120年の歴史と伝統に彩られた祇園の蕎麦店

和食編
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やぐ羅 本店

本日は12月30日。明日は大晦日で、これまで誰も経験しなかったことが頻繁に起こった2020年(令和2年)も終わりを告げようとしています。コロナ渦にさらされた1年で世間的にはあまり良い年ではなかったように思いますが、好調な1年だった人も少なからずいらっしゃるでしょう。良い1年だった人も、そうでない人も、生きている限り新年は確実にやってきます。新しい年を迎えるにあたり、今年やり残したことは気持ちを切り替え、新年に行うぐらいの余裕が必要かなと個人的には思う一方、絶対にすべきことは何が何でもやるという強い気持ちが必要です。管理人にとって必ずやり切らないといけないこと、それは大掃除ではなく残ってしまった仕事でもなく、大晦日に食べるべき蕎麦のREPORT。そこで今回は、京都の大晦日を一足早くお伝えするべく、京都イチの歓楽街祇園へ向かいました。

四条通川端通の交差点(四条大橋)を東へ100mほど行った祇園商店街にある蕎麦店「やぐ羅 本店(やぐら ほんてん)」。創業は1900年(明治33年)で120年を超える老舗蕎麦店です。昨年の年末にREPORTした「総本家にしんそば 松葉 本店」から四条通を挟んだほぼ北向かいにあるお店で、こちらも「にしん蕎麦」の名店として知られています。「にしん蕎麦」とはニシンの乾物である身欠きにしんを甘辛く炊いて具とした温かい蕎麦のことで、同じ乾物である棒鱈とともに京都を代表する冬の味覚です。京都市内は内陸地であり日本海からも太平洋からも遠く、冷蔵・冷凍技術が発達する以前は鮮魚がほとんど手に入りませんでした。そこで珍重されたのが塩サバであり、日持ちがする身欠きにしん棒鱈といった乾物です。新鮮な魚を毎日食べることができる地域の人々にとっては信じられないハナシかも知れませんが、天皇陛下が京都御所に住まわれていた時代には、京都の皇族も貴族も豪商も身欠きニシンや棒鱈などを喜んで食べていたことでしょう。そんな食文化の背景もあり、特に京都では「にしん蕎麦」が発達したと思われます。ちなみに昔、ニシンの産地である北海道の方から“ニシン?カズノコを取ったら後は畑の肥料だよ?”と言われました。京都人が喜んで食べていたものが畑の肥料だったと知りショックだったのを思い出してむせび泣いています。さて、「やぐ羅 本店」は本来、夜は21:45ラストオーダーなのですが、2020年(令和2年)12月現在は時短営業中なこともあり、ラストオーダーは19:45。そこでいつもより少し早いめながら18:20に到着し、入店してみました。

さすがは名店だけあって、上品かつ清潔感が漂う店内です。蕎麦店ですのでお一人様でも入りやすい雰囲気で、チラホラと“蕎麦屋で1杯”の粋な方々がいらっしゃいます。ただ、大人の空間かと言われるとそうでもなく、意外と家族連れや若い女性のお客さんも利用されていました。こちらは老舗店ながら街の蕎麦店よりチョイ高いぐらいのリーズナブルな価格設定で、祇園という立地にありながら気軽に使えるお店です。ではメニューを確認してみましょう。

「穴子天丼」¥1,380をジィ〜っと見つめてしまいましたが、今回はさすがに「にしんそば」¥1,180でしょう。そしてもう1つの京都名物であるちりめん山椒の「山椒ちりめんご飯」が蕎麦とセットでプラス¥200と知り、こちらも注文。ちりめん山椒は50年以上前に京都の料理人が考案したご飯のお供で、なかでも女性に人気の一品です。管理人の周囲にもお土産物として用意している女性をよく見ます。京都の家庭では自作される方も少なくはないものの、とりわけ有名な「はれま」や「しののめ」、「やよい」などは、ちりめんジャコと実山椒の炊き合わせとは思えない典雅な味わい。興味がある方は取り寄せてみられてはいかがでしょうか。

「にしんそば」と「山椒ちりめんご飯」が到着。「にしんそば」から放たれる独特の香りに酔いしれます。鴨南蛮でも天ぷら蕎麦でもなく、にしん蕎麦独特の芳しい香り。身欠きニシンの少しクセのある味わいを予感させる、京都らしい香りです。それでは早速、蕎麦からいただきましょう。

「にしんそば」のダシが効いた、少し甘めの汁に二八蕎麦のツルツルとした食感がよく合います。そしてクセのあるにしん蕎麦には青ネギが欠かせません。“にしん蕎麦があるのだったら、にしんうどんがあってもいいよね?”とたまにおっしゃる方もいらっしゃいますし、実際にいくつかの蕎麦・うどん店で提供はされているものの、個人的な感想ながらビックリするほど合わない。おそらく淡白なうどんでは身欠きにしんに負けてしまうからでしょう。やはり蕎麦の持つ風味があってこその身欠きにしんです。

身欠きにしん本体はさらに濃厚な味わいで、管理人にとっては郷愁を誘う味。子どもの頃、身欠きニシンは昆布巻やナスの炊き合わせでオカズとして頻繁に食べていました。今では購入することも自作することもなくなってしまいましたが、もう少し年齢を重ねると猛烈に食べたくなるのかも知れません。そして改めて蕎麦との相性の良さを実感します。にしんうどんやにしん丼、にしんラーメンなどをあまり見かけないのには、確固とした理由があるのです。うどんや丼、ラーメンよりケーキやパフェなどの方が意外と合うかも知れませんので、人からなぜか“ちょっと変わってるよね”と言われる方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

そして「山椒ちりめんご飯」。こちらでも積極的に販売されているだけあって、なかなかのちりめん山椒だと思います。自作やスーパーなどで販売されているちりめん山椒は佃煮レベルの塩っぱさのものも少なくないのですが、本当は薄味でちりめんジャコの旨味と実山椒の爽やかな風味が立っているもの。それでいてご飯のお供にピッタリなのが本来のちりめん山椒です。こちらのちりめん山椒もやさしい味わいながら実山椒が効いていて、ご飯のお供として十分に成立する一品。「にしんそば」同様、常温の日本酒でもよく合うおいしさです。年末年始を京都で過ごされるのなら、京都人が愛してやまないにしん蕎麦やちりめん山椒、そして祇園という地でぜひ京都の風情を感じてみてください。では、新年2021年(令和3年)も当ブログをよろしくお願い申しあげます。

[2020年12月27日訪問]

やぐ羅 本店
●住所…京都市東山区中之町211(Google マップ
●TEL…075-561-1035
●定休日…なし
●備考…禁煙
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