陽食屋3(トレ)
最近、オシャレな洋食店を見かけるようになりました。洋食はもともと、明治時代に生まれた西洋料理(主に日本式フランス料理)から発展し、大正・昭和でほぼ完成形に至ったものの、平成に入って下火となった料理ジャンルです。代わりにイタリアンやフレンチなどが台頭、特にイタリアンの出店数は凄まじく、京都市内でも多くのイタリアンのお店がしのぎを削っています。しかし近年、学生や庶民では利用するのが難しい価格帯の店舗が急増した結果、生存競争が激化。本格的なイタリアンやフレンチから価格的に誰もが利用できる洋食店へ業態転換するケースが見受けられるようになりました。例えるなら洋食の逆輸入といったところでしょうか。イタリアンやフレンチの技法を用いられた洋食は、昭和の洋食店とは異なり、そのカジュアルさから若者や女性にも人気となっています。今回はそんな“本籍はイタリアン、現住所は洋食”という洋食店をREPORTしてみました。
三条通と堀川通の交差点(堀川三条)、京都三条会商店街の堀川通側入口から西へ50mほど行ったところに、こんな看板を見つけることができます。2018年(平成30年)3月3日に開店した「陽食屋3(ようしょくや トレ)」。“ようしょくや さん”ではなく、3のイタリア語である“トレ”と読みます。こちらは城陽市で人気のイタリアンやベーカリーを手掛けられているオーナーシェフが開業された洋食店。「土日祝のランチメニュー」を拝見しても、イタリアンらしい陽気でカジュアルなメニュー構成となっています。実は後で気づいたのですが、管理人がこちらに到着したのが13:45。お昼のラストオーダーは13:30で、まったく気づいていませんでした。そんなことより気になったのがメニューの説明文です。エビクリコロッケ+チキン南蛮+MMCミンチカツ+トンヘレのカツがセットになった「漢ではなく哀愁と書いて オトコのミックスフライ」¥2,100。“漢”ではなく“哀愁”と書いてオトコ?コピーライター歴約25年の管理人が初めて目にするオトコの表現です。何だかよくわからないもののカッコイイ!“漢(オトコ)”のような無骨さや無愛想さはなく、ちょっと影があるニヒルでダンディな“哀愁(オトコ)”ですって!管理人もオトコですが、いくら年齢を重ねても“哀愁(オトコ)”に進化できる自信はまったくありません。年齢を重ねられたイタリア紳士なら“哀愁(オトコ)”の表現がピッタリで、あのジローラモさんも普段は単なる女性好きのイタリア人のオッサンですが、時折見せる真剣な眼差しはまさに“哀愁(オトコ)”。モテる方のオッサンですね。うらやましい。ぜひ“哀愁(オトコ)”に近づいてモテる方のオッサンになりたい。もうメニューは決まりましたので、看板があった岩上通を北へ10mほど行ったところにあるお店へ急ぎましょう。
この時点でもまだ、すでにラストオーダーを過ぎていることに気づいていません。とにかくモテる方のオッサンになりたくて、なりたくて、なりたくて、の一心で勢いよく店内へ向かいます。
新しいお店らしく清潔感がありカジュアルな雰囲気の店内です。さすがに閉店間際だからでしょうか、お客さんはカップルが1組だけ。愛想のいい女性店員さんに奥の2名テーブル席に促されて着席します。ラストオーダーを過ぎているにも関わらず案内していただき、今から考えると顔から火が出るほど恥ずかしく、とても“哀愁(オトコ)”にはなれそうにありません。着席した段階ではラストオーダーを過ぎていることをまったく気づいていませんでしたので、ごく自然に「漢ではなく哀愁と書いて オトコのミックスフライ」を注文してしまいました。
まずはサラダが到着。フレンチドレッシングに加えパルメザンチーズが振られているところにもイタリアンらしさを感じさせます。管理人のように外食が多い人はどうしても野菜不足になりがちですので、こちらのようなみずみずしい生野菜が食べられるサラダはありがたい。漢(オトコ)飯に生野菜は不要ですが、哀愁(オトコ)飯には野菜の煮物より生野菜がよく似合いますね。
「漢ではなく哀愁と書いて オトコのミックスフライ」が到着。ボリューム満点のオトコ飯のクセにオシャレなのは哀愁(オトコ)飯だから。パルメザンチーズやバジルなどのハーブがイタリアン出身の洋食を主張しています。付け合せのカボチャやニンジン、ヤングコーンなどの焼き野菜もおいしい。では、メインディッシュをいただきましょう。
エビクリコロッケはトロトロでエビの風味もしっかりと活きている逸品。エビクリームコロッケやカニクリームコロッケと言いながら、エビやカニがどこにいるのかよくわからないクリームコロッケが多い中、こちらのエビクリコロッケはエビの旨味を存分に楽しめます。トマトソースとの相性も抜群です。MMCミンチカツもたっぷりの肉汁が蓄えられた旨さ。MMCの意味はよくわかりませんが、哀愁(オトコ)飯に余計な詮索はいりません。そしてガッツリメニューのチキン南蛮。鶏モモ肉の濃厚な味わいに大量のタルタルソースがかけられた、男性および男らしい女性大喜びの味わいです。当ブログの読者諸氏であれば、これだけで白メシを何杯でもおかわりできる!という猛者も多いのではないでしょうか。…さて、管理人は7割ほど食べ終えた段階でまったく気づいていなかったのですが、このREPORTを読んでいて違和感をお持ちの方はかなりスルドイと思います。お店の方が慌てたように来られ“トンヘレを入れ忘れていました”と報告されました。“よろしければ今すぐお作りするか値引きさせていただきます”と丁寧な申し出でを受け、せっかくなので作っていただくことに。ラストオーダー過ぎに来店して面倒なメニューを注文してしまったと逆に恐縮しながらこのREPORTを書いています。
お店の方から“ご飯もお持ちしましょうか?”と太らせようとするありがたい提案をいただきましたが、申し訳なさそうにお断りします。柔らかなヒレ肉のあっさりとした旨味にトマトソースとパルメザンチーズのコクがよく合う一品です。すべて完食し、お腹もパンパン。とても哀愁を漂わせる感じではなくなりましたが、オシャレな洋食をお腹いっぱい食べられる幸福感を得ることができました。男性だけなく、哀愁(オトコ)らしい女性はもちろん、哀愁(オトコ)らしくない女性にもオススメの洋食店です。京都三条会商店街近くまでお越しの際には、イタリアンの風が感じられる洋食を試してみられてはいかがでしょうか。充実のテイクアウトメニューもぜひご活用ください。
[2020年8月29日訪問]
陽食屋3(トレ)
●住所…京都市中京区橋西町670(Google マップ)
●TEL…075-823-6009
●定休日…水曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…Instagram/facebook
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