殿田
3回目の緊急事態宣言が発令されて京都の飲食店にとっても苦しい状況が続いています。特に今回の宣言では酒類の提供が制限されるそうで、多数の飲食店でかなりのダメージを受けるハズ。アルコール類を豊富に提供している飲食店では、利益の多くをアルコール類で確保していて、休業されるお店が激増すると思われます。当ブログでは管理人がお酒を飲まないお一人様のためアルコール類メインの飲食店はほとんど訪問しておらず、更新への影響は少ないと思われがちですが、実はもう1つの原因でまたまた更新の停止を検討する段階となってしまいました。それは飲食店の店主やスタッフにシニア世代が多いという問題です。不特定多数のお客さんを接客する飲食店では、コロナウイルスに感染すると重症化しやすいシニア世代の店主やスタッフにとって恐怖でしかなく、休業を余儀なくされるお店も増えて当然。休業どころかこのタイミングで閉業されるお店も現れるでしょう。当ブログでは京都府にまん延防止等重点措置が出された段階で、これまでの週3回更新から月曜日・金曜日の週2回更新に抑制して細々と続けていますが、飲食店の営業状況次第では更新を中止せざるを得ないと考えています。更新を中止する際は当ブログでご報告いたしますので、よろしくお願い申しあげます。
さて、今回REPORTするのはJR「京都駅 八条口」のほど近くにあるうどん店・食堂です。50年以上営業されている地元では知らない人はまずいないと思われる名店で、管理人も昔から何度か伺ったことがあります。先日、twitterのフォロワーさんからオススメ店としてお知らせいただいたこともあり、久しぶりに伺う機会を狙っていました。ちょうど近隣のイオンモールKYOTOに用事があったため、用事を済ませたその足で向かうことに。
油小路通(国道1号)と東寺道の交差点(油小路東寺道)を東へ400mほど行ったところにある「殿田(とのだ)」。昭和の頃にはどこにでもあった食堂の風情を今に伝えるお店で、昔は地元民御用達といった感じでした。しかしインターネットやメディアで広く知られるようになり、京都の南の玄関口でもあるJR「京都駅 八条口」から近いこともあり、近年では他の都道府県だけでなく外国人の観光客も増え、この地域では1、2を争う人気店となっています。こちらのような昔ながらのうどん店や食堂への評価が滅法厳しい食べログのスコアも驚くほど高く、人気に拍車をかけているのでしょう。こちらは昼どきはもちろん混雑はするものの、11時(日によっては遅れることもあります)〜17:30の通し営業で、時間をずらせば比較的ゆっくりと食事を楽しめます。時刻は14時、早速店内へ入ってみましょう。
古いお店ながら明るく、清潔感がある店内です。開放的な間取りでカウンター席などはありませんが、お一人様のお客さんも多く利用されています。街のうどん店・食堂ですので、気取らずに利用できるのも人気なのでしょうか。こちらも昔から営業されているだけあって、お店の方は皆さんシニア世代です。しっかりとコロナ対策はされているものの、状況によっては休業される可能性もまったくないワケではありませんので、訪問したい場合はお店にご確認ください。ではメニューを確認してみましょう。
うどんと丼が中心のメニュー構成となっていて、「中華そば」¥700や「カレーライス」¥700も昔ながらの味わいで人気です。また、写真はありませんが、いなり寿司や巻き寿司などの盛り合わせ「すし 大皿」¥500・「すし 中皿」¥450・「いなりすし」¥300もあり、うどん各種やビールなどのお供にピッタリでしょう。そしてこちらの名物は「たぬきうどん」¥600です。この「たぬきうどん」、名称は同じでも地域によってまったく違う種類のうどんで、異なる都道府県どうしで話をすると会話が噛み合わず議論が沸騰する食べ物として知られています。管理人が知る限りの「たぬきうどん」を下記に記載してみましょう。
●京都府の「たぬきうどん」…刻み油揚げと刻み青ネギの餡かけうどん
●東京都の「たぬきうどん」…揚げ玉(天かす)と刻みネギのうどん
●大阪府の「たぬきうどん」…そんなん、あるかいや〜 ※大阪弁微量多め
東京都(おそらく首都圏も含めて)では「たぬきうどん」と言えば揚げ玉(天かす)が乗ったうどんでしょう。京都や大阪などの関西地方では「ハイカラうどん」と呼ばれるうどんです。関東と関西でなぜ全然別物になったのかは諸説あるようですので、興味がある方はぜひ調査して管理人に教えてください。それよりも驚きなのが、お隣の地域にも関わらず、大阪では「たぬきうどん」自体が存在しないということです。ちなみに「たぬき」は存在し、それは油揚げを乗せた蕎麦、つまり「きつねそば」のことを指します。大阪のうどん店では「きつね」と注文すれば自動的に「きつねうどん」が提供され、「たぬき」と注文すれば「きつねそば」が運ばれてくるシステム。30年近く、京都人のスパイとして大阪市で日々暗躍している管理人でも、なぜ京都と大阪でこれほど違うのかはよくわかりません。ただスパイとして1つ言えることは、京都と大阪はとても仲が悪く絶対に協調せず未来永劫、大阪には「たぬきうどん」はなく、京都では「きつねそば」を「たぬき」とは決して言わないことだけは断言しておきます。今回はこちらの名物であり大阪人には味わえない「たぬきうどん」と、管理人のまったく個人的な性食癖で大好物の「他人丼」¥750を注文してみました。
まず「他人丼」が到着。青ネギ、タマネギにたっぷりの牛肉がトロットロの玉子でとじられています。玉子の半熟具合も申し分ありません。「他人丼」と一緒に粉山椒が提供されるのも京都らしく、しっかりめにかけていただきます。
とにかく牛肉の旨味、脂の甘みが絶品です。ダシの風味が香る薄味仕立てなのも高ポイント。他人丼や親子丼、牛丼などの味付けは一般的に甘辛さを効かせないとボンヤリとしたイマイチな味になりがちなのですが、こちらの「他人丼」は甘辛さが薄めでもダシの旨味がしっかりとしているため、牛肉や玉子、青ネギ、タマネギといった素材の味が際立っている仕上がりとなっています。何より、甘辛さに頼っていないため、食べ続けても食べ飽きません。他人丼普及協会会長(自称)としては、ぜひ皆さんに味わっていただきたい「他人丼」だと感じました。
そして京都人が誇りにすら感じる「たぬきうどん」です。刻み油揚げと青ネギ、すりおろしショウガにナミナミと注がれた餡がおいしそう。カレーうどんと並んで寒い時期の京都を代表するうどんの1つです。では京都人らしく、餡とお揚げさん(油揚げ)をいただきましょう。
なめらかでトロトロな餡もダシが十分に効いたやさしい味わいです。そこにきつねうどんほどの甘ぎつねではない甘さ控えめなお揚げさんと青ネギのおいしさが完璧。すりおろしショウガのキリリとした風味が全体の味を引き締めています。素材自体はシンプルですが、ちょっとやそっとでは真似できない味ではないでしょうか。さすがはこちらの名物と呼ばれるだけの味わいだと思います。
うどんは京風らしい細めでコシがほとんど感じられない柔らかな食感です。この柔らかなうどんと餡、お揚げさん(油揚げ)が絶妙なバランスで、これがコシの強い稲庭うどんや讃岐うどんであれば、うどんばかりが悪目立ちする調和が取れない味となることでしょう。やはり京都の「たぬきうどん」や「カレーうどん」には、コシがないうどんがよく合います。“うどんはコシが命”と信じて疑わない方も、ぜひこちらの「たぬきうどん」を食べていただきたい。口の中でほどけるうどんと餡のおいしさこそ、根はとても優しい京都らしさを感じられるハズですよ。
[2021年4月24日訪問]
殿田
●住所…京都市南区東九条上殿田町15(Google マップ)
●TEL…075-681-1032
●定休日…年中無休
●備考…禁煙
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「殿田」を検索してください。
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