喫茶スイス
“流行りの料理”と呼ばれる食べ物があります。こんなブログを運営していながら最近の流行などにはまったく詳しくない管理人ですが、昨年の2023年(令和5年)はライスペーパー料理や生ドーナツが流行したのだそうです。少し前であれば肉巻きおにぎりやバーニャカウダ、カヌレなどを思い浮かべますし、もう少し遡るとパンナコッタやティラミスなどバブル期を思い出させる食べ物が話題となっていました。もちろん“流行りの料理”は一人ひとりの主観による部分が大きく、特に最近ではSNSやWebサイトなどでさまざまな料理が取り上げられているため、日本の若者の共通認識的な“流行りの料理”を絞るのは難しくなっているように感じます。ただ、Webが発達する前は旧メディアであるテレビ番組や雑誌の影響がとても強く、昭和の“流行りの料理”は同世代間ではある程度絞れるのではないでしょうか。管理人のような50歳前後世代にとって青春時代に流行った料理として、ぜひ後世まで伝えていただきたいのは「ドリア」です。中高生ぐらいで初めて存在を知り、どうやらオシャレな喫茶店、当時の若者はサテンと称していましたが、オシャレ喫茶店への憧れが募っていました。もっとも、中高生でサテンへ行くのはだいたいの学校では校則違反でしょうから、サテンでドリアを食べるのはかなりハードルが高かったように思います。ここからはあくまで妄想ですが、クリスマスなどの寒い季節、恋人とのデートで映画を見終わった後にサテンへ行き、いつもならサンドイッチやナポリタンなどのスパゲティのくせにちょっとカッコをつけて注文するのが「ドリア」でした。イマドキの若者からすれば“ドリア?ハァ??”と思われるかも知れませんが、50歳前後世代にとって「ドリア」はオトナへの階段をのぼるための青春を象徴する料理だったのです。管理人の場合は単なる妄想なのですが。そんな青春真っ只中の中高生時代の憧れを、50歳を過ぎて叶えたい。そこで今回は、「ドリア」が似合うサテンはこれ以上ない!と断言できる喫茶店へ伺いました。

丸太町通と西大路通の交差点(円町)を西へ580mほど行き、西小路通を南へ420m、新二条通の交差点(藤ノ木町)を西へ60mほど行ったところにある「喫茶スイス」。この外観からして昭和のオシャレ喫茶店なのですが、実はこちらの開業は2022年(令和4年)5月。こちらは以前、40年以上営業されていた昭和の喫茶店「喫茶エルシド」が閉業され、別の人が外観や内装など雰囲気そのままでオープンされたお店です。円町エリアで居住もしくは仕事をしていた人にとって「喫茶エルシド」は街を代表する喫茶店の1軒であり、閉業の際には多くの人が嗚咽したとかしないとか、とにかく管理人も含めて残念に思っていたのではないでしょうか。そんな経緯もあり、こちらがオープンされたときは街の人々が歓喜したハズです。今に合わせてか禁煙となり外観のモチーフと店名、メニューは少し変わりましたが、昭和のノスタルジックなオシャレ喫茶店が令和の時代に生まれ変わったのは、昭和の喫茶店好きの管理人にとっても喜ばしい限り。こちらは11時〜18時の通し営業で、近隣にコインパーキングも多いことから、車などでの訪問にも便利でしょう。時刻は11:30、早速店内へ入ってみます。


「喫茶エルシド」時代とほぼ変わらない店内。これが昭和のオシャレ喫茶店、いわゆるサテンです。壁面にはなぜか「平凡パンチ」の表紙が額装されています。この「平凡パンチ」も昭和の週刊誌として懐かしい…と言いたいところですが、52歳の管理人にとって当然知ってはいたものの少し上の世代の兄さん方が愛読されていた雑誌で、管理人はあまり馴染み深くはありません。イマドキの若者はそもそも雑誌などはあまり読まないかと思いますが、例えるなら女子中高生にとっての「Popteen」、若い女性にとっての「anan」、ミドル世代にとっての「週刊文春」といったところでしょうか。管理人が中高生の頃に愛読していた週刊誌は「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年マガジン」、「週刊ビッグコミックスピリッツ」、「週刊ヤングマガジン」など漫画ばかり。昔も今もウブですので、「平凡パンチ」や「週刊プレイボーイ」はまだ早い、オトナの週刊誌だったと記憶しています。若者にはもはやまったくついていけない?話題ばかりですので、そろそろメニューを確認してみましょう。

“THE サテン”なメニューラインナップです。「ガパオライス」¥800など一部トリッキーなメニューもあるにはありますが、おおむね昭和の喫茶店メニューと言えるでしょう。「レモンスカッシュ」¥550なんて泣けてきますね。当時は“レスカ”なんて呼ばれていましたが、それこそ昭和時代の喫茶店には「コカ・コーラ」とか、今ではその辺のコンビニでも売っているドリンク類が堂々と販売されていました。メニューを眺めているとBGMにまさに管理人の中高生時代に流行っていた歌謡曲やアイドルソング、ニューミュージックなどが聞こえてきます。「おニャン子クラブ」や「小林明子」、「ハウンド・ドッグ」、「中森明菜」…すべて口ずさめるのがむしろ恐ろしいぐらい。このまま管理人の青春真っ只中に浸ってしまいそうですが、メニューを決めなければいけません。今回はもちろん(妄想ながら)青春時代のデートを思い出して「ドリア(ホワイトソース)」と「コーヒー」のセット¥1,100です。

「ドリア(ホワイトソース)」と「コーヒー」が到着。コレ、コレェ!と思わず騒ぎたくなるメニューです。「ドリア」は今でこそメジャーな料理?ですが、30〜40年前はかなりオシャレな料理でした。要するにマカロニグラタンのマカロニをライスに置き換えたライスグラタンであり、洋食メニューではあるものの、どちらかと言えば軽食の部類に属することから多くの喫茶店で提供されていたように記憶しています。「ドリア」のライス部分はお店によってホワイトライス、バターライス、ケチャップライス、デミグラライスなどさまざまなパターンはあるものの、個人的に喫茶店のドリアのライスはホワイトライスかバターライスが好みです。寒い季節にハフハフしながら食べたいオシャレ料理ですので、アツアツのうちにいただきましょう。

あぁ…青春の味。ブランチにピッタリです。この「ドリア」、実は日本生まれの料理で、横浜ホテルニューグランドの初代総料理長だったサリー・ワイルの創作料理なんだとか。西欧諸国には存在しない料理らしく、サリー・ワイルの出身国であるスイスにもない料理だとWikipedeiaに記載されていました。そう言えばこちらの店名「喫茶スイス」はひょっとして、サリー・ワイルから名付けられたのかも知れません。いつものようにまったくウラドリしていませんので、絶対に言いふらさないでください。とにかく、マカロニグラタンより食べごたえのあるドリアは中高生時代を思い出させる料理です。食べているときにかかってきたレベッカの「フレンズ」が(妄想ながら)当時の淡い恋心を思い起こさせます。当ブログをご覧の50歳前後世代の皆様、ぜひこちらの「ドリア」など各種料理をいただきながら、ご自身の青春時代を振り返られてみてはいかがでしょうか。管理人の座席すぐ横の壁にある「平凡パンチ」の表紙も、一般書店に平積みされていたとは思えないとても大らかで寛容な内容となっていましたので、雰囲気、飲み物、料理とともに懐かしい昭和をぜひご堪能ください。

[2024年3月17日 訪問]
喫茶スイス
●住所…京都市中京区西ノ京藤ノ木町6倉橋ビル1F(Google マップ)
●TEL…080-9349-6996
●定休日…月曜日および第1日曜日
●タバコ…禁煙
●交通…JR「円町駅」から徒歩10分程度
●専用駐車場…なし
●ホームページ…Instagram
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