盛泉苑
“中華料理と中国料理の違いって何?”とたまに尋ねられることがあります。管理人は中国人ではありませんし、中国に住んだこともなく、中華料理の料理人でもないのに、なぜそんな質問をされるのか不思議で仕方がないのですが、“中国料理を日本風にアレンジしたものが中華料理である”と子どもの頃、近所の中国人料理人に教わったことがあります。絶対的な法則ではないものの、おおむね正しいのではないでしょうか。中国には四大料理という地域ごとの大まかな分け方があります。日本では北京料理でおなじみの「山東料理」、上海料理に代表される「江蘇料理」、「餃子の王将」のCMで流れる“食は広州にあり”でなじみ深い「広東料理」、そして麻婆豆腐やエビチリなどが親しまれている「四川料理」。横浜や神戸の中華街ではほぼ「広東料理」系の店舗が大勢を占めていて、日本の中華料理店でもおそらくですが最も店舗数が多いのは広東料理系だと思われます。しかし、京都市内に目を向けると「餃子の王将」などの全国チェーン店を除いて、最も多いのは「四川料理」のお店ではないでしょうか。どういう歴史的経緯で四川料理店が多いのかはよくわかりませんし、日本における四川料理の始祖・陳建民氏(料理の鉄人で中華の鉄人を担当されていた陳建一氏の父)が京都で指導していたなんてハナシも個人的には聞いたことはありません。管理人が子どもの頃の街の大衆中華料理店は間違いなく広東料理系だったのが、いつの間にか四川料理店だらけになっていた、という印象です。そんな数ある四川料理店の中でも京都市内で随一の勢力を誇っているのが、かつて「百万遍店」をREPORTした「龍門」でしょう。その京都を代表する四川料理店「龍門」ご出身の方が独立されたお店が千本中立売と堀川中立売のほぼ中間地点にあります。
中立売通と千本通の交差点(千本中立売)を東へ400mほど行き、智恵光院通を南へ30mほど行ったところにある「盛泉苑(せいせんえん)」。以前REPORTした「麺処 雁木」の北隣にあるお店です。ちょっと入りにくい雰囲気ですが「龍門」同様、リーズナブルな価格で本格的な四川料理をいただける、知る人ぞ知る町中華店として地元の方などを中心に人気があります。時刻は13:40、早速店内へ入ってみましょう。
より中国っぽい店内なのは、こちらのご主人が中国のご出身だから。接客担当の奥様(?)も中国の方で、ちょっとカタコトですが日本語も通じます。グルメサイトなどで一部のレビュアーさんたちが“接客がよくない”のような意見をおっしゃられていて、管理人的には“そうだったっけ?”と思っていたのですが、今回訪問して何となく理由がわかりました。簡単に言えば日本人と中国人の気質の違いでしょう。中国の方の話し方や所作が日本人からするとつっけんどんと言うか、ぶっきらぼうと言うか、無愛想に見えるのだと思います。笑顔での接客が基本の日本人に対して、真顔での接客がデフォの中国人。もちろん中国の方でもフレンドリーな笑顔で愛想の良い接客をされる方もたくさんいらっしゃるものの、管理人が頻繁に伺う中国人だらけの元田中エリアのお店や神戸元町の中華街(南京町)のお店でも、接客はだいたい笑顔なしの真顔で無愛想に見えます。こちらに限らずたいていのお店では別に悪気があるワケではないと思いますので、本場中国のお店に訪問した気分になって大陸的な大らかな気持ちで接客も楽しまれてみてはいかがでしょうか。ではメニューを確認してみましょう。
中国の方のお店らしく大量のメニューが用意されているのですが、メニューをサッと下げられてしまったため、わずかしか撮影できませんでした。以前お昼に伺った際には、ランチのセットメニューが数種類用意されていたように記憶していたものの、今回の訪問では見当たりません。ランチのセットメニューがなくなったのか、訪問したのが日曜日だったためセットメニューがないのかはわかりません。お昼は近隣の方がよく利用されていることもあり、セットメニューは平日限定の可能性もありますので、今度は平日に伺ってみようと考えています。こちらでは本格的な四川料理をいただけることから、今回は「麻婆丼」¥750と「豚肉の天ぷら」¥880をチョイス。「麻婆丼」は代表的な四川料理である麻婆豆腐をオン・ザ・ライスした丼で、日本でも大人気のメニューです。「豚肉の天ぷら」は四川料理というワケではなく、完全に管理人の好み。豚の天ぷらがあると必ず注文してしまうのは、同胞意識の表れだとご理解ください。
まず「麻婆丼」が到着。どこの中華料理店でも置かれている麻婆豆腐ですが、やはり本場・四川料理のものはひと味違います。唐辛子の辛味と四川山椒のシビれる辛味、このダブルの辛味がやみつきになる味わい。管理人は辛いものが得意ではありませんし、辛い料理はなるべく避けてきた人生を歩んできました。しかし、麻婆豆腐に関しては、ある程度の辛さがないとやはりちょっと物足りません。もっとも、最近はやりの麻婆豆腐専門店などのものは管理人には辛過ぎで食べるのがツラい。こちらの「麻婆丼」はギリギリの辛さレベルに抑えられていて、汗をかきながらいただける逸品と言えるでしょう。辛いものが苦手な方やお子さんには辛くない料理も豊富に用意されていますので、ムリに注文しない方がいいかも知れません。
「豚肉の天ぷら」は天ぷらというよりは唐揚げに近い仕上がり具合です。下味もしっかりと付けられていて、豚肉の旨味と甘みを存分に楽しめます。振りかけてある四川山椒がアクセントとなっていて、塩コショウや辛子醤油などは不要。揚げたての香ばしさやおいしさに加え、肉を喰った感があるボリュームもうれしい逸品となっています。四川料理をはじめとする本格的な中国料理をリーズナブルな価格で気軽にいただけるお店です。インパクトのある中華をガッツリ食べたい時など、ぜひこちらまで足を伸ばしてみられてはいかがでしょうか。
[2021年1月31日訪問]
盛泉苑
●住所…京都市上京区多門町434(Google マップ)
●TEL…075-451-0358
●定休日…水曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…facebook
※さらに詳しくは食べログ「盛泉苑」を検索してください。
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