小林商店
暖かい小春日和が続いていましたが、日中でも冷え込み日が増えてきて冬の訪れを感じるようになりました。そして受験シーズンでもあることから、特に学生は夜ふかしをすることも多いのではないでしょうか。管理人も一応は受験勉強をやっていたテイでラジオを聴きながら漫画を読んでいました。そうするとたま〜にどこからともなく聞こえてくるのですよ、屋台のチャルメラの音色が。今、深夜にそんな音を鳴らしていたら確実に近隣住民から苦情が出て営業停止になるでしょう。昭和の頃はいろいろと問題はあるものの、おおらかな時代でした。で、その音を聞きつけ小走りで屋台まで向かい、食べる中華そばのおいしかったこと。受験勉強のテイで深夜まで起きているため小腹もすいていて、夜ふかししててよかった〜と小さな幸せを感じる訳です。身体もポカポカと温まり、お腹も満たされ、後はグッスリと寝るだけ。ちっとも勉強してへんやんけ!と昔の自分を叱りつけたい気持ちと同時に、あの頃の小さな幸せを味わってみたい!とフト思い立って、帰宅途中に先斗町へと出掛けてみました。
三条大橋西詰の先斗町通を南へ200mほど行ったところにあるラーメン店「小林商店(こばやししょうてん)」。最近の先斗町や木屋町、祇園などは人もかなり増えてきて以前の活気が戻ってきたように感じられていたですが、11月21日に政府からGoToトラベル予約の一時停止が発表され、京都の繁華街や歓楽街も数ヵ月前のようなゴーストタウンになってしまうのかも知れません。新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるのも重要、地域の経済活動を停滞させないのも重要。個人的には街から人がいなくなるのは仕方がないと思う反面、国が一丸となってできるだけ早く特効薬やワクチンの開発・普及を進め、元の日常に戻すべきでは?と考えています。政治家の皆さんはもちろん、国民一人ひとりが協力すべき段階ではないでしょうか。政府や自治体は研究開発機関への寄付金受付システムを速やかに創設し、言い方は悪いのですがカネのチカラで1日も早い特効薬やワクチンの開発・普及に全力を尽くすべきでしょう。全国民が買物のオツリ、たとえ小銭でも1回寄付すれば、研究環境の改善や医療従事者など関係者への手厚いサポートが可能となり、研究開発スピードは高まるハズです。何だかガラにもなく政治家みたいなことを書いてしまいましたが、京都市長選に立候補する予定はありません。時刻は21時、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。
こちらは1966年(昭和41)に知恩院前で中華そばの屋台を始められ、その後山科区へ移転、そして2020年(令和2年)10月8日に三代目の大将がこちらの先斗町でオープンされました。お話をお伺いすると、やはり規制の問題から屋台営業そのものが難しくなっていて、店舗を構えることになったそうです。ラーメン店のような利益率の低い飲食業態を、先斗町という飲食ではトップクラスの家賃レベルのエリアで開業して大丈夫なの?と少し不安に感じます。ただ、〆ラーメンなど先斗町を始めとする歓楽街ではラーメン需要が相当高いこともあり、これから繁盛店へと期待されるお店です。店頭のメニューを確認し、「中華そば」¥800と「特製肉めし」¥500に決めて店内へ入ってみました。
真新しく清潔感があり、シックな雰囲気の店内です。周囲には飲み屋が多いこともあり、やはり〆ラーメン狙いなのでしょう。〆ラーメンと言いながら、結局はツマミとアルコール類を注文してしまうのも呑兵衛のサガ。管理人も若かりし頃は立派な呑兵衛だったため、気持ちは痛いほどわかります。また、先斗町界隈は夜にひとりで気兼ねなく食事できるお店が意外と少ないこともあり、商用で来られた方も重宝されるのではないでしょうか。三代目の大将に「中華そば」と「特製肉めし」を注文、ノンアルコールビールがあれば「肉シュウマイ」¥400も食べたいのにな〜とちょっと残念に思っていると「中華そば」が運ばれてきました。
コレですよ、コレ!これが昔、夜中に食べていた屋台の「中華そば」です。夜、チャルメラの音色で屋台の存在を知らせていたことから“夜鳴きそば”とも呼ばれる中華そばで、中央のナルトがなつかしい。具は青ネギ、チャーシュー、メンマ、海苔と王道の中華そばです。イマドキの京都市内のラーメン店ではまずお目にかかれない東京風の中華そば。こういう中華そばはわずかに食堂や定食店では見かけるものの、京都市内では絶滅危惧種となっています。では、まずはスープからいただきましょう。
琥珀色の醤油ベースのスープはアッサリとしていながら奥が深い味わいです。身も心も温まるような、昭和の味。と、言いたいところですが、実は創業当時の味ではなく、最近の人々の嗜好に合わせて改良されているそうです。本来はもっとアッサリとしていて醤油味も薄かったのだとか。正直に告白すると管理人的には十分に昭和の味と感じられたことから、平成・令和と生きてきて舌がより濃厚なものへ慣れてしまっているのかも知れません。個人的な感想として夜遅くに食べるのなら、これぐらいの味がちょうどいい。胃にスルスルと入っていく感じも昔ながらの中華そばです。
麺は博多ラーメンばりの細さで少し固めに茹でられています。やさしいスープにこの食感の麺がアクセントとなっていて、意外によく合います。何より極細麺ですすりやすいのがポイント。ツルンと心地よく口の中に入っていき、喉越しも気持ちいい細麺ならではの魅力を堪能できました。
肉厚のメンマ、豚バラ肉で柔らかく煮込まれた薄切りチャーシューも薄味ながらスープと絶妙にマッチした味付けとなっています。特にチャーシューの味わいが素晴らしい。一般的にチャーシューのおいしさは濃厚なタレと豚肉の旨味や甘みの複合的な味なのですが、こちらのチャーシューは薄味仕立てな分、豚肉の旨味と特に脂の甘みがクッキリとわかるおいしさです。肉の獣臭さはまったく感じられず、豚肉そのものの味わいを存分に楽しめます。
そしてそのチャーシューを使った丼が「特製肉めし」です。チャーシューと青ネギ、海苔だけのシンプルな丼ですが、これがご飯と本当によく合います。一応コチュジャンが添えられているものの、個人的には不要だと感じました。チャーシューが持つ豚肉本来の旨味と青ネギ、海苔の薬味だけでご飯が進む逸品です。あっさりと食べられる「中華そば」と「特製肉めし」にすっかり満足できました。飲んだ後の〆にも、夜遅くの食事にもピッタリな、身体にやさしく温まる昭和の味です。22時まで営業されているようですので、夜の先斗町や木屋町などを散策される方はちょっと立ち寄り、小腹を満たすのに利用されてみてはいかがでしょうか。こちらのお店はコロナ対策も万全ですので、安心して飲食できると思いますよ。
[2020年11月18日訪問]
小林商店
●住所…京都市中京区若松町138-4(Google マップ)
●TEL…075-211-7018
●定休日…不定休
●備考…禁煙
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「京都 夜鳴き屋台そば 昔ながらの中華そば 小林商店」で検索してください。
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