京都庶民の味を堪能できる東山の食堂・居酒屋

和食編
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古川町 万両

おそらくほとんどの人にとって“家庭の味”があると思います。その土地や地域で親しまれてきた惣菜が多いのでしょうが、“我が家の家庭の味はフライドチキンです”とか“北京ダックしか勝たん”という人もいらっしゃるかも知れません。管理人のような京都の昭和ミドル世代であれば、家庭の味はだいたいが茶色系の地味な料理がズラリと並んでいた、という人も少なくないでしょう。だがこの茶色系の地味な料理こそ、実は京都人が昔から食べてきた郷土料理なのです。京都人にとっての郷土料理は京料理でも鶏白湯ラーメンでも焼肉でもありません。ハモだのマツタケだのといった高級品は京料理の定番食材ですが、そんなものを常食している京都人は一部の大金持ちだけ。多くは「おばんざい」で育ってきました。以前、とある京都市出身の料理上手なベテラン芸人さんが“京都人は「おばんざい」なんて言いません、他都道府県の人だけです”的な発言をされていたと記憶しているのですが、正しくもあり間違いでもあります。確かに管理人だけでなく周囲の明治生まれの年配者も含め、「おばんざい」ではなく「お惣菜」や「オカズ」と言ってました。では「おばんざい」とは何なのか、どこから生まれたのか、についてはかなりの難問であり、「一般社団法人日本おばんざい協会」のおばんざいに関する報告書で詳細に解説されていますので、興味がある人はそちらをご覧ください。超簡単には「おばんざい」という言葉自体は少なくと江戸時代には記録されており、かなり昔の京都人には使われていた言葉であるらしく、1964年(昭和39年)に新聞紙上のコラムで「おばんざい」という連載が始まり全国に広がった、とされているようです。つまり、ひょっとすると京都文化をより色濃く伝えられているご家庭であれば、「おばんざい」を日常的に使用されている可能性もなくはないと考えられます。よって、“京都人はおばんざいなんて言わへんわ〜”一蹴するのは早計であり、もっと深く研究する必要があるのでは?と思うのです。ただ、おばんざいであれお惣菜であれオカズであれ、ケチンボ質素な京都庶民が毎日食べていた味であり、本当の京都料理と言えるのではないでしょうか。そこで今回は、少なくとも管理人にとっては懐かしい味を提供されている食堂・居酒屋へ伺おうと、三条京阪駅方面へと向かいました。

地下鉄「東山駅」の2番出口からすぐのところにある「古川町商店街」。当ブログで商店街と言えば京都三条会商店街の飲食店を多くREPORTし、京都三条会商店街回し者疑惑の被害妄想を起こしてしまうほどですので、今回はどの商店街も応援していることもアピールしつつ、京都市内有数の繁華街である河原町三条から徒歩圏内とアクセス便利な「古川町商店街」に伺いました。今でこそ少し活気がないように感じられるものの、かつては京都錦市場商店街と並び称されるほどの繁盛ぶりで「京の東の台所」とも呼ばれていたそうです。当ブログでは「祇園白川ラーメン」のREPORTで「古川町商店街」へ伺って以来となります。では商店街の中をもう少し南へ進みましょう。

あぁ〜…やはりシャッターが閉まっている率高めですね。京都錦市場商店街のような観光スポット的な商店街というよりは、地元密着型の商店街ですので、日曜日に訪問したのがまずかったのかも知れません。が、立地的には繁華街である河原町三条に近いので、日曜日や祝日は営業されて方が良いのでは…と感じました。映画やテレビ、雑誌のロケ地としても人気だそうで、アーケードに吊るされた1,000個の「パステル提灯」が独特の雰囲気を醸し出し、全国から写真愛好家が集まるとのこと。確かに管理人が伺った際も、観光客らしきカメラを携えた人々が商店街を歩かれていました。では、早速お目当てのお店へ向かいましょう。

三条通東大路通の交差点(東山三条)を東へ80mほど行き、「古川町商店街」を南へ140mほど行ったところにある食堂・居酒屋「古川町 万両(ふるかわちょう まんりょう)」。和モダンな店構えですが、1957年(昭和32年)に先代がコロッケ屋さんを開業され、現在の営業形態に至っています。ランチどきは“おばんざい”を楽しめる日替わり定食をはじめ、うどんや蕎麦などを提供。昼飲みもOKで地元の人などに親しまれています。昼の営業時間は11時〜ラストオーダー14:30、夜は17時〜ラストオーダー20:30で、遅めのランチでも大丈夫。古川町商店街」の観光がてらに立ち寄りたいお店です。時刻は13:15、早速店内へ入ってみましょう。

地元のお父さんたちの飲み会が開催されていました。隣のテーブルでは観光客風?の乳児と幼児連れのファミリーが食事をされているなど、何だか親戚の家へお呼ばれしたようなちょっとワケのわからない状況です。これが地元密着型飲食店のアットホームなところ。もちろんお一人様でも落ち着いて食事できますのでご安心を。清潔感のある店内で女性も利用しやすいお店ではないでしょうか。ではメニューを確認してみましょう。

今回のお目当ては「LUNCH 日替り おばんざい弁当 コーヒー付」¥1,200。小鉢2品に6種類前後の主菜から1品選べるシステムです。うどん・蕎麦各種や「カレー ハヤシ ライス」¥800なども用意されているものの、こちらへ初めての訪問であれば、ぜひ「LUNCH 日替り おばんざい弁当 コーヒー付」をお試しください。こちらはもともとコロッケ屋さんだったこともあり、主菜にはコロッケやミンチカツなどの揚げ物も人気ですが今回のテーマは「おばんざい」、つまり古くから京都庶民に食べ続けられたお惣菜やオカズですので、「鯖のたいたん」に決定。京都人の“たいたん・タイタン”は“炊いたん”、つまり煮物のことを指し、「鯖のたいたん」は煮鯖ですね。全国的に煮鯖は味噌煮が多いそうですが、関西圏では醤油煮が主流。醤油とショウガを効かせたご飯が何杯でも進む煮鯖は京都を代表するおばんざいでしょう。

「LUNCH 日替り おばんざい弁当 コーヒー付」が到着。左上からナス味噌、漬物2種(タクアンと柴漬け)、鯖のたいたん、青菜とシメジのお浸し、厚揚げとダイコンのタイタンと、どれもこれも管理人が子どもの頃に家庭で食べていたおばんざいです。青菜とシメジのお浸しも厚揚げとダイコンのタイタンも、これぞ京都の惣菜らしい薄味仕立てがおいしい。あくまで個人的な感想ですが、野菜系の煮物はダシをしっかりと煮含めて薄味で野菜の旨味を引き出す一方、肉や魚はかなりしっかりめの味付けでご飯のお供にも対応しているのが京都の惣菜の特徴だと思っています。京都だからとナンでもカンでも薄味ではなく、京都の家庭では昔から食材によって味の濃淡を意識していると感じるのですがいかがでしょうか。ではナス味噌をいただきます。

これも子どもの頃から大好きなナスの味噌炒めです。…嘘を付いていました。確かに我が家でもナス味噌は食べていましたが、ナスと味噌、青ネギだけのシンプルオカズだったので、少し見栄を張ってしまいました。こちらのナス味噌は豚コマ肉にタマネギまで入っていて、もはや立派な一品料理。これだけでご飯をワシワシといただけます。豚肉入りの豪勢なナス味噌ですが、ナスと味噌の油炒めだけでも十分にオカズとして成立しますので、今が旬の秋ナスを入手された際にはぜひお試しください。ミリンや砂糖など甘みを隠し味程度に入れるのがコツですよ。

そして主菜の「鯖のたいたん」です。ちょっと小ぶりなサバではあるものの、この甘辛に煮られたサバはやはり京都の味。サバも旬ですので脂が乗っていて、ご飯が進む進む。管理人が子どもの頃は脂の乗った丸々と肥えたサバがお安く販売されていました。煮サバにして冷えると煮汁が半固形状になるほど脂がたっぷりだったものの、最近のサバはどうも小ぶりで煮汁が冷えてもサラサラのままのようなことが多くなった気がして少し残念なのですが、こちらの「鯖のたいたん」は脂の味もしっかりと感じられて久しぶりにおいしい煮サバをいただくことができました。国内の水産業を応援したい気持ちはヤマヤマながら、ご家庭で煮サバを作られるのであれば国内産よりもノルウェー産などの塩サバではない冷凍モノの方が、昔の煮サバの味に近く失敗しづらいかも知れません。

管理人が子どもの頃に食べていたものばかりをいただくことができ、こちらでは未だに京都の食文化がしっかりと根付かれていると実感できました。エスプレッソマシンで淹れられたコーヒーも付いて¥1,200は相当にお値打ちです。京都旅行などの際、華美な京料理もご馳走としてはぜひ体験していただきたいのですが、京都の庶民の味であるこちらのような「おばんざい」もぜひご賞味ください。地下鉄「東山駅」から徒歩2分、京阪「三条駅」から徒歩7分程度ですので、おもむきある「古川町商店街」を散策しながらのランチやディナーなどにオススメの1軒ですよ。

[2023年10月9日訪問]

古川町 万両
●住所…京都市東山区古川町548(Google マップ
●TEL…075-525-2400
●定休日…木曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…Facebook

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