香港料理 恵明
“炒飯・焼飯”というと、皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか。中華料理店やラーメン店などでは必ず注文する、という人も少なくないでしょう。中華料理店では〆のご飯ものとして、ラーメン店ではラーメンのサイドメニューとして、特に深く考えず息を吐くように注文してしまう料理ではないでしょうか。また、中華料理店やラーメン店だけでなく、定食店やカジュアル洋食店などでもコソッと?ラインナップされていたり、スーパーやコンビニなどで販売されている冷凍チャーハンもなかなかのクオリティで、もともとは中華料理ながら日本人の食文化に深く根ざした料理と言えそうです。管理人は50歳を超えた今ではもうしませんが、若い頃は小腹がすいたときなど、オヤツ代わりとして大衆中華店で炒飯を注文していたように記憶しています。あくまで若い頃のハナシですが、15時ぐらいに小腹がすいた際には、中華店の炒飯か喫茶店のエビピラフや山菜ピラフがテッパンでした。ただ、年齢を重ねるに連れて、炒飯を食べる機会は意外と少なくなっています。まず、ランチやディナーでボリュームの関係から炒飯単独で注文することはほとんどありません。では青椒肉絲や麻婆豆腐などのサイドメニューとしてはどうか?とも考えるものの、中華のオカズには白メシが最適解です。炒飯を食べるとすれば、せいぜいラーメンや担々麺などの麺類に付ける半チャーハンぐらいでしょうか。若い頃はあれほどお世話になっていた炒飯も最近ではすっかり疎遠気味。炒飯にスポットライトを当てて、主役としてREPORTしたい。そこで今回は、かなり高級な炒飯をREPORTしようと思い立ち、千本丸太町方面へと向かいました。

丸太町通と千本通の交差点(千本丸太町)を西へ90mほど行ったところにある「香港料理 恵明(ほんこんりょうり けいめい)」。店構えと同時に、中華料理でも中国料理でもなく“香港料理”と名乗られているところに高級店の雰囲気が漂っています。日本では中国の四大料理として北京料理・上海料理・広東料理・四川料理が有名ではあるものの、中国料理の最先端を走っているのが中国本土ではなく香港です。あくまで見聞きしたハナシではあるものの、中国料理のトップシェフの多くは香港で腕を振るい、ニューヨークなど海外進出されている人も少なくないのだとか。中国料理の技術の継承と進化は香港から生まれていると言っても過言ではないのだそうです。日本の香港料理店も基本的には高級店が多く、大衆店はほとんど見かけません。しかしこちらは大衆中華店とまではいかないものの、比較的お手頃価格で上質な香港料理をいただける穴場店です。昼の営業時間は11:30〜ラストオーダー13:30、夜は17:30〜ラストオーダー21時となっていて、ランチは特に利用しやすいセットメニューも用意されています。夜は主に一品料理主体のアラカルトとなりますが、多くは¥1,000台ですので、一般的な香港料理店やホテル中華などと比べてもリーズナブルでしょう。時刻は12時、早速店内に入ってみます。


意外と席数多めの店内です。4名ほど座れるカウンター席に2名テーブル席2卓、4名テーブル席3卓、6名テーブル席1卓ほどの収容席数でしょうか。上品な雰囲気で会食やデートなどにも便利です。カウンター席もありますので、お一人様でも利用しやすいと思います。町中華店にはない落ち着いた雰囲気でゆっくりと食事を楽しめるのもポイント。ではランチのみとなりますが、メニューを確認してみましょう。


セットメニューは6種類、一品料理も注文でき、飲茶としても利用できます。「ランチコース」¥3,300(2名様より)は高級食材であるフカヒレを使った「五目入りフカヒレスープ」など7品で、内容的にはリーズナブルではないでしょうか。サテ、今回は炒飯です。実はこちらでは以前、おそらく「C.生姜とねぎ、豚肉入り混ぜ麺(薑葱肉絲撈麵)、デザート」¥1,450をいただいたことがあるのですが、香港風の汁なしそばといった感じで、こちらの実力は知っていました。本当は「F.惠明大豆醬入りビーフ醬油王炒麺(牛肉豉油王炒麵 配自家製黃豆醬)、スープ、デザート」¥1,500にも相当そそられたものの、今回は炒飯です。「D.パイン入り牛ミンチ炒飯(菠蘿生炒牛肉飯)、スープ、デザート」¥1,500に決定。管理人はパイナップルだけが公式には唯一の苦手食材なのですが、本当のことを言うと“パイン入り牛ミンチ”を“パイン牛ミンチ”と勘違いしていました。“パイン牛”とは宮崎県などが主な産地の経産牛のことで、経産牛ながら上質な赤身肉が特徴であり、ブランド牛としてはお安めでスーパーなどでも販売されています。ウッカリ“パイン牛ミンチ”と思い込んで注文してしまったのですが、果たしてその結果やいかに!

まずはスープが運ばれて来ました。この色味と卵とじから察するに、高級中華店やホテル中華では定番スープである中華のコーンスープでしょう。コーンスープと言えば洋食などのコーンポタージュですが、中華のコーンスープもなかなかおいしい。管理人の懐事情では高級中華店やホテル中華へは滅多に訪問できませんので、中華のコーンスープは久しぶり。少しドキドキしながら味わってみます。

あぁ…旨い。コーンの甘みはありながらも、中華スープの濃厚なダシの旨味にウットリとする贅沢な味わいです。炒飯に付きもののスープ、大衆中華店のラーメンスープもおいしいですが、やはりレベルが違います。炒飯に合う合わないはともかくとして、スープだけをじっくりと、そして延々と味わっていたい。とき卵の食感とコクもあいまって、何ならこのスープだけでお腹いっぱいにしたいとさえ思えるおいしさだと感じました。

いよいよ「惠明大豆醬入りビーフ醬油王炒麺(牛肉豉油王炒麵 配自家製黃豆醬)」が到着。最近、老眼が激しい管理人ですが、どう凝視してもパイナップルのようなものはカケラも見つけられません。それ以前に、この炒飯とは思えない香りに食欲が高まります。が、まだ食べません。何と言っても¥1,500の炒飯ですから、ガン見して分析します。具材は卵にタマネギ、刻みネギ、レタス、牛ひき肉とシンプルな内容です。そして牛ひき肉がかなり多い。さすがは¥1,500です。もう観賞用の気分となって観察してしまいましたが、冷めてはせっかくの¥1,500の炒飯を台無しにしてしまいます。¥1,500、¥1,500ととにかく目一杯騒ぎましたのでそれだけで満足、早速アツアツをいただきましょう。

おいしい。まず味付けはオイスターソースなどをメインとした中華らしい味で、塩っぱさ控えめ・旨味たっぷりな贅沢な味わいです。パイン入り?は正直、よくわからずパイナップルが苦手な管理人にはありがたかったのですが、このコクのある甘さはひょっとするとパインナップの効果なのかも知れません。牛ひき肉の旨味にレタスのフレッシュな食感がアクセントとなっていて、高級炒飯といった感じでしょうか。一般的な炒飯とは別物の上質なおいしさだと感じました。そして最もアピールしておきたいのが¥1,500、ではなく、こちらの炒飯はパラパラ系ではない、ということ。そう、以前からガチ中華のお店でも炒飯を食べる機会があったため何となく予想していたのですが、実は中国本土や香港、台湾など本場で作られている炒飯は、それほどパラパラ系ではなく、何ならシットリ系の方が多いのでは?という考察です。シットリ系と言ってもベチャベチャの油分多めなものではなく、水分量少なめな炊き込みご飯に近い食感の炒飯をイメージしてください。管理人はパラパラ系炒飯は喉が詰まりそうになるのであまり好みではないものの、グルメ漫画の金字塔「美味しんぼ」の影響かどうかは知りませんが、“炒飯=パラパラ系”が絶対正義のような風潮はどうも気に入りません。こちらの炒飯ぐらいのシットリ加減だからこそ、米自体の甘みなども味わえると思うのです。管理人が訪問した数少ない高級中華店や、昔から常連客で絶えない町中華店でも、炒飯がパラパラ系だった記憶はほとんどなく、やはり適度な水分量の炒飯こそ王道だとほぼ確信しているのですが、いかがでしょうか。チャーシューとはひと味違う、牛ひき肉の炒飯の旨さを、炒飯好きにこそ味わっていただきたいと思います。

デザートはてっきり杏仁豆腐だと思いきや、何と抹茶プリンでした。食後のデザートまで付くと得した気分になりますね。スープ・炒飯・デザートと、十分メインディッシュとして楽しめる、¥1,500の価値はあるランチセットでした。地下鉄「二条駅」から徒歩9分、JR「二条駅」から徒歩12分程度の場所にありますので、千本丸太町近辺にお越しの際には本格派の香港料理をぜひお試しください。
[2023年10月1日訪問]
香港料理 恵明
●住所…京都市中京区聚楽廻東町3-7(Google マップ)
●TEL…075-822-0339
●定休日…木曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「香港料理 恵明」でご確認ください。
コメント