いっ献
日本酒を愛する人には馴染み深い、全国の銘酒を取り揃えている俗に銘酒酒場などと呼ばれる居酒屋があります。落ち着いた雰囲気の大人の居酒屋で、洗練された酒肴の数々を楽しめるのも特徴です。管理人のように飲まない人の場合、さすがにひとりで出向くのはかなりハードルが高く、飲む人と一緒でないと伺えません。しかし、ランチを提供されているお店は別。もちろん昼から銘酒などのアルコール類を愉しまれている方もいらっしゃいますが、その多くはランチメニューだけを気兼ねなく注文できます。そこで今回は、四条烏丸にある上質な居酒屋へランチをいただきに伺いました。
四条通と烏丸通の交差点(四条烏丸)を西へ300mほど行き、新町通を南へ100mほど行ったところにある居酒屋「いっ献(いっこん)」。こちらは京都市内でうどん店「麺どころ 晃庵」などを運営する有限会社エムジーフーズが2012年(平成24年)に開業したお店です。現在では京都と大阪、神戸でうどん店をはじめ、居酒屋やイタリアンなどさまざまな業態の飲食店を手掛けられています。京都の町家をそのまま活かした外観で、お昼どきには近隣のビジネスパーソンがランチで利用されていて、女性客も多いそうです。時刻は11:45、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。
ランチの1番人気は「本日の日替わり定食」¥1,000(※)。魚の定食だけでなく、「牛ハラミ照り焼き定食」¥1,200(※)なども人気です。今回はいよいよ秋となり、多くの魚が旬を迎える季節となりましたので、魚を食べたいと店内へ入ってみました。
カウンター席もあり、お一人様でも気軽に利用しやすい雰囲気です。飲む人なら夜の一人呑みにも最適ではないでしょうか。テーブル席もありますので、グループなどでの利用も大丈夫。では改めてメニューを確認してみましょう。
本当は「9種のプレート定食」¥1,600(※)を注文したかったのですが、残念ながら要予約とのこと。「本日の日替わり定食」と迷ったものの、新鮮な魚を食べられる「本日の海鮮丼」¥1,000(※)に決めました。銘酒酒場のツマミ、特に魚介類にまずハズレはありません。一般的な居酒屋と比べてちょっぴりお高めですが、それ以上のクオリティを体感できるお店が多いように思います。では「本日の海鮮丼」を待っている間、夜のメニューも見ておきましょう。
“イイなぁ…”と思わず心の声が漏れてしまいました。管理人はアルコール類を飲めなくなって15年以上が経ち、今はもうまったく飲みたいとは思わないものの酒の肴は食べたい。ノンアルコールビールも用意されていて、その気になれば夜に一杯も可能なんでしょうけど、ノンアルコールビールと魚介類は絶望的に合いません。魚介類の生臭さのみが口の中にあふれるからです。ビールメーカー各社も研究はされているのでしょうが、魚介類にも合う、とまでは言わないものの、せめて魚介類の生臭さを感じさせない炭酸水のようなものを開発できないでしょうか。もし当ブログをご覧いただいているビールメーカーの方がいらっしゃれば、ぜひお願いします。
「本日の海鮮丼」が到着しました。味噌汁と漬物に加え、サラダ、ゴボウの白和え、レンコンのキンピラ、カボチャ煮と副菜も充実しています。特にゴボウの白和えやレンコンのキンピラ、カボチャ煮は京都で昔から食べられてきたオカズであり、おばんざいです。京都人(?)の中には“おばんざいなんて本当の京都人は言わない!”や“おばんざいはメディアが流行らせた言葉で京都では使わない!”と声高に叫ぶ人を見かけますが明らかに言い過ぎです。確かに管理人を含め、京都の人でもほとんど使われなくなった京言葉ではあるものの、明治時代以前では使われていましたし、明治生まれの管理人の曽祖母もたまに使っていました。今でも室町や西陣など京文化が色濃く残る街に暮らす人々が“おばんざい”と言っていても不思議ではありません。ただ、オカズや惣菜がすべて“おばんざい”かと問われれば、おそらくそうではなく、“昔から京都の家庭で普段から作り、食べられてきたオカズや惣菜がおばんざい”というのが個人的には一番しっくりときます。京都の食文化を後世に伝える味であり言葉ですので、大切にしていただきたいと切に願わざるを得ません。それでは海鮮丼をいただきましょう。
カツオ、サーモン、タイ、ハマチ、そしてサバのきずしが乗った海鮮丼です。どの魚も身がピカピカと輝いていておいしそう。きずしとは魚を酢で〆る調理法でサバの場合、シメサバが近いでしょうか。京都の名物でもある鯖寿司も広い意味ではきずしと言えそうです。
ちょうどいい塩梅に〆られたきずしで、半生な感じが素晴らしい仕上がりとなっています。居酒屋のきずしはサバに限らず、かなり強めに酢締めされているものが多いのですが、酢が強過ぎて魚本来の旨味や風味が感じられません。しかしこちらのサバのきずしはサバの濃厚な旨味を堪能でき、酢の爽やかな酸味が心地いい逸品と言えるでしょう。カツオやタイなども新鮮で臭みなども一切感じません。さすが全国の銘酒を取り揃えているお店らしく、魚の扱いも申し分ないと感じました。商用だけでなく観光でも四条烏丸近辺に来られる方は多いと思います。昼でも夜でも、ちょっといい感じの居酒屋で一杯、という方はこちらを試してみられてはいかがでしょうか。
[2020年9月20日訪問]
※価格は訪問日、店頭および店内のメニューに記載されていた金額です。
いっ献
●住所…京都市下京区四条町368(Google マップ)
●TEL…075-343-0880
●定休日…年中無休
●備考…禁煙
●ホームページ
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