昭和洋食を現代に伝えるお手頃価格の洋食店

洋食編
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白扇

京都洋食の黎明期はすべて高級店でした。庶民には手が届きにくい存在で、一部のお金持ちが利用する限られた飲食店だったようです。現在のフレンチレストラン以上の高級店だった、と言えばわかりやすいでしょうか。しかし戦後の復興期と高度経済成長期を経て日本は豊かになり、庶民をターゲットとした洋食店が次々と誕生。そんな昭和生まれの手軽な洋食店として今なお営業されている、京都の洋食を語るうえで欠かせない1軒烏丸丸太町エリアにある「白扇(はくせん)」です。

管理人がウロウロしていた頃にはすでに営業されていましたので、少なくとも40年以上の歴史はある洋食店。京都府庁が近いこともあり、地元のビジネスマンの御用達となっています。ご高齢の大将と奥様で切り盛りされていて、最近は閉まっていることも多いと感じていました。さまざまなWebサイトでは日曜日定休となっていますが、大将と奥様の体調次第で営業されていますので、不定休と言ったほうが実態に即しています。実際、昨日5月25日の土曜日は休業されていましたが、本日5月26日の日曜日は営業中の札が上がっていました。そこで急遽予定を変更し、まずは店頭のメニューを確認します。

もう随分とご無沙汰していますが、メニューはほとんど変わっていないようで安心しました。昔から激安価格でいただける「カレーライス」¥500も健在。管理人が若い頃はサラリーマンや学生で賑わっていた京都を代表する庶民派洋食店です。かつては近隣にやはり庶民派洋食店であった「西洋軒」もあり、京都新聞の記者や京都地方裁判所界隈の法曹関係者なども頻繁にこのエリアを訪れ、手頃な価格で洋食を楽しんでいました。そんな土壌からか、現在も烏丸丸太町エリアには多くの洋食店が存在しています。時刻は13:20、営業中の札を確認し、早速店内へ入ってみましょう。

“THE 昭和の洋食店”な店内も昔通りです。日曜日だからなのか、店内にお客さんはいません。大将と奥様、そしてお孫さんとおぼしき小さな女の子が談笑されていました。新しい感じの扇風機が活躍中で、新しいエアコンも作動していますので暑くはありません。では改めて店内に掲出されているメニューを確認してみます。

「清酒」¥400などは、洋食を日本酒で楽しむ食コラムの第一人者・池波正太郎の世界観です。ワインやハイボールといった最近のアルコール類は置かれていませんし、ノンアルコールビールなんてもってのほか。「ジュース」¥300が何のジュースなのかは気になったものの、ジュースを飲む年齢でもありませんので追及していません。今回は庶民派洋食ということで¥1,000以内で食べられる「Bランチ定食(エビフライ・フィッシュフライ・ハンバーグ・ロースハム・サラダ・ライス・みそ汁付)」¥980を注文してみました。

今や定番のビジネスランチです。そう、昭和の洋食店は徐々に姿を消していますが、昭和洋食のメニューは喫茶店やカフェ、定食店などにしっかりと息づいています。多くの飲食店でよく見かける「洋食弁当」や「ミックスフライ定食」などは昭和洋食が基となったメニュー。現代にも通用する昭和洋食の底力を実感できるのではないでしょうか。それではハンバーグからいただきましょう。

ハンバーグは甘めのデミグラスソースがご飯のオカズとしてよく合います。エビフライとフィッシュフライにはたっぷりとタルタルソースがかかっていて贅沢な味わい。細かめのパン粉で軽やかに揚げられていて、さすがは長年多くのお客さんに愛されている洋食店だと改めて感じました。そしてメニューには載っていなかったのですが、トンカツソースがかかった一口カツが付いています。食べると柔らかなポークの味わいとほのかに感じる辛子の風味。豚肉の表面に辛子を塗ってコロモをつけ揚げられている工夫に感心しました。トンカツに辛子はつきものですので、合わない訳がありません。ちょっと大人な一口カツに老舗洋食店の技を堪能することができました。

少し値の張る本格的な洋食だけではなく、庶民でも気軽に楽しめる洋食もまた、京都洋食の1つのカタチです。料理の味以上に雰囲気や空気感を味わっていただきたいお店だと個人的には思っています。いつ営業されているのかよくわからないお店ですので、もし前を通ったときに“営業中”の札が上がっていたら迷わず入ってみてはいかがでしょうか。そして昭和の時代をがむしゃらに生き抜いた人々が愛した洋食の数々を存分にご賞味ください。

[2019年5月26日訪問]

白扇
●住所…京都市中京区道場町3
●TEL…075-231-6617
●定休日…不定休
●備考…店内禁煙
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「白扇」で検索してください。

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