グリル小宝
かつては洋食王国として有名店がキラ星のごとく輝いていた京都。京都に生きるミドルやシニアの食にうるさい方であれば、贔屓の洋食店が必ず1、2軒はあったと思います。もっとも、かつての洋食店はおおむね高級店であり、庶民が気軽に行けるような店ではありませんでした。現在のフレンチレストラン的なポジションだった、と言えばわかりやすいかも知れません。時代は流れ食文化の発達とともに高級洋食は衰退の一途を辿ります。店主の高齢化や後継者不足が続き、多くの高級洋食店が閉店しました。現在でも残っている古くからの洋食店であっても集客向上や代替わりなどを理由に、メニュー価格を見直して手軽に利用できる洋食店へ転換しているお店が少なくありません。当然、コストカットはクオリティダウンと直結しますので、昔に感動した味わいを今は味わえない場合が多くなっています。もちろんそれはそれで利用しやすくなり、価格以上の味わいを楽しめるものの、昔の味を知っているだけに少し残念に感じてしまうのも事実です。
しかし、昔ながらの調理法を受け継ぎながら、できるだけ価格の上昇を抑えて頑張っているお店もあります。平安神宮のすぐ側にある「グリル小宝(ぐりるこだから)」。今では京都の正統派洋食店の代表格とも言えるお店です。
場所柄、観光客メインと捉えられるかも知れませんが、地元の方を中心とした京都人から絶大な人気を集めています。創業は1961年(昭和36年)と60年近い歴史を誇る老舗店。10年以上前に閉業された祇園の名店「グリル たから船」で修行を積まれて独立、由緒正しき京都洋食を今に伝えられています。では店内へ入ってみましょう。
価格面からも決して普段使いできるお店ではないものの、20時を過ぎてもほぼ満席に近い状態でした。訪問当日は4月29日の連休中ということもあり、平安神宮の近くに生まれ育った友人2名とともに訪問。昼・夜とも予約を受け付けていないお店で待つこともしばしばですが、今回は運良く4名テーブル席が1席だけ空いていましたので待たずに着席することができました。ちなみに上記の店内写真は店を出る閉店間際に撮影したものです。たまたま3名での訪問となりましたがお一人様で利用される方も多く、当日も男性1名・女性1名のお一人様が食事を楽しまれていました。早速メニューを確認してみましょう。
一般的な洋食店に比べて高く感じますが、1品1品が結構なボリュームなのもこちらの特徴です。お一人様なら1品料理と「ライス」¥300、ご飯物(サイズが選べる場合は小もしくは中)・サンドウイッチ・スパゲティなら1品で十分満足できるでしょう。今回は3名でシェアする変則的なオーダーとしてみました。まずは「エビフライ」¥2,400からスタート。
大きなクルマエビ3尾の贅沢なエビフライです。自家製のタルタルソースもコク深い味わい。味の面ではエビの中でNo.1と評価が高いクルマエビの旨さを思いっきり堪能することができます。普通のエビフライの倍はする価格ですが、その価値は十分にあるのではないでしょうか。付け合せのケチャップスパゲティやポテトサラダなども丁寧に作られた味わいでさすがの一言です。次に「トンカツ(ヘレ)」¥2,000が到着します。
キメの細かい上質な豚ヒレ肉のトンカツです。上にかかっているのはメニューで“ドビソース2倍¥150増しになります。”と書かれているドビソース、つまりデミグラスソース。“ドビソース”の言い方が昭和らしく、その作り方も昔ながら。なんと18日間もかけて作られている、手間暇を惜しまない高級洋食らしい味わいです。濃厚で深いコクのデミグラスソースは脂身少なめのヒレカツとの相性も抜群で、幸せな気分になります。そしていよいよ「グリル小宝」名物の1品「ハヤシライス」¥1,300を食べてみましょう。
「オムライス」小:¥650、中:¥1,000、大:¥1,500と並んで「グリル小宝」を代表するスペシャリテの1品です。18日間かけて作られるデミグラスソースをベースとしたハヤシライスで、ハヤシライスが得意ではない管理人が注文する数少ない逸品。じっくりと煮込まれ飴色となったたっぷりのタマネギの甘味と薄切り牛肉の旨味をデミグラスソースが完全にまとめあげています。さまざまな素材の味が渾然一体となった味わいで、隠し味に醤油でも入っているのでしょうか、パンよりもライスによく合う最上級のハヤシライスを堪能することができました。
そして初体験となる「ヤキメシ」¥1,000をいただきます。こちらには何度か伺っていますが、これまで「ヤキメシ」を注文したことはありませんでした。中華を食べに来たんじゃないんだから。しかし、平安神宮の近くに住み幼い頃より「グリル小宝」を頻繁に利用している友人が“どうしても”と強く推すので、注文してみることに。あまり期待せずに食べてみたのですが、これは絶品です!!もちろん中華の炒飯とは異なり、炒飯とピラフの中間のような食感で、さまざまな具材の旨味とコンソメ?の豊かな味わいに感動すら覚えました。これなら一人でも大盛り¥1,500をペロリと完食できるかも知れません。あっさりでもなくしつこくもない、「美味しんぼ」なら海原雄山が“主人(あるじ)を呼べ”と叫び“至高のヤキメシ”と絶賛することでしょう。至高のメニューに加えられると思われるこの「ヤキメシ」だけでも訪問する価値はあると断言できます。
毎日こちらの料理を食べたいと感じるものの、毎日食べれば満足し過ぎてダメ人間になりそうなレベルの洋食店です。特に洋食好きなら絶対に味わってみてほしいと思います。人気店で常に混雑していますが、夜なら20:30を過ぎればスムーズに入店できるのではないでしょうか。ランチタイムなら平日・休日を問わず並ぶことを覚悟してください。管理人がいつ伺っても注文してみたいと思ってしまう「お子さまランチ」¥1,300も用意されていますので、ご家族での利用もオススメですよ。
[2019年4月29日訪問]
グリル小宝
●住所…京都市左京区岡崎北御所町46
●TEL…075-771-5893
●定休日…火曜日および水曜日
●備考…店内禁煙
●ホームページ…http://www.grillkodakara.com/
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