いて利用できる洋食店もあります。市バス「下鴨神社前」バス停から東鞍馬口通を西へ100mほど行き、下鴨中通を南へ300mほど行ったところにある「洋食 のらくろ」もそんな1軒と言えるでしょう。

創業は1934年(昭和9年)と85年の歴史を誇る、京都洋食の黎明期から活躍されているお店。表通りの下鴨本通からひと筋西の下鴨中通という裏通り沿いにあることから、観光客よりは地元の方が普段使いされている印象です。また、下鴨神社だけでなく京都家庭裁判所も近くにあり、職員や来訪者もランチやディナーで立ち寄られているのではないでしょうか。家裁に用事がある方はどんなにおいしい食事でもノドが通らないかも知れませんが。おいしい洋食でも食べて元気を出して!旦那の浮気は徹底的に攻めて慰謝料をもらって!女性にエールを贈ったところで店内へ入ってみましょう。

清潔感があり大正ロマンの雰囲気も感じられる開放感のある店内です。開店11:30過ぎに入店したこともあり、本日のお客さん第1号でした。ランチタイムはさすがに混み合いますが、行列ができるようなお店ではありません。シニアのご主人が調理を、奥様が接客をそれぞれ担当されています。しばらくして常連さんのご家族が来店され、奥様と何やらお話をされていましたが、とりあえずメニューを確認しておきましょう。

王道のカジュアル洋食メニューが並びます。老舗洋食店ながら高級志向ではなく、リーズナブルな価格で手軽に洋食をいただけるのも地元民に愛されている理由でしょうか。何を食べても間違いなく、特に「ビーフカツレツ」¥1,750は価格に対して高いクオリティで満足できる逸品です。今回はこちらの実力をぜひお見せしたいこともあり、セットメニューの中から“店長おすすめ”と自信マンマンな「B定食(ハンバーグステーキ、エビフライ(タルタルソース)、カニクリームコロッケ、サラダ、ライス付)」¥1,500を注文してみました。

「B定食(ハンバーグステーキ、エビフライ(タルタルソース)、カニクリームコロッケ、サラダ、ライス付)」が到着。とにかく目を見張るのがエビフライの巨大さです。有頭エビのエビフライではないところがミソ。いや、有頭エビではないのでエビミソはありませんが、これだけ大きい無頭エビのエビフライは高級な洋食店以外では、まずお目にかかれません。ざっくり言えばこのクラスのエビフライなら3本¥3,000ぐらいしてもおかしくないレベルです。まずはカニクリームコロッケからいただきます。粗めのパン粉で揚げられたカニクリームコロッケは中のベシャメルソースがとにかく濃厚で本格洋食の味わい。バターとミルク、カニの風味が香る老舗店ならではのおいしさです。これぐらいの濃度・粘度のベシャメルソースであれば、粗めのパン粉のコロモが活きると感じました。高級店ほど細かいパン粉で揚げがちですが、粗めのパン粉を使う意味が食べてわかるカニクリームコロッケです。次にハンバーグステーキをいただきます。

牛肉多めな合挽肉でしょうか、肉汁たっぷりな正統派スタイルのハンバーグです。デミグラスソースも1週間かけて作られている本格派。牛の旨味と濃厚なデミグラスソースが渾然一体となり、贅沢な味わいを楽しむことができます。付け合わせのポテトサラダとの相性も抜群。ハンバーグステーキというクラシカルな料理名にふさわしい、一品料理としても満足度の高いおいしさでしょう。

そして巨大エビフライです。タルタルソースは別添えで量もたっぷり。もうタルタルソース不足で悔し涙を流すことはありません。太くてボリュームのあるエビは旨味と甘みも濃厚で、上品なタルタルソースの酸味とコクがよく合います。このエビフライだけでお腹いっぱいになりたい、と思われる方も多く、「エビフライ(サラダ、ライス付)」¥1,600であれば思う存分エビフライを堪能できるハズです。もちろんいろいろな料理を食べたい方は、絶対にエビフライが付いた各種の定食メニューを注文してください。

「B定食」を食べている最中、奥様と常連客の会話が聞こえてきたのですが、ご主人も奥様も体力的に厳しいらしく、確定ではないものの“営業できるのは後1年ぐらいかも…”と話されていました。後継者も不在のようで、ご主人も奥様もすでに後期高齢者(75歳以上)なのだそうです。確かに飲食店は体力も気力も消耗します。個人的にまだまだ必要な洋食店であるとは思うものの、ご主人や奥様のご決断は尊重しなければいけません。京都・下鴨の名店がまた1つ失われるのは残念ですが、こちらの味の記憶は残ります。当ブログをご覧の方で京都に行くことがあり、洋食好きならできるだけ早く訪問し、その味を舌に刻まれてはいかがでしょうか。食べないときっと後悔する85年の歴史の味をじっくりとご堪能ください。

[2019年9月16日訪問]

洋食 のらくろ
●住所…京都市左京区下鴨宮崎町69
●TEL…075-781-2040
●定休日…火曜日および水曜日
●備考…禁煙(?)
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「のらくろ」で検索してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました