村上食堂
“京都の台所”と言えば全国的には「錦市場」が有名でしょうか。かつては近隣の料理人や地元の人で賑わっていましたが、現在では外国人観光客に人気の体験型店舗が増え、昔の「錦市場」の面影はすっかり薄れてしまいました。一方、昔も今もプロの料理人が足繁く通っているのが「京都市中央市場」です。歴史は古く、1927年（昭和2年）に開場された“日本で一番最初の中央卸売市場”としても知られています。鮮魚や塩干物、青果などが取り引きされていますが、原則として一般人の立ち入りは一部を除いて制限されていて、購入もできません。ただ、最近では一般向けのイベントなどが催されており、見学などもできるようになりました。そんな魚や野菜の目利きたちが働く京都市中央市場の周辺には、多くの飲食店が営業されています。その中でも今回は昭和の初め頃から営業されているであろう「村上食堂（むらかみしょくどう」へ伺いました。
昔ながらの食堂で、市場関係者をはじめタクシーの運転手さんなど、味にうるさそうな方々が通われているお店です。市場周辺としては珍しく、20時まで営業されています。朝5時（日・祝は7：30）から開店していることもあり、働く方々が朝食や昼食、仕事終わりの1杯などに利用されている便利な食堂と言えるでしょう。時刻は14：00、早速店内へ入ってみました。
手前のテーブル席がまさかの満席！奥の2名テーブル席と座敷へ初めて通されます。お店に入ってすぐのところには昭和の食堂らしく、さまざまなオカズが皿に盛られ、ショーケースに並んでいました。手前のテーブル席に着席できていれば撮影できたのですが今回は断念。「サバの煮付け」や「カレイの煮付け」といった魚料理から「肉じゃが」や「アジフライ」、「コロッケ」など庶民的で多種多様なオカズを選ぶことができます。ではメニューを確認してみましょう。
学食レベルの安さです！
いや、下手をすれば今や学食より安いかも知れません。もちろんショーケースのオカズを取りまくれば¥1,000は超えるでしょうが、例えばどんぶりメニューであれば「玉子」も「天ぷら」も同じ¥500。なんて雑な良心的な価格設定なのでしょうか。こちらの名物とも言える「喜多方ラーメン」も¥500。うどん・そばの「かけ」は¥300。まるで昭和の頃から時間が止まっているかのような値段に驚きつつも、今回は久しぶりに大好物の「他人丼」¥500を注文してみました。
ご覧ください、牛肉たっぷりの「他人丼」です。そば・うどん店でも「他人丼」は提供されていますが、こちらは食堂の「他人丼」らしい牛肉多めで玉子少なめの仕様です。なぜかペロンと1枚乗っているカマボコも食堂風。野菜は青ネギとタマネギで、ミツバのような上品さは誰からも求められていません。刻み海苔もうれしいポイント、そして何より粉山椒を持ってきていただけるのが京都の食堂です。どのテーブルにも七味唐辛子や塩、醤油、ウスターソースなどは常備されていますが、粉山椒は料理によって持ってきていただけます。では粉山椒をたっぷりと振りかけていただきましょう。
ダシが香る薄味仕立ての京風他人丼です。牛肉たっぷりで肉の旨味をしっかりと味わえながら、さっぱりとした後味でガツガツと食べ進めることができます。そしてやはり味のアクセントとなる粉山椒が効果的。もちろん七味唐辛子のピリ辛でもおいしくなりますが、京都の味なら粉山椒の風味が一番合うのではないでしょうか。青ネギや刻み海苔の風味、タマネギの甘みと牛肉の旨味、米の甘みを玉子とダシでまとめ上げている、はんなりとしたやさしい味わいを楽しむことができました。
西大路七条の交差点から東へ600mほど行き、七条七本松の交差点を北へ100mほど行ったところにある、京都市中央市場近くの食堂です。電車なら今年2019年3月に開業した新駅であるJR「梅小路京都西駅」から徒歩7分程度とこれまでより便利になりました。周辺には京都鉄道博物館や京都水族館もあり、見どころも多い地域です。観光ついでにお近くまで立ち寄られた際には昭和のノスタルジックな食堂をぜひ体験してみてください。
［2019年7月20日訪問］
村上食堂
●住所…京都市下京区西七条北東野町95
●TEL…075-313-5523
●定休日…不定休
●備考…店内喫煙可
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「村上食堂」で検索してください。
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