かめや 西店
京都市内屈指の飲食店スポットである「西大路四条」近辺は、西院エリアとも呼ばれています。阪急「西院」駅は「さいいん」えきと読むのに対し、嵐電「西院」駅は「さい」えきが正式名称です。この“さい”の呼び名は、この辺りの地域である「西院」に由来しています。京都市民の昔の人ならだいたいご存知でしょうけど、若い人や他都道府県から引っ越されて来られた人のために、簡単ですが説明しておきましょう。た・だ・し。夏にふさわしくちょっとホラーかも知れませんので、怖いのが苦手な人は下の写真まで飛ばしてください。一般的にはダイワハウス「プレミスト京都西院」ホームページの解説どおりです。表向きには、ですが。そして一説ではあるものの、かなり信憑性の高い説として“この世とあの世の境目”説が挙げられます。京都市内の土地開発が進んだ平安時代、当時の「西大路四条」周辺は人がほぼ住まない辺境の地だったそうです。京都御所から見てかなり西にあり、西とは西方浄土、つまりあの世の住人の地という意味もあったのでしょう、また都合の良い?ことに当時は佐井川という川が流れていました。この平安京の西の辺境にある“佐井川”の河原が“賽の河原”と解釈され、“賽(さい)”が“西院(さい)”の由来となったそうです。“賽の河原”についての解説は割愛いたしますが、西院は1934年(昭和9年)の京都府告示から“さいいん”と公称化されたそうで、以前はおそらく“さい”の呼び名が一般的だったこと、また、近隣の「高山寺」には“西院(さい)之河原 旧跡 高山寺”の石碑があることから、平安時代の人々がこの辺りに“賽の河原”があると信じていたとしても不思議ではありません。とは言え現在の「西大路四条」周辺の西院エリアは、心霊スポットでも怨念渦巻く地域でもありませんのでご安心を。そもそも京都市内は応仁の乱など数々の戦乱のおかげで街全体が心霊スポットのようなモノであり、かなり恐怖な由来の地名なども多数存在していて、ホラー嫌いの人なら京都市内観光なんて絶対ムリなハズです。まして西院エリアは昼夜を問わず人であふれており、あの世の方々も逃げ出すしかありません。そんな「西大路四条」近辺ですが、管理人はどうも呪われているようです。実は今回のREPORTは中華!と決めて出かけたのですが、REPORT予定のお店2軒とも営業していませんでした。1軒目は存在自体がなかったかのように消滅していて、2軒目も定休日ではなかったハズにも関わらず何の貼り紙も出さずにシャッターが閉まっている状態。これはマズい。この日に訪問できなければ7月最初のREPORTはお休みになってしまいます。もう中華にこだわってらんない、と向かった3軒目の洋食店も空き家?状態。すでにメンドーになってきて周辺をブラブラしながらどんな理由で休載のお知らせを書こうかと考えていたとき、ふと1軒のお店が目に飛び込んできました。
四条通と西大路通の交差点(西大路四条)を西へ70mほど行ったところにある、かに・ふぐ料理専門店「かめや 西店(にしてん)」。イヤイヤ、さすがに当ブログでこのテの高級店のREPORTはムリがあり過ぎです。何より管理人は極貧ですのでひとりで入店なんてできません。大昔に、お金持ちの人に連れて行ってもらった記憶は何となくあるような気もするのですが、とにかく今のお財布事情だと食い逃げ確定で即逮捕案件です。ヘタをすればそれこそ西院エリアであの世行き。まぁ、生きているうちに訪問することはないだろうと思いつつ、いつもの習性でボンヤリと店頭の看板を眺めてみます。
オヤっ?こちらはフグとカニのお店だと認識していたのですが、鰻も提供されているのですね。しかも季節限定のお昼のランチ「うなぎ丼」なら赤だし付きで¥1,430、茶碗蒸し付きなら¥1,650と、ギリギリ食い逃げせずに済みそうなお値段です。そうか…昔のフグ店やカニ店は夏場、休業されている店が少なからずありました。フグもカニも鍋需要と密接に関係していて、夏場は極端に客足が遠のくことに加え、夏はフグやカニの仕入れ自体が難しかったためです。最近でこそ冷凍や物流の技術が発達し、季節関係なくフグもカニもいただけるようになったものの、やはり夏に鍋はあまり食べません。そこで夏場の客足減少を食い止めるのが「鰻」なのでしょう。鰻は多くの人が夏に食べるもの、という意識が強いですからね。先日、知り合いから“夏になると鰻が食べたくなるよねぇ”と話しかけられ、“鰻ならお金さえあれば365日でも食べたいわ!”と心の中でつぶやきながら、テキトーに相槌をうっていたことを思い出しました。そう、管理人にとって数ある魚の中でも鰻は別格なのです。イマドキは牛丼チェーン店やコンビニなどでも比較的お手頃価格で鰻をいただけるようになったものの、まだまだ高嶺の花であることは間違いありません。スーパーなどで販売されている鰻でも1尾¥2,000前後、あの業務スーパーですら1尾¥1,000前後と、どれだけお高いことか。そんなお高い鰻丼がこちらのような老舗店で¥1,500前後はかなりリーズナブルでしょう。気づくと吸い込まれるように、店内へ。鰻の寝床のような店内1階は奥に6名テーブル席2卓と4名テーブル席1卓、2名テーブル席1卓のコンパクトさとなっていて、6名テーブル席1卓だけあいている状態でした。ただ、お一人様でも特にランチであれば相席必至なものの利用しやすい雰囲気です。今回はお客さんが多かったたため、店内の写真撮影は断念し、季節限定のお昼のランチ「うなぎ丼(赤だし付き)」を注文。待っている間、管理人にはあまり関係ありませんが一応、夜のメニューを眺めて妄想してみましょう。
やはり鰻以上に高嶺の花であるフグとカニのコース料理が中心のようです。関西、特に大阪の人はフグが大好き。管理人ももちろんおいしいと思いますし、先ごろ閉業された大阪市内の老舗フグ料理チェーン店「ずぼらや」であれば、比較的リーズナブルなお値段でフグを堪能できました。ただ…確かにタイでもヒラメでもない独特の旨味を持つフグはおいしいとは思うものの、白身魚界のナンバーワンかと問われると個人的には疑問符を付けざるを得ません。もっとも、最高級レベルのフグをいただいたことがないため、フグの真価を管理人が判断できないだけだとは思いますが。カニにしても、そりゃおいしいでしょうよ、とは思います。カニクリームコロッケやカニグラタンなどは毎日でも食べたい。しかし…カニ料理の王道であるボイルガニ、もちろんおいしいですが正直、カニの身をほじっては食べ、ほじっては食べをしているうちにメンドクサクなってイヤになるのは管理人だけでしょうか。かと言って昔、カニ食べ放題なるお店へ連れて行かれた際、有能な管理人は業務のようにひたすらカニの身をお皿にためにため、苦労の末、見事自分の取り分のカニの身すべてをお皿テンコモリにして悠々と食べてみたのですが、何だかカニ缶を食べているのとあまり変わらず、イマイチ苦労に見合ってないと腑に落ちなかった経験があります。と、高級食材をここぞとクサしてみましたが、もちろんオゴリであれば喜んでいただきますとも。“お金はあるけど、ひとりでは行きづらいし…誰か一緒に食べてくれないかしら?”という人がいらっしゃれば、ぜひお供させていただきますのでご連絡ください。ただし、オッサンはダメ。もういいオトナなんですから、ひとりでお金にモノをいわせてフグでもカニでも存分に楽しめばいいわ!と妄想ダダ漏れ中に、どうやら鰻丼が運ばれてきたようです。
「うなぎ丼(赤だし付き)」が到着。オオっ、鰻は半身ですね、¥1,500前後なら十分合格です。赤だしに漬物2種、小鉢まで付いて、思った以上に充実しています。まずは赤だしをひと啜り。ウン、うまい、さすが老舗店。こちらは1913年(大正2年)に創業されたそうで、今年で110年以上の歴史をお持ちの由緒正しいお店なのです。赤味噌のコクと、それに負けていないダシの旨味がシミジミおいしい。鰻丼のベストパートナー汁物は、肝吸いを除けば赤だしが一番でしょう。個人的にはマツタケのお吸い物より赤だしが合うような気がするぐらい。決して強がっているワケではありませんよ。そして小鉢はモズク・ナメコ・オクラの酢の物です。モズク・ナメコ・オクラは食材界のヌルヌル3兄弟と言われているとかいないとか、とにかくこのヌルヌルっぷりは他の追随を許しません。ヌルヌルの心地よい食感に強めの酢の酸味が暑い夏にピッタリ。口の中のヌルヌル具合をひとしきり楽しみましたので、いよいよ鰻丼をいただきます。
やはり鰻はおいしい。鰻こそこの世の正義です。こちらの鰻はおそらく関東風でしょうか、ふっくらと焼かれていて口の中で溶けます。そして、さきほどのまでのヌルヌルが嘘のように、鰻の脂の旨味だけが舌に広がる感じです。タレが上品な薄味仕立てなのも高ポイント。鰻自体、クセやイヤな香りなどがまったくないため、この薄味なタレで鰻本来のおいしさを堪能できる逸品でしょう。安っすい鰻だとたま〜にありがちな、フッと香る土臭さやゴムのような皮とはモノが違うのか、それとも調理技術が違うのかはわかりませんが、鰻専門店レベルの味だと感じました。まぁ、管理人はどんな鰻でも大喜びなので、今回のREPORTもあまり参考にしないでください。とにかくリーズナブルでおいしい鰻丼をいただくことができました。こちらは阪急「西院駅」から徒歩2分・嵐電「西院駅」から徒歩3分程度とアクセスも便利なお店です。定休日は月曜日でお昼の営業時間は火曜日を除く11:30〜14時、夜は17時〜22時ですので、鰻・フグ・カニに目がない人は、ぜひ訪問してみてください。鰻・フグ・カニを味わえば、あの世へはなかなか行けないかも知れませんよ。
[2023年7月2日訪問]
かめや 西店
●住所…京都市右京区西院巽町41-1(Google マップ)
●TEL…075-311-8743
●定休日…月曜日
●備考…分煙
●ホームページ
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