きっちん ふじと
首都圏を除く東海・近畿・九州の2府4県で緊急事態宣言が解除されました。新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向であることに加え、ワクチン接種がスタートするなど、徐々に落ち着きを取り戻しつつある気配を感じます。とは言え新型コロナウイルス騒動前の日常には、おそらく長い時間をかけても戻りそうにはありません。当面は深夜営業を自粛する飲食店も多いでしょうし、テイクアウト主体に変更された飲食店も店内飲食の再開には慎重でしょう。利用者側としても引き続きマスク着用や手洗いの励行、3密回避、黙食などが必要となります。一連の騒動により多くの飲食店が閉業の決断をされるなど、飲食店にとっても大ダメージとなりました。特にご高齢の店主にとっては繁盛店であったとしても辞めるキッカケの1つとなったのではないでしょうか。当ブログではこれまで、閉業を予定されている飲食店の新規REPORTをできるだけ控えてきました。当ブログを見て興味を持っていただいても、肝心のお店がなくなっていては読者にとって有益な情報ではないと判断していたからです。しかし、当ブログには京都の飲食店情報を後世に残すアーカイブ的な役割もあるのではないか、と最近考えるようになりました。大げさに言えば京都の食文化のごくごく一端ではあるものの、その史料になるのではないか、と。そこで今回は、2021年(令和3年)3月31日で閉業を予定されている洋食店を訪問してみました。
九条通と河原町通の交差点(九条河原町)を東へ550mほど行ったところにある「きっちん ふじと」。京阪「東福寺駅」またはJR「東福寺駅」から徒歩2分程度の、住宅街の一角にある洋食店・トンカツ専門店として51年の歴史を刻まれてきました。京阪「東福寺駅」またはJR「東福寺駅」は大きな駅ではないものの、臨済宗東福寺派の大本山「東福寺」の門前町として栄えていて、駅の規模の割には飲食店も少なくないエリアです。こちらは住宅街にひっそりと佇んでいる隠れ家的な雰囲気を持つお店で、どちらかと言えば地元の方や地域企業・工場にお勤めのビジネスパーソンなどに人気のお店でしょう。今月末でお店を閉められるという情報をキャッチしたため、その真偽を確かめるべく十数年ぶりに伺ってみました。時刻は13:50、早速店内へ入ってみましょう。
昭和のカジュアル洋食店らしい落ち着いた雰囲気のある店内で、お一人様での利用も多い店内です。そしてやはり閉業される情報は本当でした。どのような理由で閉業されるのかは確認しませんでしたが、理由はどうあれ地元から長く愛されてきたお店がなくなるのは残念でしかありません。もちろん閉業という大きな決断をされるのには相当な事情がお有りなのでしょうからお店の決断を受け入れ、管理人も含め利用者それぞれの記憶に残すことしかできないのですが。ではメニューを確認してみましょう。
とんかつ各種がメインながらセットメニューや定食類も豊富に用意されている街のカジュアル洋食店です。管理人にとってはおそらく最後の訪問となりますので、さんざん悩んだ挙げ句、「盛り合わせスペシャルメニューC(特製海老コロッケ・とんかつ・フライドチキン・野菜サラダ)」¥1,050をチョイス。実はプラス¥50の「みそ汁」を追加するつもりでしたが、注文時に言い忘れていました。“老いる”とはこういうことじゃよ…と皆様も肝に銘じていただきたいと存じます。
「盛り合わせスペシャルメニューC(特製海老コロッケ・とんかつ・フライドチキン・野菜サラダ)」が到着。これだけの陣容で¥1,000チョイですから、常連客にとっても閉業は本当にショックだと思います。まずは皿の上でなぜか最も主張しているフライドチキンをガブリ。骨付き鶏モモ肉の旨味が口の中いっぱいに広がるおいしさです。チェーン店のフライドチキンにはない肉汁の多さに本物の味を堪能することができます。この緊急事態宣言で夜の外食を一切しなくなり、先日久しぶりにチェーン店のフライドチキンをテイクアウトして食べてみたのですが、正直に告白するとあまりおいしくは感じられませんでした。子どもの頃はご馳走と思えた味のハズなのですが、とにかく鶏肉の旨味が弱い。鶏肉自体の質というよりは、作り置きも含めた調理法の問題のような気がしました。失礼を承知で言うと、パッサパサで実際に食べたことはない紙粘土を食べているような食感はおそらく加熱し過ぎなのでしょう。チェーン店ですのでファンも多いかとは思いますが、フライドチキンはやはり洋食店などでいただくべきだとこちらのフライドチキンで改めて実感しました。
とんかつは親指を二回りほど大きくしたサイズのものが3本で、甘めのブラウンソースがよく合います。揚げたてのトンカツは本当においしい。そしてご飯にもピッタリです。大人になって“トンカツをオカズにご飯を食べる”機会は少なくなりましたが、トンカツ専門店や洋食店でトンカツを食べるたびに、ご飯のオカズとしてのトンカツの有用性を見直します。“ご飯に合う揚げ物選手権”なるものが開催されれば、鶏の唐揚げやミンチ(メンチ)カツと並んでTOP3に入るのではないでしょうか。
そしてこちらの名物と言っても過言ではない特製海老コロッケです。一見、エビフライのようなフォルムに驚くものの、パクリと食べるとトロットロでなめらかなベシャメルとエビの身が口の中で弾けます。クリームコロッケ好きの管理人としては申し分のないおいしさです。この特製海老コロッケであればダイエット中でさえなければ10本は余裕でイケます。特製海老コロッケをおいしいと思えなくなった時が、命の灯火が消える時であるとすら思いました。そう考えると、今月末で閉業されるのはやはり惜しい気がします。京都府の緊急事態宣言も解除され、少しは外出の機会も増えるハズですので、今月内に東福寺周辺にお越しの際にはぜひこちらの味を確かめにお立ち寄りください。
[2021年2月23日訪問]
きっちん ふじと
●住所…京都市東山区福稲御所ノ内町2-14(Google マップ)
●TEL…075-541-7592
●定休日…金曜日・土曜日
●備考…①禁煙
②2021年(令和3年)3月31日(水)で閉業
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「ふじと」で検索してください。
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