市場関係者に愛され60年営業されている喫茶店

喫茶店・カフェ編
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喫茶ナス

卸売市場、一般でも利用できるいわゆる市場(いちば)ではなく、主に鮮魚店や青果店、飲食店などの食のプロのみが出入りできる市場(しじょう)は一般の人、特に食に興味津々な人にとっては憧れに近い感情があると思います。全国各地にある卸売市場の中でも最も知名度が高いのは、東京都中央卸売市場ではないでしょうか。かつては築地市場が、現在は鮮魚と青果の移転に伴い豊洲市場が中心のように扱われており、テレビ番組などでは卸売市場だけでなく、一般も利用できる場外市場も頻繁に紹介されています。そしてそれ以上に人気なのが、築地市場豊洲市場隣接する飲食店でしょう。多くは市場関係者だけでなく一般の人も利用できるのも人気の要因ですね。ただ、テレビなどで紹介されている築地市場豊洲市場の場外の飲食店は、あくまで管理人の感想に過ぎないものの、観光客向けのお店が少なくない印象です。そもそもなぜ卸売市場に隣接する飲食店に興味があるかと言えば、それは舌が肥えているであろう食のプロたちが日常的に利用していて、間違いない味と確信せざるを得ないからでしょうか。ウニだのトロだのがあふれかえっている海鮮丼¥5,000が日常食なワケありません。市場関係者の全員が全員、ものスゴい高給取りであればわからなくもないですが、そんなことはありません。現に、牛丼チェーン店である「吉野家」の1号店はかつて築地市場内にあり、市場関係者が頻繁に通っていたことから全国展開へと至りました。つまり、市場に隣接しているだけでなく、市場関係者が足繁く通う飲食店こそ、一般人でもリーズナブルでおいしい食事ができるのです。そして、東京都中央卸売市場には到底及ばない規模ながら、京都市にも「京都市中央市場」があります。こちらも卸売市場であり、一部の見学エリアを除いて一般の人は立ち入りできません。まして“今日の晩ごはんはアジにしようかしら”などと近所のスーパーの鮮魚コーナー感覚でお買い物などもできません。しかし、市場に隣接している飲食店は少なくなく、中でも1965年(昭和40年)から営業されていて今年で60年となる、市場関係者などに昔から親しまれてきた喫茶店を今回はREPORTしてみましょう。

七条通大宮通の交差点(大宮七条)を西へ820mほど行ったところにある「喫茶ナス」。「京都市中央市場」だけなく、「京都鉄道博物館」や「京都水族館」がある「梅小路公園」、建物自体や収蔵物などの多くが重要文化財に指定されている「西本願寺」、「龍谷大学大宮キャンパス」など、隠れた?観光スポットが多いエリアにある昭和の喫茶店です。どうです、このレトロな外観は。昭和から平成初期に学生だった人は、こんな感じの喫茶店に入り浸っていた人も少ないないハズです。JR「梅小路京都西駅」から徒歩5分程度の場所にあり、専用駐車場などはないもののコインパーキングも充実していますので、公共交通機関でも車でも利用しやすいでしょう。「京都市中央市場」の休場日はおおむね日曜・祝日と水曜日となっていて、それに合わせて近隣のお店も休業なることも多いのですが、こちらはお盆期間および年末年始を除いて年中無休。働き過ぎのマスターがワンオペで営業されています。しかも月〜土曜日は11時頃〜18時頃、日・祝は17時頃までの通し営業で、遅めのランチも大丈夫。ちなみに食事は11:30ぐらいからのスタートとなっています。管理人も若い頃はたま〜に利用していた昭和の名喫茶店で、気づけば10年近くぶりの訪問となっていました。もう最近、歳を取るのが早い早い。ボンヤリ過ごしているとすぐ御臨終を迎えそうで怖い怖い。まぁ、だからと言って何もできないのですが。時刻は13:50、早速店内へ入ってみましょう。

いかにも昭和の学生がたむろしてそうな喫茶店です。が、こちらは「京都市中央市場」の関係者からも長年親しまれている、ハイレベルな喫茶店であるのは間違いありません。4名テーブル席2卓と3名座れるテーブル席2卓、カウンター席の構成となっていて、お一人様でも安心して利用できます。日曜日などは市場の休場日であることから意外とすいているのも高ポイント。そして昭和の喫茶店らしく喫煙可ですので、タバコが苦手な人は避けられた方が良いでしょう。愛煙家にとっては今では珍しくなった、パラダイスのようなお店ではないでしょうか。店内の雰囲気は激シブで、メニューはコーヒーのみ!な硬派な喫茶店の様相を呈しているものの、実はフードメニューにも定評があります。ではメニューを確認してみましょう。

洋定食6種類にトースト4種類、そして名物なのが8種類ラインナップされている、手作りルーが自慢の「カレーライス」です。洋定食各種もおいしいのですが、こちらへ初めて訪問される人はまず8種類の「カレーライス」をお試しください。自宅で作るカレーとも、喫茶店のカレーとも、洋食店のカレーともビミョーに違う、まさに名物と呼ぶにふさわしいカレーを味わえます。管理人は王道の「ポークカツ・カレー」¥900を注文することが多いのですが、こちらの「ジャンボソーセージ・カレー」¥1,100や定食「ジャンボソーセージ」¥1,100もオススメ。何と言っても手作りのジャンボソーセージで、口の中でジュワッと肉汁があふれる逸品なのです。と言うワケで「ジャンボソーセージ・カレー」を注文するつもりだったのですが、やはり長年の習性を拭うことなどできるハズもなく、注文時つい「ポークカツ・カレー」と言ってしまいました。そう、やはりカツカレーは正義なのです。

「ポークカツ・カレー」が到着。ダムカレー、というより貯水池カレーのようなビジュアルですね。揚げたてサクサクのポークカツはカレーと絶対に合います。そしてキャベツの千切りが隠されているのですが、昔いただいたときはキャベツの千切りではなくザワークラウト(キャベツの酢漬け)だったような気がしないでもありません。現在は千切りキャベツなのか、日によって異なるのかもよくわかりませんが、とにかく金沢カレーの例に漏れず、千切りキャベツとカレーの相性は抜群なのです。では、まずはカレーライスをいただきましょう。

濃厚でスパイシーな辛味が心地良い絶品カレーです。辛いものが苦手な人やお子様にはちょっと厳しいかもですが、個人的にはちょうど良い辛さの塩梅だと感じました。欧風カレー好きな管理人ではあるものの、洋食店の欧風カレーの欠点をあえて挙げるとすれば、それは辛さが足りないこと。管理人は辛いものが好きなワケではなく、どちらかと言えばあまり得意ではない部類だとは思うのですが、それでもカレーにはある程度は辛さがほしい。インドや東南アジアなどの本場系の明らかに辛いカレーは泣きながら完食するレベルの管理人でも、カレーなんだかシチューなんだかよくわからない欧風カレーにはちょっと懐疑的。カレーは辛いからこそカレーなのです。こちらのカレーライスは複雑な旨味と辛さが両立している味であり、オトナならぜひ試していただきたい欧風カレーだと思います。

ポークカツに合わないワケありませんね。やはりカレーライスのオプションの最高峰はトンカツです。もちろんミンチカツやチキンカツ、ハンバーグ、エビフライなども有力候補ではありますが、トンカツには一歩及ばす、といったところでしょうか。トンカツに匹敵する可能性を秘めているとすれば、味は度外視で見た目のビジュアルとインパクトならビーフステーキです。カレーライスにビーフステーキがドーンと乗っていてカツカレーと同額であれば、貧乏な管理人は迷うことなく“最高峰はビフテキです”恥ずかし気もなく言い放っているでしょう。しかし残念、カツカレーとビフテキカレーが同額なのは異世界のお話ですし、そもそもビフテキカレーなんてメニューは洋食店やビストロ、ステーキハウスでもめったにお目にかかれませんので、やはりカレーライスのオプションの最高峰はトンカツと断言できます。そしてスパイシーなカレーとポークカツのマリアージュで考えれば、こちらはカツカレーの最高峰の1軒と言って差し支えないかと。価格も¥1,000前後とリーズナブルですので、こちらの「ポークカツ・カレー」などカレーライス各種もぜひお試しください。

こちらは喫茶店ですのでコーヒーもサイフォンで淹れられた本格派。フードメニューとのセットなら「ブレンドコーヒー(HOT or ICE)」¥200とお値打ち価格でコーヒーを楽しめます。サイフォンコーヒーの特徴でもある、スッキリとした爽やかな味のコーヒーは、昭和の喫茶店の醍醐味。昔の喫茶店のコーヒーはサイフォンかペーパードリップが主流で一部ネルドリップ、ごく一部水出しと、いずれも後味の良さと高貴な香り“さすがはお店のコーヒー”を感じられました。現在の喫茶店やカフェでは多くがコーヒーメーカーを使用されるようになり、個人的には少し残念に感じるコーヒーも見受けられます。もちろん管理人が日々愛飲しているインスタントコーヒーよりは断然おいしいのですが。少なくともコーヒーに関しては、手間暇と比例しておいしくなるような気がしないでもありません。自宅には一応、ペーパードリップ用の器具とコーヒーメーカー、エスプレッソマシンを保有しているものの、コーヒーを淹れる手間がメンドーでいつの間にかインスタントコーヒーばかり飲むようになってしまいましたが、喫茶店では習慣としてのコーヒーではなく、おいしいと思えるコーヒーを楽しみたい。濃厚でスパイシーなカレーの食後に飲む本格派のコーヒーは、ヘタをすればケーキや焼き菓子以上にコーヒーの真価を堪能できると感じました。60年間、今も変わらず営業されている喫茶店で絶品カレーやコーヒーなどをぜひご堪能ください。

[2025年6月8日 訪問]

喫茶ナス
●住所…京都市下京区朱雀裏畑町32(Google マップ
●TEL…075-313-8470
●定休日…なし(盆および年末年始を除く)
●タバコ…喫煙可
●交通…JR「梅小路京都西駅」から徒歩5分程度
●専用駐車場…なし
●ホームページ…なし
※詳しくは食べログ「喫茶ナス」をご確認ください。

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