らーめん錦
京都の金持ちどもが一番多く集まっている場所はどこでしょうか?海外の要人も足を運ぶ「国立京都国際会館」でしょうか。いやいや「京都市勧業館みやこめっせ」などのビジネススポットでしょうか。それとも四川マフィアの大物が住んでいるかも知れない「元田中駅周辺」でしょうか。正解はおそらく「祇園」です。京都有数の花街であり繁華街として知られる祇園は、老舗の料亭などの料理店が多いことで有名。ただ、管理人のような庶民には縁がない店もまた多いエリアです。久しぶりに夜の祇園を歩いてみたのですが、行き交う車が黒塗りの高級車ばかりだったり、いかにも一見さんお断りな風格のある料亭だったり、庶民のキャッシュカードが一発で残高ゼロになりそうな高級クラブだったりと、異次元世界を見ているような感じでした。そもそも祇園で豪遊している人と言えば、大スターか政財界の大物、京都に巣食う闇の紳士、呉服問屋の若旦那、ナマグサ坊主と相場は決まっています。ただ、観光地の側面もあるため、庶民や観光客向けのお店も結構増えてきました。今回はそんなお店の中でも、何となく京都らしいラーメン店「らーめん錦(らーめんにしき)」を訪問してみましょう。

本格割烹のようなたたずまいの外観です。新橋通と花見小路通の交差点を東へ70mほど行ったところにあり、京阪「祇園四条駅」から徒歩5分程度と便利な場所にあります。昼間は大勢の観光客が祇園の街並みを散策していて人通りも多いのですが、夜はちょっと寂しげな雰囲気となる地域です。こちらは開業2年目ながら京都有数のブロガーが記事をアップロードしておられ、観光客や地元の方も多い人気店。実は昨年2018年の9月頃、仕事で近くを通った際に見かけてオープンされていたのは知っていました。あれから1年以上たち、「食べログ」でも評価されている模様。時刻は21時、早速店内へ入ってみました。


清潔感があり凛とした雰囲気の店内はまさにカウンター割烹。ラーメン店とは絶対に思えない内装です。1階はカウンター席のみ。他の都道府県の方が持たれている京都のイメージがここにはあり、観光客や若い方でも利用しやすいのではないでしょうか。実際、外国人観光客もよく訪れているそうです。とりあえずメニューを確認してみましょう。





メインは鯛のダシを使った塩ラーメンです。こちらは淡麗系ラーメンの名店で東京や神奈川、海外にまで展開しているラーメンチェーン「AFURI」に勤めておられた方が独立、開業されたそうで、淡麗系ラーメンへの自信のほどが伺えます。一品メニューはまさに和食店。京野菜を使われた料理もあるなど、京料理への造詣も深いように感じました。今回はこちらのスタンダードメニューでもある塩らーめん、鯛の盛合せ、鯛飯、甘味がセットとなった「錦御膳」¥2,000を注文してみることに。

塩らーめんと鯛の盛合せが到着。ここまできても、まだラーメン店とは思えません。鯛の盛合せは先付に見えて仕方がないのですが、ラーメンのトッピングのようです。スープから放たれる芳醇な香りに食欲も高まります。見た目にも美しく、京料理のようなラーメン。まずはスープからいただきましょう。

黄金色に輝くスープは鯛のダシがしっかりと感じられるおいしさです。鯛は刺身などでは食感が特徴的なものの、味は他の白身魚と区別しにくいのですが、あら炊きなど煮魚にすると鯛独特の豊かな味わいを主張します。また、魚の中でも骨が硬い部類で、旨味の強いダシがよく出るのも特徴。魚の王様と称されるだけあって、上品でコクのある味わいはラーメンにもよく合うのではないでしょうか。もっとも、鯛でダシを取ろうとすると価格的に難しい面もあると思いますので、通年安定して提供できるのは掛け値なしに凄いと感じました。

麺は博多豚骨ラーメン並の細麺で固めに茹でられています。自家製麺だそうで鯛ダシと合う麺を研究されたのだとか。食べてみると確かに至福の味わいです。少なくとも管理人が知るラーメンの概念を超えています。上質な温かい更科系の蕎麦を食べているような、スルスルと食べ続けられるおいしさ。スープと麺の一体感も素晴らしく、ラーメン好きにも和食好きにも満足できる逸品ではないでしょうか。

トッピングのチョイスも文句ありません。特に鯛の焼霜造りは絶品です。皮目を炙り一番おいしい皮と身の間は少しだけ火がとおっていて、身は生という半生状態。軽く塩味がついていて、このまま食べてもツマミとして十分においしいと感じました。もちろんラーメンの具としても有効です。鯛本来の甘みまでしっかりと味わえるラーメンに、確かな技量と感じ取ることができました。

鯛飯も鯛の風味が活きていて、個人的にはこれだけでお腹いっぱいにしたいと思った味。鯛ダシと醤油で炊かれた米のおいしさ、ふっくらとした鯛の身の豊かな味わいは、王道ながら絶対的です。古来より日本人が鯛を特別視して高値で取引していたのも理解できます。鯛という魚の持ち味を十分に活かした料理の数々には感動を覚えるレベルでした。

甘味はぷるんぷるんとしたくず餅風のデザートでみたらし風のタレがかかった、これまた懐石料理の水菓子と呼んでも差し支えない味わいです。こちらはもはやラーメン店ではないのかも知れません。ラーメンとしては少しお高めかも知れませんが、この空間の雰囲気や料理のクオリティを考えれば決して高くないハズです。祇園観光の方はもちろん、祇園に馴染みのない方にも、ぜひ京都らしい風情を味わっていただきたいと思います。
[2019年11月12日訪問]
らーめん錦
●住所…京都市東山区橋本町416(Google マップ)
●TEL…050-3461-4630
●定休日…月曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…facebook
※さらに詳しくは食べログ「らーめん錦」で検索してください。
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