焼肉ポッサム
鍋料理の季節です。冬はほぼ毎日鍋、というご家庭も多いのではないでしょうか。ひと口に鍋料理と言っても多種多様な鍋料理が存在します。すき焼きやしゃぶしゃぶ、水炊きなどの肉系鍋をはじめ、寄せ鍋やカニ鍋、フグちりといった魚介系鍋も人気で、家族団らんのご馳走でしょう。また、常夜鍋や優作鍋のように単身者でも手軽に楽しめる鍋や、キムチ鍋やトマト鍋、カレー鍋などの新興勢力も定着しています。中でも博多などの福岡県を中心に広まったもつ鍋(ホルモン鍋)は1990年代に東京で火が着き大ブームを巻き起こして今では全国どこでも食べられる人気鍋となりました。一方、もつ(ホルモン)を使った鍋は博多もつ鍋(便宜上、博多の地名を付加しています)だけではありません。管理人は社会人になって最初の数年は大阪市有数のコリアンタウンとして知られるJR「鶴橋駅」から2kmほど近くのエリアに住んでいて、立地柄もあり韓国料理を頻繁に食べていたのですが、寒い時期になると“韓国もつ鍋(コプチャンチョンゴル/韓国ホルモンチゲ)”を食べていました。韓国もつ鍋は韓国料理店で提供される鍋料理で、豆腐チゲや海鮮チゲほどメジャーではないものの、体の芯から温まり、ホルモンパワーで滋養強壮にもなる冬にはうってつけの鍋。ただ、お一人様で鍋はハードルが高く、食べたいと思ってもなかなか食べられなかったのですが、ランチメニューの定食で韓国もつ鍋を提供しているお店を発見!早速、訪問してみることにしました。
西大路通と今出川通の交差点(北野白梅町)を北へ500mほど行き、上立売通の交差点(平野神社前)を西へ30mほど行ったところになる韓国料理店「焼肉ポッサム」。京都市内の桜の名所として有名な「平野神社」から西大路通を挟んで西向かいにあり、立命館大学衣笠キャンパスや京都ナンバーワンの観光スポットである金閣寺、受験生なら志望校合格を願わずにはいられない北野天満宮などから近いこともあって飲食店も少なくないエリアです。管理人は数年前、夜に友人と伺ったことはあるもののランチは初めて。夜は上質な焼肉を中心として韓国料理の一品料理をいただけるお店だったと記憶しています。こちらは立命館大学などの学生だけでなく、在日韓国人も足繁く通う本格的なお店です。韓国料理店ではポピュラーな女性オーナーが経営・調理をされているオモニ(コリア語/韓国・朝鮮語で母の意味)のお店で、オモニというよりはママと呼んだ方がシックリくる女性だと思います。お昼の営業時間は以前はおぼろげながら通し営業だった記憶があったのですが、現在は11:30〜14:30となっているようです。時刻は14時、まずは店頭のランチメニューを確認してみましょう。
ランチメニューは定食10種類で「参鶏湯定食」¥3,000(ハーフ:¥1,600)が最高額。後の9種類は¥1,000前後と利用しやすい価格設定となっています。どの定食も本格的な韓国料理を味わえるラインナップです。韓国料理は辛いものが少なくないため、辛さが苦手な人は「参鶏湯定食」や「プルコギ定食」¥1,180、「テールスープ定食」¥1,280、「石焼ビビンパ定食」「ビビンパ定食」ともに¥1,080などがオススメでしょう。管理人も辛さに弱いひとりですが、今回は当初の予定通り韓国もつ鍋である「ホルモン鍋定食(S)」¥1,180です。辛いのが得意でないクセに辛いのを求めるメンドクサイ性格で50年以上やらしていただいております、テヘペロ♪ では店内へ入ってみましょう。
お昼の営業時間ギリギリにも関わらず、女性グループと男性グループが食事をされています。女性グループはおそらく学生で、男性グループは韓国の人のようです。店内には4名テーブル席2卓と6名テーブル席4卓となっていて、カウンター4席はあるものの荷物置き場?のようになっていました。昼の時間帯のお一人様であればカウンター席に案内されるかも知れません。高級店のような入りにくい雰囲気ではなくカジュアルなお店ですので、特にランチタイムであればお一人様でも利用しやすいのではないでしょうか。店頭のランチメニューだけでなく、昼でも一品料理やアルコールメニューを注文できます。
これなら昼飲みも楽しそうですね。飲んだ〆として夏なら「冷麺」¥1,000、冬なら韓国のお餅スープ「トック」¥1,000や韓国の定番ラーメン「辛ラーメン」¥600も良いでしょう。トックは韓国の餅を指す言葉でスライス状のものをトック、棒状のものをトッポギと区別されています。ちなみに韓国料理店の「冷麺」は日本では韓国冷麺や平壌冷麺と呼ばれる朝鮮半島を本場とする冷たい麺料理で、管理人が大好きな冷やし中華ではありません。関西ではなぜか冷やし中華を冷麺と呼ぶ文化が定着していますが、厳密には冷麺は韓国冷麺や平壌冷麺を指します。広島の人につい“広島風お好み焼き”と言ってしまいキレられた管理人が言うのもナンなのですが、韓国料理店で冷麺を注文して“エッ?コレが冷麺??”などと言うのは慎みましょう。冷たくコクのある牛ダシスープにコシがある麺、梨の爽やかな味と食感がアクセントとなっている韓国冷麺や平壌冷麺は、冷やし中華とは別の、日本人でも好きな人が多い冷たい麺料理。まだ食べたことがない人は夏場にほぼすべての韓国料理店や焼肉店で提供されていますのでお試しください。それでは閉店時間も迫っているため早速「ホルモン鍋定食(S)」を注文してみました。
まずは副菜3種と白菜キムチが到着。副菜は左からモヤシナムル、韓国海苔巻きのキンパ(キムパプ)、カニカマとタマネギのマリネです。この副菜3種はまったく辛くないため、辛い料理を注文してしまった人は、辛い料理の前に副菜を食べ尽くすことだけは控えましょう。辛い料理の箸休めとしてこの副菜はとても有効で、管理人のように副菜をウッカリ食べ尽くすと、ご飯のみを頼りに辛い料理を食べ続けて額から汗の滝&目から涙の滝が噴出して世界一汚い滝を生み出すことにもなりかねません。モヤシナムルはゴマ油香るやさしい味わいで飲む人ならビールが欲しくなるおいしさ。カニカマとタマネギのマリネはマヨネーズが効いたコクがおいしく、辛い料理の箸休めとしては最強です。では日本人にとって最も馴染み深い韓国料理であるキムチをいただきましょう。
しみじみおいしい。日本でキムチはトウガラシ辛い漬物、という印象でしょうが、本場のキムチは辛くないのです。イヤ、辛いのは辛い。“キサマは何を言ってるんだ?”とおっしゃられるのもムリはありません。管理人も“オレサマは何を書いてるんだ?”と思いましたから。ヘタッピな文章で申し訳ございません。ちょっと補足すると、日本のトウガラシと朝鮮半島のトウガラシは辛さの質が異なります。日本のトウガラシは一味唐辛子のようにピリリと舌を刺す辛味な反面、朝鮮半島のものは旨味や甘さも感じるジンワリとする辛さと例えれば大間違いではないでしょう。こちらの白菜キムチは本格派でさまざまな旨味に酸味、風味が立体的な味わいとなっていて、そこからまろやかな辛さが心地よく口の中に浸透してくる感じ。辛いのが得意ではない管理人でも辛さがさほど気にならないおいしさです。“辛いものが苦手なのでキムチはちょっと…”という人にこそ、ぜひ食べていただきたい白菜キムチだと断言できます。
韓国海苔巻きのキンパは日本の海苔巻きをイメージして食べると少し面食らうかも知れません。まず酢飯ではなくゴマ油と塩で調味されたご飯で、こちらのキンパのご飯はモチ米のようなモチモチ食感となっています。巻かれている具材はカニカマに卵焼き、ソーセージ、カマボコ、タクアンでとてもやさしい味わい。例えるのは難しいものの、韓国旅行帰りのお母さんが作ってくれた具だくさんのおにぎりのような感覚でしょうか。キンパは韓国ではファストフードとして食されているそうで、手軽ながら栄養価も高く飽きのこないおいしさ。白菜キムチをつまみつついただくとこたえられません。
いよいよメインのホルモン鍋です。もちろん一人鍋仕様となっていて固形燃料により最後までアツアツなのもうれしい。この地獄のような真っ赤なスープだからこそ寒さに打ち克つことができるのです。日本より寒冷地が多い朝鮮半島で愛されているのもうなずけます。そしてランチメニューの定食類のご飯はお替わり自由。韓国人の男性グループも遠慮することなくお替わりされていました。ただし管理人はご飯のお替わりをしないことで日々のダイエットを実践していますので、いくら辛そうな料理だからといってもご飯のお替わりはいたしません。全然平気。なぜ副菜3種を食べ尽くしてしまったのか…なぜご飯のお替わりをしてはいけないのか…なぜモテないし貧乏なのか……昭和・平成・令和の歌姫・中島みゆきさんの「ファイト!」を心の中で熱唱しながらホルモン鍋をいただきますとも。
このスープが絶品です。白菜やモヤシ、ニラなどの野菜とホルモンのさまざまな部位が溶け込んでいる旨味がスゴい。そしてアツアツで辛さがより強調されるものの、イヤな辛さではありません。ひと口、ふた口と食べ進めるとともに身体がポカポカしてきて寒いときには何よりのご馳走です。ホルモンは牛の小腸や大腸、丸腸といった腸だけでなく、精肉に近い味わいでもホルモンに分類されるハラミ(横隔膜)もたっぷり入っていて食べごたえも抜群。もちろんホルモンの臭みなどは一切ありません。この辛いスープとホルモンの組み合わせは本当においしい。管理人は冬、市販のキムチ鍋スープを購入してキムチ鍋を頻繁に食べています。最近のキムチ鍋スープはとても良くできていてキムチを入れなくてもキムチ鍋を作れるスグレモノですが、こちらのホルモン鍋やチゲ各種などを食べるとやはり本場の味には太刀打ちできないと実感しました。この汁だけでもタッパーに入れて持ち帰りたい。そして自宅でうどんと溶き卵を入れて食べてみたい。残念ながら普段からタッパーを持ち歩くステキな奥様ではないので諦めましたが、そこまで思わせるほどおいしいホルモン鍋なのです。これからしばらくは寒い日が続きます。イヤ、桜の季節になっても花冷えするでしょう。雪化粧の金閣寺や合格祈願の北野天満宮、花吹雪の平野神社などの観光ついでにでも、こちらで本格的な韓国料理や上質な焼肉を味わってみられてはいかがでしょうか。辛いもの好きな人もそうでない人も、きっと満足できるハズですよ。
[2022年12月13日訪問]
焼肉ポッサム
●住所…京都市北区平野八丁柳町68-1(Google マップ)
●TEL…075-464-5339
●定休日…水曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…Facebook
※さらに詳細は食べログ「焼肉 ポッサム」でご確認ください。
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