濃厚京鶏白湯らーめん めんや 美鶴
すっかり京都ラーメンの主流となった鶏白湯。“ニワトリシロユ”ではなく“トリパイタン”と読みます。鶏ガラを砕いて長時間煮る・炊くスープの総称で、鶏の骨や髄のエキスをしっかりと抽出し、白濁するのが特徴です。一般的な鶏ガラスープは黄金色の澄んだ色味で、鶏青湯(トリチンタン)とも呼ばれます。鶏白湯はかなり濃厚な味わいが特徴で、管理人的には「天下一品」のこってりが真っ先に思い浮かぶラーメンスープ。近年、鶏白湯を提供するラーメン店が急増し、行列必至の名店も数多く存在しています。京都の料理と言えば“薄味”ばかりがクローズアップされますが、ラーメンに関してはコッテリ濃厚派が優勢ではないでしょうか。とは言え、“アッサリ”を求めるDNAが京都人にあるのも否定できません。そもそも本当にコッテリ濃厚が好きなら豚骨ラーメンやバターラーメンなどでもイイような気もします。しかし、かつての京都ラーメンの主流派であった“醤油豚骨背脂チャッチャ系”にしても、なぜ醤油を強調したラーメンが好まれていたのか?それは古来より食されていた醤油味が恋しいからに他なりません。そして鶏白湯。いくらコッテリ濃厚とは言え所詮は鶏。濃厚さだけなら豚や牛には勝てません。鶏白湯が主流となったのは、京都人にとっては昔からご馳走として親しまれてきた鶏の水炊きやすき焼きを好むDNAがあるからに違いありません。と、まったく裏取りもせずエビデンスもない話を延々としてしまいました。お盆週間ということでお許しください。今回は鶏白湯の名店でありながら、京都風の味もかすかに感じられるラーメン店をREPORTしました。
四条通と烏丸通の交差点(四条烏丸)を西へ130mほど行き、室町通を北へ30mほど行ったところにある「濃厚京鶏白湯らーめん めんや 美鶴(のうこうきょうどりぱいたん めんや みつる)」。京都市内屈指の飲食店激戦区でもある四条烏丸エリアでも安定した人気を誇るラーメン店です。オフィスパーソンや若い方が多いエリアにあるスタイリッシュな外観だけあって、女性にも人気のラーメン店で、女性のお一人様での利用もたびたび見受けられます。鶏にこだわられているラーメン店で、昼夜を問わず多くのお客さんで賑わっているのが特徴。時刻は21時、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。
店名どおり“鶏白湯”を使った各種ラーメンやつけそばがメイン。冷たい麺は夏季限定の「冷やし鶏鰹らーめん」¥780です。鶏白湯のラーメンや新メニューの「あご出汁鶏塩そば」¥780にも惹かれますが、やはり暑い夏には冷たい麺でキマリでしょう。ラーメンマニアの多くは酷暑であっても熱っついラーメンをフーフー言いながら食べてらっしゃいますが、皆さんドMなのでしょうか?シニア世代でたまに、どんなに暑い日でもホットコーヒーを注文されている方がいらっしゃいますが、同じような感覚なのでしょうか?まぁ個人の嗜好の問題ですし、日本人男性の多くはドMです(管理人調べ)のでヨシとしましょう。では早速店内へ入ってみます。
1階はカウンター15席ぐらいで2階にも客席があるようです。1階はお一人様か2名組が多く、女性のお一人様もいらっしゃいました。白を基調としたスッキリとした店内なこともあり、若い方でもひとりで入りやすい雰囲気です。まれにラーメン店であるにも関わらずひとりで入りにくい店がありますが、あれは一体何なのでしょうか。そういう店に限って入店した際、店主とおぼしきオッサンから“ひとり?!”と怪訝な顔をされることがあります。ラーメン店に限らず、そういう店は二度と訪問しようとは思わず、当ブログではREPORTしていませんのでご安心ください。では念のため、店内のメニューも確認しておきましょう。
「丹波産「特選瑞穂」の卵かけご飯セット」¥220は反則です。管理人は夜の麺+飯を禁止しています。チャーシュー丼や炒飯はサイドメニューとして予見できるため、事前に“注文してはいけない”と自己暗示をかけてから入店するほどの徹底ぶり。しかし卵かけご飯(以下、TKG)は盲点でした。管理人はTKGが大好物で、自宅の冷蔵庫に何もなくても生卵とご飯さえあれば大丈夫な人間です。TKGに関しては事前に“注文してはいけない”と自己暗示をかけていなかったので、「冷やし鶏鰹らーめん 味玉入り」¥880と「丹波産「特選瑞穂」の卵かけご飯セット」をウッカリ注文してしまいました。炭水化物ばかり食べてどこへ向かおうとしているのか不安しかありません。
「冷やし鶏鰹らーめん」が到着。スープは白濁した鶏白湯ではなく、透明感のある鶏青湯でしょうか。具は鶏チャーシューと水菜、鰹の削り節、レッドオニオン、そしてトッピングの味玉。TKGもウッカリ注文しているのに、なぜトッピングの味玉を注文したのか意味がわかりません。前世はヘビだったのかも知れません。ヘビほどスリムな訳でもないのに。とりあえずスープからいただきましょう。
黄金色のスープをひとくち味わうと、まず鰹ダシの味が下に届き、次に鶏の味が口の中を満たします。ナルホド、これは京都人の大好きな鰹ダシと鶏ガラスープのダブルスープ仕立てですね。当ブログでも冷やしラーメンは数軒REPORTしていますが、煮干しや貝類などの魚介系スープが多い印象で、一番馴染み深い鰹ダシはなぜかREPORTしていませんでした。京料理や京都のおばんざい(オカズ)の基本は昆布鰹ダシで、冷たくてもおいしい。その鰹ダシが鶏ガラスープと合わさって、奥深く重層的な味わいを奏でています。鰹の風味と鶏のコクが冷たいスープにもピッタリで、サッパリとしたおいしさに感心しました。
麺は細めの中華麺で少し固めな茹で加減。キリリと冷たい食感が心地よく、スープにもよく合います。意外と効果的なのがみじん切りにされたレッドオニオンです。薬味的な立ち位置なのですが、青ネギよりもほのかな甘みと辛みが豊かな味わいのスープや麺のアクセントとなっています。麺のツルツルとした喉越しも申し分ありません。やはり夏は冷たい麺だと改めて実感しました。
鶏チャーシューも完璧な味わいです。ちょうどいい柔らかさ、シットリとしてなめらかな食感と、鶏の旨味を存分に堪能できる傑作ではないでしょうか。これは鶏ムネ肉の調理法としてはベストと言えるでしょう。棒々鶏などと同様、冷たいからこそおいしい稀有な鶏チャーシューで、これを食べるためだけにこちらへ来られても損はないと断言できます。
そして「丹波産「特選瑞穂」の卵かけご飯セット」が到着しました。鶏肉と九条ネギがたっぷりで、もはやTKGとは呼べないスペシャルTKG。こんなん絶対おいしいに決まっています。食べなくてもわかるのですが、食べないとわからないことがあるのも真理です。と、食べるための言い訳として名言風に誤魔化してみました。
うまい。イヤ、マジでうまい。まず卵。丹波産「特選瑞穂」というのはおそらく卵の種類?品種?なのでしょうが、卵黄のコクがスゴい。卵白は少しだけ残ってはいるものの、その卵白の風味も絶妙なおいしさです。そして醤油。タダの醤油ではありません。TKG専用の旨味たっぷりの醤油です。そこに鶏肉と九条ネギの旨さが加わるのですから、おいしいのは予想できていました。が、最も驚いたのが黒胡椒です。自宅でもお店でもTKGはよく食べる管理人ですが、TKGに黒胡椒がこんなに合うとは思いもしませんでした。この黒胡椒が味の要であり、全体をまとめつつ味に鮮烈なインパクトを与えています。先ほど“鶏チャーシューを食べるためだけにこちらへ来られても損はない”と書きましたが訂正させてください。このTKGも必食の逸品です。こちらに来られた方はラーメン各種とともに、ぜひ鶏チャーシューとTKGを味わっていただきたいと思います。
[2020年7月30日訪問]
濃厚京鶏白湯らーめん めんや 美鶴
●住所…京都市中京区菊水鉾町587(Google マップ)
●TEL…075-211-9007
●定休日…年中無休
●備考①…「冷やし鶏鰹らーめん」は夏季限定
●備考②…禁煙
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「濃厚京鶏白湯らーめん めんや 美鶴」で検索してください。
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