京都人が愛する親子丼を味わえる水炊き専門店

和食編
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鳥よし

京都人は親子丼を溺愛しています。甘やかし過ぎです。他人丼普及促進連盟(他丼連)の会長(自称)である管理人は常々、京都における親子丼の優遇ぶりを苦々しく思っています。テレビ番組などのメディアでは“京都のランチ”として親子丼がよく採り上げられることにも嫉妬を覚えます。親子丼はカツ(煮)丼や他人丼と同様、玉子丼を祖とする丼。その中でも甘辛く煮付けた油揚げ(甘ギツネ)を卵でとじた衣笠丼や、カマボコを煮て卵でとじた木の葉丼などが京都市内のご当地丼として知られていたものの、今では親子丼が京都市内のご当地丼のような顔をしていて腹立たしい。他の都道府県の人にとって親子丼は、どちらかと言えば女性や子どもに人気の丼だと推察されてますが、京都ではカツ(煮)丼は別格として、老若男女を問わず親子丼が人気を集めています。その背景には、京都では明治初期から鶏肉を食べる習慣がイチ早く根付き、鶏鍋(現在の水炊き)専門店が多いからでしょう。鶏肉をさばくプロである水炊き専門店がランチに提供する定番メニューが親子丼だったことから、おいしい親子丼が京都で浸透したものと思われます。他人丼をこよなく愛する管理人も歴史的背景には勝てません。そこで今回は、千本今出川近くにある老舗水炊き専門店で親子丼をREPORTしてみました。

千本通今出川通の交差点(千本今出川)を南へ300mほど行ったところにある水炊き専門店「鳥よし(とりよし)」。こちらは創業60年を超える老舗店で、西陣千本商店街を代表する飲食店の1軒です。夜は本格的な水炊きをはじめ、さまざまな鶏料理を楽しめるお店として知られています。ちなみに九州を除く多くの地域で水炊きと言えば、昆布出汁で鶏肉を煮て食べる鍋料理として認識されていて、実際に京都でも自宅で水炊きをする場合は昆布出汁がほとんどではないでしょうか。一方、水炊きの本場である博多を中心とした福岡県およびその周辺では、鶏ガラなどを長時間煮出して中華料理の鶏白湯と同じようなスープを作り、そこに鶏肉や野菜などを煮て食べるのが主流。昆布出汁ベースの水炊きとは異なり旨味や風味が格段に向上する反面、鶏白湯を作る手間暇を考えると家庭ではなかなか難しいと感じます。京都の水炊き専門店では、その多くが白濁した鶏白湯スープを使用されており、こちらも鶏ガラを10時間煮出したスープでいただく水炊きが人気商品です。そして京都の多くの水炊き専門店同様、こちらもランチは「名物 親子丼」¥860が一番人気。まずは店頭のメニューを確認してみましょう。

夜の看板メニューは「水だき」¥3,350や「鶏好き鍋」¥3,350などの鍋料理だけではなく、焼鳥をはじめとする焼き物をはじめ、各種の鶏料理が用意されています。ランチメニューは名物の「親子丼」だけでなく定食類も豊富。管理人が幼児の頃、姉が持っていた少女コミックスに“親子丼を食べてジンマシンが出た”という表現がされていて、その少女漫画を読んでから数年は親子丼が食べられませんでした。別に卵アレルギーでも鶏肉アレルギーでもありませんので、当時から相当アホだったと我がコトながら呆れてしまいます。今回いただくのは「若鶏 鶏山しょ焼丼」¥860でも「若鶏 唐揚げせっと」¥960でもなく、「名物 親子丼」。時刻は13:30、早速店内へ入ってみましょう。

年季の入った老舗風ながら堅苦しくないカジュアルな雰囲気の店内には夜メニューの仕込み用でしょうか、鶏スープの豊かな香りが充満しています。手前と奥が座敷席、中ほどがカウンター席となっていて、特に昼はお一人様の利用も多い印象です。こちらは地元民だけでなく観光客の利用も多く、着物の着付けサービスなどもされています。着物に身を包んだ若い女性や外国人の写真が貼られていおり、また、有名人も頻繁に利用されている様子で、壁に有名人のサインが多く掲出されていました。そんな掲出物の眺めていると、こんなポスターを発見。

全国丼グランプリ」なるコンテストがあるそうで、第5回(2018年)全国丼グランプリの親子丼部門おいて、こちらの「名物 親子丼」が金賞を獲得されたそうです。このコンテストのホームページを拝見する限り、他人丼部門は当然のごとくありませんし、肉丼部門においても他人丼が賞を獲得しているのを確認することはできませんでした。このコンテストを主催?運営?されている全国丼連盟(全丼連)には猛省(もうせい)を促したい。そして全国丼連盟(全丼連)にすら見放された他人丼が不憫でならない。他人丼普及促進連盟(他丼連)会長(自称)の管理人が世界で唯一人の他人丼愛好家となっても、他人丼というマイナーな丼を後世まで伝え続ける所存です。ではランチメニューを確認してみましょう。

ほぼほぼ鶏づくしの丼や定食類がリーズナブルにいただけます。「豚カツせっと」¥1,340の場違い感よ。夜のメニューでトンカツは提供されていないと思われますので、この「豚カツせっと」のためだけに豚肉を仕入れられているのでしょうか。「ハンバーグせっと」¥980は、お子さん連れで来店された際の保険的な子ども向けメニューとしてまだ理解できますし、料金も他メニューと比べて違和感はありません。しかし「豚カツせっと」は水炊き専門店で誰が注文しているのか謎ですし、料金は唯一の¥1,000超え。この仕入れられた豚肉は、おそらく鶏肉ばかり調理しているお店の皆さんが、まかないで毎日毎日鶏ではさすがに飽きるので、豚肉を使ったまかない料理を作られていると予想しました。そう考えると¥1,340という価格は、「豚カツせっと」が予想外に多く注文され、まかない料理用の豚肉がなくなるのを防ぐ意味があるのかも知れません。水炊き専門店が作る豚肉のまかない料理はぜひ食べてみたい。そんな際限のない妄想の垂れ流しは時間のムダなため打ち切って、今回は「名物 親子丼」と、昼でもオーダー可能な「焼鳥 ねぎま」¥720を注文してみました。

まずは「名物 親子丼」が到着。トロットロの玉子のビジュアルと海苔の香りが食欲をそそります。こちらの親子丼は青ネギとタマネギの二刀流。京都の親子丼は青ネギのみが多い感じですので、タマネギの役割についてじっくりと味わう必要があります。関東の親子丼はミツバが多いようなイメージですが、あくまで個人の感想ですので間違っているかも知れません。“自分の地域の親子丼はミツバではなくモロヘイヤです、訂正してください”などのクレームご意見はご遠慮ください。では「名物 親子丼」をいただきましょう。

とろんとろんの玉子にダシの効いたツユダクの親子丼は、本当にやさしい味わいです。一般的な甘塩っぱいツユではなく、ちょっと甘めなのはタマネギの効果でしょうか。ナルホド、この少し甘めの味付けが、鶏肉の旨味とよく合っています。水炊きの〆の雑炊を思わせるユルユルのツユダク具合がおいしい。デフォルトでかけられている粉山椒がいいアクセントとなっていて、食欲があまりないときでも、これならいくらでも食べられそうです。玉子をたっぷり使われていて栄養価も高く、胃にもやさしい「名物 親子丼」。“名物”と名付けられる逸品だと実感できました。

香ばしく焼き上げられた「焼鳥 ねぎま」も文句のつけようがないおいしさです。鶏肉の旨味と白ネギの甘味が口の中で渾然一体となります。飲む人ならビールか日本酒でキマリでしょう。日本人が大好きな焼鳥ですが、実は本当においしいと思える焼鳥はかなり少ない。鶏肉は何より締めてから・切ってからの鮮度が重要であり、スーパーの精肉店売場などでもたまに販売されている“朝びき”の丸の鶏肉は、その日の朝に締められた鮮度のいい状態の鶏肉です。切って時間が経つと鶏肉の旨味が流出するため、途端に鮮度が落ちてしまいます。焼鳥専門店でも昼の仕込みで大量の鶏をカットし、串を打って夜の営業に備えている店がほとんどですが、それではどうしても鶏肉の味が抜けてしまうことがほとんど。できれば朝びきの丸鶏を注文時にカット・串打ちをして焼いてくれるお店が理想的です。こちらの焼鳥は鶏肉の旨味がしっかりと味わえ、個人的にも満足できるおいしさでした。コンテストで金賞を受賞した「名物 親子丼」をはじめ、鶏のおいしさを存分に堪能できるお店です。他人丼普及促進連盟(他丼連)会長(自称)の管理人も納得のこちらの親子丼を、ぜひ皆さんもご賞味ください。

[2022年1月16日訪問]

鳥よし
●住所…京都市上京区北伊勢殿構町675(Google マップ
●TEL…075-451-2151
●定休日…月曜日
●備考…禁煙(?)
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