王府(わんぷう)
自分で料理をする人としない人では、その感覚に大きなへだたりがあります。料理をしない人の感覚では、肉じゃがはどうやら簡単な料理なのだそう。確かに特別な調理法や火加減に細心の注意を払う料理ではないものの、作ってみると結構メンドクサい。料理をしない人から“今日は簡単に肉じゃがでエエで〜”と言われると、作る側にとってはイラっとしたりモヤっとするのはよくわかります。肉じゃが同様、冷やし中華も料理をしない人にとっては簡単な料理だと思われているようです。とんでもない!と個人的には思います。スーパーなどで販売されている冷やし中華用の麺とタレのセットを購入したとしても、麺を茹でて氷水で冷やして〆る手間が必要で、さらに具のキュウリや錦糸玉子、ハムやチャーシューなどを刻む作業は相当に面倒。特に錦糸玉子は技術的には難しくないものの、薄焼き玉子を焼いてさまして刻む手間はなかなかのものではないでしょうか。個人的には冷やし中華をどうしても自宅で食べたいのであれば、コンビニで完成品を購入した方が低コストかつ労力と時間の節約になると断言できます。ただ、最近のコンビニのクオリティはかつてに比べて格段に向上しているとは思いますが、冷やし中華に関しては副菜の域を超えていないとも思うのです。おいしい冷やし中華はやはり中華料理店やラーメン店などの飲食店で食べたい。そこで今回は、地元で愛される古くからの町中華店の冷やし中華を久しぶりに味わおうと、修学院エリアへ向かいました。
北山通と白川通の交差点(白川通北山)を西へ50mほど行ったところにある中華料理店「王府(わんぷう)」。こちらも古くからあるお店です。叡電「修学院駅」から徒歩2分程度と便利な場所にあり、近隣には京都工芸繊維大学や京都市左京区役所があるなど、地元の方だけでなく学生や留学生、ビジネスパーソンにも人気のお店と言えます。時刻は11:55、早速店内へ入ってみましょう。
緊急事態宣言中かつ日曜日ということもあり、お客さんは普段より少なめでした。テーブル席と小上がりの座敷があり、緊急事態宣言中はアルコール類を提供されていませんが、通常であればグループでの宴会にも利用できます。お一人様でも入りやすい町中華店らしい雰囲気。実際、管理人が訪問した日のランチタイムは、お客さんのほとんどがお一人様でした。最近、京都ではいわゆる街の中華屋さんがどんどん減っていることもあり、今や貴重なお店の1軒です。ではメニューを確認してみましょう。
こちらの名物は長崎新地中華街より直送される麺を使用されている「長崎チャンポン」と「皿うどん」ともに¥800でしょう。町中華のメニューもひと通り揃っています。そしてメニューには記載されていませんが冷やし中華「冷麺」¥820も夏季限定で提供中。最近、雨ばかりの梅雨のような気候でちょっと涼しい感じではありますが、歩くとやはり蒸し暑く汗をかきますので今回は「冷麺」をいただきます。ちなみに定食の「ラーメンセット」4種類のラーメンを、差額分を支払えば「冷麺」に変更可能。ここは餃子とライスがセットとなった「ラーメンセットC(ラーメンを冷麺に変更)」¥970に決めて注文しました。
まずは「冷麺」が到着。ゴマダレベースのスープに具はチャーシュー、蒸し鶏、錦糸玉子、キャベツ、キュウリ、ワカメ、トマト、紅生姜と盛りだくさんのボリュームです。これを自宅で再現しようとすると手間もコストもかかります。4人家族ならコスト面では多少節約できるかも知れませんが、4人前を作るのはかなり面倒ではないでしょうか。管理人のような単身者にとっては手間もコストも論外で、自宅で作ると考えるだけでゲンナリします。そして何より、この一皿で立派な主役となっているのも見逃せません。肉と野菜のバランスもよく、栄養的にも申し分ないと感じました。スープは少し甘めながらクリーミーな味わいで、これも自宅で再現できるクオリティではありません。プロの料理人でもない限り、冷やし中華を自宅で作るのはオススメできません。家族の中で料理をしない人から“今日は簡単に冷やし中華でエエで〜”と言われたら、料理をする人はブチギレていい。ぜひ仲良く笑顔で近隣の中華店やラーメン店などに出かけて、プロが作る冷やし中華を味わってください。では麺もいただきましょう。
こちらの麺は長崎チャンポンばりの細麺です。麺の下に氷が仕込まれていることもあり、キリリと冷やされた硬めの食感が濃厚なスープとよく合います。細麺なのでスルスルと口の中に入り、食欲がないときでもスンナリといただけるのではないでしょうか。バラエティに富んだ具をつまみつつ麺をすする、夏の昼下がりの贅沢を実感できます。冷たい蕎麦やうどんとは異なる夏の風物詩にふさわしいおいしさを堪能できました。
セットの餃子とライスが運ばれてきました。本当は「冷麺」だけで十分に満足できるボリュームだったのですが、夏の焼き餃子も格別です。こちらの焼き餃子は羽根つき餃子で、京都の中華店ではおそらく少数派。羽根のパリパリ感がビールにピッタリでしょうし、もちろんライスのお供にも最適です。テーブルに備えつけてある餃子のタレと酢を調合していただきましょう。
少し小ぶりな餃子ですがニンニクが効いていて旨味も凝縮された焼き餃子です。羽根のパリパリがアクセントとなっていて、いつもの焼き餃子よりも特別感があります。飲まない管理人にとっては、ご飯のオカズとして本当に有能だと感じました。決して塩っぱい味ではなく、餡の素材の旨味がとにかくスゴい焼き餃子です。この焼き餃子だけでもこちらの実力がわかります。緊急事態宣言中は家族でのお出かけは難しいとは思いますが、お一人様や少人数で修学院エリアまでお越しの際には、ぜひこちらの「冷麺」や料理の数々を味わっていただき、ひとときの幸せを感じられてみてはいかがでしょうか。
[2021年8月22日訪問]
王府(わんぷう)
●住所…京都市左京区山端壱町田町8-77(Google マップ)
●TEL…075-711-9180
●定休日…火曜日
●備考…禁煙(?)
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「王府」を確認してください。
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