点心厨房 桃花
年末年始の京都市内は雪がほとんど降らず、寒さ的に1月としてはまだマシな気温の日が続いています。しかし例年であれば真冬本番は1月中・下旬から2月いっぱいぐらいまでで、タダでさえ電気やガス、灯油代も値上がりしているのですから、できれば2023年(令和5年)は暖冬を期待したいところ。もっとも、暖冬は暖冬で農作物をはじめさまざまな生物への影響や水資源の減少などが懸念され、決して良いことだらけではないのですが。日本人、特に寒さの厳しい地域に住む人々にとっては冬を耐え抜き、春を待ち焦がれている人がほとんどでしょう。雪が降り積もる時期に咲き始める梅の花、そして春本番を告げる桜の花と、花咲く春を心待ちにされていることでしょう。…イヤ、ちょっと待っていただきたい。梅の開花の後、桜の開花の前に咲く花を皆さんお忘れではないでしょうか。そう、桃の花です。3月3日のひな祭りでこそ一瞬クローズアップされるものの、梅や桜に比べて何となくマイナーな感じがしないでもありませんが、梅や桜に負けていない美しく立派な花を咲かせます。京都市内では京都御所をはじめ首途八幡宮や二条城、梅小路公園などが有名ですので、桃の開花を狙っての京都観光もオススメです。しかし管理人は花より団子を忠実に実践する、花より食を愛でたい派。そこで今回は桃の開花より一足早く桃の花を食の分野で楽しもうと、太秦エリアへと向かいました。
丸太町通と天神川通の交差点(双ヶ丘)を西へ1.5kmほど行ったところにある中華料理店「点心厨房 桃花(てんしんちゅうぼう とうふぁ)」。どうです、桃の花が店名のお店です。桃は中国原産で、中国では三国志演義の「桃園の誓い」をはじめ、さまざまな神話や民話などで古くから語り継がれており、日本でも中華料理店の店名によく付けられています。こちらは2018年(平成30年)3月と桃の開花時期にオープンされたお店で、今年3月で満5周年を迎えられるようです。まだ新しいお店ながら関西ローカルのテレビ番組でも取り上げられているなど、地元の人を中心に人気店となっています。JR「太秦駅」から徒歩7分、嵐電「常盤駅」から徒歩8分程度とアクセスも便利で、店頭には1台分の駐車スペースに加え、提携駐車場として近隣コインパーキング「常盤ほりっちパーキング」の30分サービス券を利用できるなど、車での訪問でも重宝するでしょう。昼の営業時間は11:00〜ラストオーダー14時、夜は17:00〜ラストオーダー20:30となっていて、手軽な町中華店としてだけではなく、本格的な中華料理を堪能することもできます。時刻は13:40、早速店内へ入ってみましょう。
清潔感のある店内には4名テーブル席2卓に2名テーブル席6卓、カウンター6席と、写真では紹介できていませんが完全個室の6名円卓が用意されています。お一人様からグループでの会食など、あらゆるシーンで利用しやすい雰囲気で、最大26名の貸し切りもOKとのこと。このあたりも一般的な町中華店にはない本格志向の対応です。ではメニューを確認してみましょう。
やはりタダモノではないメニュー構成です。「フカヒレの姿煮」¥3,800や「アワビステーキ」¥1,680といった中華の高級料理だけでなく、コースでも比較的リーズナブルで、もちろん単品メニューも手頃な価格設定となっています。数名での会食や、お一人様でも飲む人ならお好きな単品メニューをチョイスするのが満足度も高いのではないでしょうか。ただ、管理人のように単品メニューを欲望のままテキトーに注文するフリースタイルは、ウッカリするとテーブル上に乗り切れないほどの料理が並ぶこととなり、挙句の果てに思ってもいなかったほどの散財をするハメにもなりかねませんので、今回はランチメニューから選びます。ランチメニューは5種類のランチセットと「飲茶セット」¥2,200となっていて、「飲茶セット」を注文しかけたものの“2名様より承ります。”の注意書きを発見。孤独なオッサンの夢は潰えました。ひとりで2人前注文するというアラワザもなくはないものの、新年早々ダイエットを放棄するワケにもいけませんので5種類のランチセットから選び直します。ここはNo.1と書かれた「選べる麺ランチ」¥1,500。麺は「春雨サンラータン」・「四川担々麺」・「あっさり蒸し鶏麺」・「チャーシュー麺」から1種類を選べるため、また悩むのですが、担々麺好きとして「四川担々麺」に決めました。
まずは小菜(前菜や酒肴などの小皿料理)2種類が到着。左はハルサメの酢の物で、右は揚げ豆腐の味噌田楽です。酢の物は上品かつサッパリとした味わいで酢のクセや強さなどはなく、高級店の味わい。男性、特にオッサンはどうも酢の物を苦手とされている人が多いのでは?と疑っているのですが、こちらの酢の物は和食店などのものとは異なり、酢の爽やかさを感じられつつコクもあって食べやすい前菜にふさわしい一品だと感じました。そしてさらに驚いたのが揚げ豆腐の味噌田楽です。厚揚げの表面はカリッと揚げられていて、内部は想像以上にトロットロ。普通の厚揚げと思い込み食べてビックリ、ひょっとしてチーズ?クリーム??と味わったものの、味は豆腐なのです。“こんな厚揚げある?”と疑問を抱き、店員さんに尋ねてみると“店で厚揚げを作っている”とのこと。ナルホド、絹ごし豆腐に粉を振って揚げた、揚げたての自家製厚揚げならこの香ばしい外側とクリーミーな内側の味わいも納得です。濃厚な甜麺醤ベースの味噌との相性も完璧。前菜から丁寧な仕事ぶりだと感心しました。
メインの「四川担々麺」です。スープ表面にはラー油、その下にクリーム色のごまベースのスープのロワイヤルとなっています。担々麺好きとしては、これはもう食べる前からおいしいヤツとわかるビジュアル。具として肉味噌に青梗菜、ナッツ類が乗っていて間違いなく王道の担々麺でしょう。ではスープからいただきます。
もうおいしいに決まっています。ピリ辛なラー油と濃厚でクリーミーな芝麻醤スープがたまりません。あくまで個人的にはピリ辛加減もちょうど良く、寒い時期にうれしい逸品です。京都市内には担々麺の名店が何軒かあるのですが、こちらの担々麺は名店に匹敵するレベルだと言い切れます。正直に白状するとこちらで担々麺を食べるのは初めてで、特に担々麺が知られているワケでもなかったこともあり、この「四川担々麺」を完全に舐めていました。四川料理の代表的なスパイスである花椒もキツめではなく、そこはかとなく香る程度なのも個人的には高評価です。唐辛子や花椒が強めだと最初の一口はおいしいのですが、食べ進むに連れちょっとツラくなります。こちらの「四川担々麺」であれば辛いものがあまり得意ではない管理人でも旨辛を楽しむことができました。
麺は細めの中華麺でコシはありつつスープとよく絡みます。シャキシャキ感の残った青梗菜や旨味たっぷりの肉味噌、香ばしいナッツ類とも本当によく合っていて、スープ・麺・具材のトータルバランスが素晴らしい。担々麺好きなら1回は食べないと損する味です。こちらは店名に“点心厨房”とあるように点心が有名なのですが、この「四川担々麺」を食べて他の料理もいろいろ試してみたいと感じました。
そして点心2種類です。上がエビ焼売、下が豚肉焼売で、セイロで蒸したてアツアツ。そもそも焼売なんてマズいワケありません。しかも蒸したてならテッパンでしょう。もうアツアツをいただくのが正義ですので、四の五の言わずにパクリといただきます。
うっかりエビ焼売の写真を撮らずに食べてしまいましたので、豚肉焼売の写真です。さすがは“点心厨房”だけあって、焼売の皮がトロントロンで最高!口の中でとろけます。そこからエビや豚肉の旨味があふれてきて、もう普通の焼売では満足できないおいしさだと感じました。テーブルには酢醤油と酢、小袋のカラシが備え付けられていて、この酢醤油とカラシがアクセントとなり、点心だけでお腹いっぱいにしたい。でも「四川担々麺」や他の料理も食べたい。そんな葛藤に悶絶する危険なお店です。
デザートの「杏仁豆腐」もおそらく手作りなのでしょう、こちらも高級店のような上品でスッキリとした味わいです。食後のデザートとしてはピッタリで、〆としても申し分ありません。小菜2種類と麺、点心2種類、デザートのどれもが高レベルな高級店クオリティで¥1,500は高くはないと思いました。イヤ、ちょっとしたコース料理と考えればむしろお手頃価格と言えるでしょう。こちらのお客さんはミドルやシニアが多い落ち着いた印象のお店ですが、老若男女を問わず高級中華から馴染み深い大衆中華までを手軽に楽しめます。京都観光などで太秦エリアにお越しの際には、絶品点心や各種料理をお目当てにぜひお立ち寄りください。
[2023年1月9日訪問]
点心厨房 桃花
●住所…京都市右京区太秦開日町2-1(Google マップ)
●TEL…075-406-1992
●定休日…木曜日および第2水曜日
●備考…禁煙
●ホームページ
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