鳳舞楼
“京都中華の祖”と言えば、当ブログでもたびたびご登場いただいている高華吉氏。京都初となる中華料理店「ハマムラ」で初代総料理長を務められ独立後、「飛雲」「第一楼」を経て自身の集大成となる「鳳舞」を開業されました。京都中華の特徴である“あっさり味”は高華吉氏によって生み出された新発想の中華料理であり、京都市内を中心に広く浸透。高氏が経営する各店で修行された料理人が各地で独立し、それぞれが高氏の味を受け継ぎながら独自の味を提供されています。当ブログでもこれまでいくつかのお店をREPORTしていますが、今回は高氏最後のお弟子さんであり、2015年12月に開業された「鳳舞楼(ほうまいろう)」を訪問してみました。

烏丸通と中立売通の交差点(烏丸中立売)を西へ200mほど行ったところにある、京都ブライトンホテル横の中華料理店です。高氏の味を受け継ぐお店は「飛雲系」または「鳳舞系」(以下、鳳系)とよばれていて、“雲”や“鳳”の字が付いている店名が多いものの、“鳳舞”の名が付けられているのはこちらだけ。また、「鳳舞」閉業時には食器や調度品なども譲られているそうで、いかに信頼されていたかがわかります。今回は近くで用事があり、知り合いと2名で伺うことに。時刻は11:50、早速店内へ入ってみましょう。



1階はカウンター席のみでお一人様でも安心して利用できます。2・3階はテーブル席となっていて、グループでの利用がメイン。2名での訪問にも関わらず2階の4名テーブル席に案内されます。開店5年目ということもあり、まだ新しく清潔感も保たれているように感じました。とりあえずメニューを確認してみましょう。








こちらは鳳系の「広東料理 鳳泉」や「廣東餐館 鳳飛」同様、ランチのセットメニューはありません。ランチでのお一人様利用なら麺類やご飯物1品だけでも十分なボリュームです。今回は2名で複数の料理をシェアする感じにしてみました。注文したのは「韮黄春巻(ニラマキアゲ)」¥1,200と「芙蓉蟹(カニ玉子)」¥1,300、「炒飯(ヤキメシ)」¥800、「撈麺(エビカシワソバ/カラシソバ)」¥950の4品です。

まずは「韮黄春巻(ニラマキアゲ)」が到着。鳳系のお店の春巻は一般的な小麦粉を使った皮ではなく、薄焼き玉子を巻いて揚げるのが特徴で、管理人はあまり好みではありません。しかしこちらの春巻の皮は薄焼き玉子でもなく、一般的な皮でもありませんでした。ひと切れ食べてみると、中の具は鳳系らしいやさしく上品な味わいながら素材の味がしっかりと感じられる贅沢なおいしさです。問題の皮は特定できませんでしたが、湯葉かライスペーパーに近い感じの食感。個人的には薄焼き玉子の皮よりもおいしいと感じました。

次にかつて鳳舞で使用されていた皿に盛られた「芙蓉蟹(カニ玉子)」です。たっぷりとかけられた餡は見た目に反してやはり薄味。こちらも京都中華を代表する鳳系らしい味わいです。ふんわりと焼かれた玉子との相性も抜群。ただ、具のタマネギの量が思った以上に多く、カニの味がわからなくなるほどでちょっと惜しい気がしました。そもそもカニ玉でタマネギっている?という疑問もあります。個人的には青ネギに変えていただきたいと思いつつ、タマネギ好きな方ならきっと満足していただけるのではないでしょうか。

そして「炒飯(ヤキメシ)」。こちらも当然、鳳系らしさ満点のやさしい滋味深い味わいです。もっとも、これまでREPORTしてきた鳳系のお店のものに比べ塩味は少し濃い目で、観光客や近隣オフィスのビジネスパーソン向けに改良されているような気がしました。このチャーハンであれば、ビールなどと一緒にいただいてもおいしいと思います。

最後に鳳系のお店でしか提供されていない「撈麺(エビカシワソバ/カラシソバ)」です。このカラシソバと「椒醤酥鶏(カラシミソ)」¥1,400が鳳系のお店ならではのスペシャリテ2トップでしょう。以前REPORTした「廣東餐館 鳳飛」では「椒醤酥鶏(からし鶏)」をいただきましたが、カラシソバは当ブログで初登場となります。遅すぎでしょ。「広東料理 鳳泉」をREPORTした際は暑い日でカラシソバはスルーしていました。飲食ブログとしては失格です。こういう姿勢がいつまでたっても過疎ブログから脱却できない原因だぞ、と自己反省しながらカラシソバをいただきましょう。

ツーンとするカラシの辛味にやさしくも味わい深い餡に中華麺と具材がからむ絶品な一皿です。エビカシワソバとも呼ばれるだけあって、具のエビや鶏肉、白菜、シイタケなどもたっぷり入っていて栄養的にも優れています。食べた瞬間はインパクトのある辛さが真っ先にくるものの、辛味はスーッと引いて餡と具材の旨味が印象に残る感じでしょうか。このカラシソバを食べたいがために、かつては鳳舞、そして今ではこちらをはじめとする鳳系でカラシソバを提供している各店に、多くのお客さんが訪れているのも納得できますね。
京都御所もすぐ近くにあり、観光客も多いこちらのお店。高級料理も提供されているものの、いい意味で街中華の雰囲気を持たれていて、普段使いでも気軽に訪問できます。烏丸今出川や京都府庁近辺まで来られた際には、京都中華の伝統の味を試してみてはいかがでしょうか。特に「撈麺(エビカシワソバ/カラシソバ)」と「椒醤酥鶏(カラシミソ)」は必食ですよ。
[2019年11月24日訪問]
鳳舞楼
●住所…京都市上京区仕丁町327-7(Google マップ)
●TEL…075-555-5568
●定休日…火曜日
●備考…禁煙(?)
●ホームページ…なし
※詳細は食べログ「鳳舞楼」で検索してください。
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