江戸時代に親しまれた蕎麦を現代に伝える蕎麦店

和食編
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竹邑庵太郎敦盛

2022年(令和4年)も間もなく終わりです。今年1年、良かった人も良くなかった人も気分を一新して2023年(令和5年)を迎えましょう。日本では古来より大晦日(12月31日)に蕎麦をいただく風習があります。理由については諸説あるものの、蕎麦好きの管理人は大晦日には必ず蕎麦を食べる派。冷たいざる(もり)蕎麦も温かいかけ蕎麦も好きですが、蕎麦を麺として食べる蕎麦切りの形態となった江戸時代、現代のように蕎麦を茹でて食べるのではなく、蒸して食べていたそうです。現在でも“せいろ蕎麦”などの名称で提供されていますが、本格的な蕎麦店でも少なくなっており、その中でもせいろを器としていながら実際には茹でた蕎麦がほとんど。地域にもよるのでしょうが、いにしえの蒸した蕎麦を食べられる機会は少なくなっています。蕎麦の老舗店や有名店が多い京都市内でも、蒸した蕎麦を提供しているお店はほとんどありません。そこで今回は、江戸時代から連綿と続く伝統的な蒸した蕎麦をいただこうと、烏丸丸太町へ向かいました。

少しわかりにくい場所ですのでここまで辿り着ければ正解です。烏丸通丸太町通の交差点(烏丸丸太町)を北へ100mほど行き、椹木町通を西へ30mほど行った南側の路地。「名代 あつもりそば 竹邑庵太郎敦盛(ちくゆうあん たろうのあつもり)」の看板が出ていることを確認し、そのまま20mほど進むと見えてくるのが今回REPORTする蕎麦店「竹邑庵太郎敦盛」です。

以前REPORTした「チョット台所二居マス」の北隣にあるこちらは、京都市内では珍しい“あつもり(熱盛/温盛/敦盛)蕎麦”で有名なお店。“あつもり(熱盛/温盛/敦盛)蕎麦”とは、せいろで蒸した蕎麦または茹でてからいったん冷水で締めて再度湯通しする、どちらにしても一般的な蕎麦店ではあまりお目にかかれない温かい蕎麦を指します。こちらのあつもり蕎麦はせいろで蒸された、江戸時代の作り方を踏襲された伝統の蕎麦のようです。以前は夜も営業されていたものの、現在は11時〜14:30の昼のみの営業。日時によっては行列ができる人気店となっています。時刻は11:30、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。

こちらは生活道路に面しているお店ですので、車は言うに及ばず自転車やバイクなどでの来店はNG。また、“お子様のご入店は固くお断りしております。”と記載されていますのでご注意ください。“お子様”が乳幼児なのか、小学生までの児童なのか、中高生の生徒も含まれるのか、管理人のように精神年齢がお子様なオッサンはどうなのか、しっかりと確認はしていませんが、オトナな紳士・淑女が集う蕎麦店だと考えれば、自信のある紳士・淑女な人や紳士・淑女を偽れる人なら大丈夫でしょう。そして京都の料亭のような佇まいながらイマドキでは珍しく喫煙可。とは言え管理人の少ない訪問歴で参考にはならないものの喫煙されているお客さんは見かけたことがありません。では一通り確認事項をクリアしたうえで、早速店内へ入ってみましょう。

靴を脱いで上がるスタイルで、1階は3名が座れるテーブル席2卓および座敷となっています。クラシカルな内装で高級店のおもむきですが、混んでなければお一人様でも安心して利用できる雰囲気です。そもそも蕎麦店は現在のラーメン店や喫茶店、牛丼店などと同様、お一人様での利用が当たり前であり、最近たま〜に見かけるグループ利用を前提としているような蕎麦店などは邪道。言語道断であると個人的には考えています。もちろん混雑時には相席になるか、待つ必要はあるでしょうが、こちらのような人気店の場合、お一人様なら12時〜13時をはずして利用された方が落ち着いていただけるのでオススメです。では改めてメニューを確認してみましょう。

水ではなく湯呑に入った蕎麦湯が運ばれてくるのも特徴です。飲む人なら豊富なアルコールメニューからお好きなお酒をチョイスして“蕎麦屋で1杯”も粋でしょう。3種類の蕎麦ラインナップの中、もちろん「あつもりそば」(一斤:¥950・一斤半:¥1,000・二斤:¥1,400)です。本来は重さの単位を表す「斤」は最近見かけなくなった蕎麦店用語で、おおむねですが一斤は普通盛り(一人前)、一斤半は大盛り、二斤はメガ盛り(二人前)と思えば問題ないでしょう。今回は蕎麦のみを純粋にいただきますので大盛り相当の一斤半を注文してみました。

初めて訪問される人は「あつもりそば」を食す前に予習しておけば完璧です。もっとも、お店の人から食べ方を教えてもらえますので、予習ナシでもまったく問題ありません。

すぐさまたっぷりの九条ネギとワサビ、生卵のお椀と梅干し、トックリに入れられたアツアツの蕎麦ツユが到着しました。

まずは九条ネギとワサビ、卵のお椀をよく混ぜてから、蕎麦ツユを注いでサックリと混ぜておきましょう。蕎麦本体も間もなくです。

「あつもりそば」(一斤半)が到着。せいろのフタを取るとモウモウと湯気が立ち上ります。蕎麦はかなりの黒さで、蕎麦の香りも強く食欲も高まる逸品。最近なぜかガングロな料理REPORTが続いていますが、さすがに偶然です。では江戸時代には主流であった蒸した蕎麦をいただきましょう。

蕎麦ツユは一般的なものより少し甘めかつ濃厚で、生卵の効果もあってすき焼きのような感覚です。ただすき焼きの割り下ほどの甘さや濃さはなく、老若男女を問わず食べやすいでしょう。コシなどはないもののスルスルと食べやすくアツアツの野性味あふれる蕎麦との相性は抜群。九条ネギの風味やワサビの辛味がアクセントとなっていて、いくらでもいただけます。ざる・もり蕎麦ともかけ蕎麦とも異なる、独特の味わいとちょうど良い温度加減。特に寒い時期、いつもの温かい蕎麦に飽きたときなど、新たな蕎麦の魅力を発見できるのではないでしょうか。一斤半のボリュームも管理人が十分満腹になる量ですので、少食気味の人なら一斤、大食い傾向な人なら二斤でもペロリのハズです。

〆は蕎麦湯。こちらの蕎麦湯もかなり濃厚で、残った蕎麦ツユに注いでいただくと身体の芯まで温まります。大晦日だけでなく普段使いとしても有能な蕎麦店です。地下鉄「丸太町駅」から徒歩2分程度とアクセスも便利ですので、蕎麦の歴史を感じられるこちらで滅多に食べられない蕎麦を味わってみられてはいかがでしょうか。蕎麦は健康にも良い食材のようですから、体調を崩しやすい年末年始に蕎麦で胃腸を整えて元気を保っていただき、明るい2023年(令和5年)をお過ごしください。

[2022年12月23日訪問]

竹邑庵太郎敦盛
●住所…京都市上京区養安町242-12(Google マップ
●TEL…075-256-2665
●定休日…日曜日および祝日、不定休
●備考…喫煙可
●ホームページ…Instagram/Twitter

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