くじら食堂
皆さんは「肉吸い」という料理をご存知でしょうか。大阪市内に住んでいる、または学校や職場などがある人にとっては馴染み深い料理かも知れません。「肉吸い」とはとても簡単に説明すると“肉うどんのうどん抜き”のこと。東日本の人にとっては“???”でしょう。しかし西日本、特に関西のうどんダシは昆布とカツオブシを効かせ、醤油などの塩味を控えた薄味仕立てが主流で、お吸い物よりもわずかに塩気が強いレベルのものも少なくありません。なので、うどん抜きでもダシと具だけで十分に成立するのです。ただ、「肉吸い」を正式なメニューとして提供されている飲食店は大阪がほとんどで、お隣の兵庫県や京都府などではあまり見かけません。「肉吸い」の発祥とされているのは、大阪市中央区の難波にあるうどん店・食堂の「千とせ 本店」と言われています。昭和の時代、当時の吉本新喜劇の看板役者として活躍されていた花紀京さんが、劇場(なんば花月、場所は変わったが現在のNGKの前身)の合間に通っておられたのが「千とせ 本店」で、ある日、二日酔いだった花紀京さんが軽めの食事を取りたいと“肉うどんのうどん抜き”を注文したのが「肉吸い」の始まりだそうです。実はこの“抜き”というメニュー、おそらくですが、全国どこのうどん・蕎麦店でも言えば対応してくれるお店がほとんどではないでしょうか。管理人は“抜き”を注文したことはないものの、以前東京のとある有名蕎麦店で上品そうなシニア紳士が“天抜き(天ぷら蕎麦の蕎麦抜き)”を注文されているのを見たことがあります。ただ、どこのうどん・蕎麦店でも“抜き”は注文できるでしょうが、暗黙のルール?のようなものが存在しますので簡単には注文されない方が良いかも知れません。まず、“抜き”は相当に粋なメニューですので、管理人ごとき50歳過ぎの小僧ではまったくサマにならない。そうですね、人生の年輪が顔に刻まれていながらも欲などは微塵もない、物腰の柔らかなシニアが“天抜きネ”とか言ってそうな感じがベスト。間違っても元気ハツラツな若者やミドルが知ったかぶりをしてエラソーに大声で“天抜き!”などと店員さんに注文するのは大間違いです。そして大事なのが、蕎麦・うどん抜きであろうと正規の料金を当たり前のように支払うこと。蕎麦・うどん分の料金を引いてほしい、などのお願いはカッコ悪いの極みでしかありません。そもそも“抜き”が正式メニューでないのであれば単なるワガママメニューですから、値引きなどを要求するのはご法度です。物事の道理をわきまえた仏や菩薩のようなシニアになって初めて“抜き”を注文できる資格?があると管理人は考えます。しかし、「肉吸い」などが正式メニューの場合は、ヤンチャな若者でもフラフラしているミドルでも堂々と注文してOK。そこで今回は、京都市内では珍しい「肉吸い」を名物とされている定食店・食堂をREPORTしてみました。
五条通(西五条通)と天神川通の交差点(五条天神川)を西へ200mほど行き、北へ90mほど行ったところにある「くじら食堂」。2020年(令和2年)12月にオープンされたニューウェーブ系の定食店・食堂です。店頭には車2台程度が停められ、お店から南東角の石田ガレージにも専用駐車場として1台用意。さらに近隣にはコインパーキングも多く、車でも訪問しやすいお店です。阪急「西京極駅」から徒歩11分程度と、電車でも不便ではありません。“食堂・定食店”というと当ブログでは昭和の昔ながらの激シブなお店ばかりREPORTしていますが、オシャレな食堂・定食店だって知っているんですよ〜とREPORTしてみました。お昼の営業時間は11時〜15時、夜は18時〜20時となっているようで、かなりの人気店として知られています。時刻は18:40、まずは店頭のメニューを確認してみましょう。
今回のお目当ては“迷ったらこれ→”と書かれた「肉吸い定食」¥850です。“牛すじと野菜 特製甘辛タレで炒めました”「スタミナ定食」¥850や“花椒の香りをお楽しみ下さい”「花椒麻婆豆腐定食」¥900も、メニューだけですでにヨダレモノで、この3種類の定食だけでも確かに迷います。しかも昼も夜も楽しめるのが特にお一人様にはありがたい!定食やセットメニューはお昼のみ、夜は一品料理だけというお店も少なくありませんが、管理人のように飲めないお一人様にとってはかなり不便に感じます。こちらのように夜は飲みながら食事を楽しむ人が多いお店でも定食やセットメニューがあれば、もっと多くの人が利用しやすくなると思うのですがいかがでしょうか。では店内へ入ってみましょう。
さすがは人気店、夜の開店から時間がたっていないにも関わらず、すでに8〜9割ぐらいの座席がお客さんで埋まっています。お客さんが多かったため当初は店内撮影を断念する予定でしたが、お客さんが退店されたときに少しだけ撮影できました。カウンター4席と2名テーブル席3卓、4名テーブル席1卓の店内はまるでカフェのような清潔感のあるシンプルな内装。女性のお一人様でも利用しやすいでしょう。カウンター奥の白い壁には多くのサインが書かれていました。管理人の勉強不足でどなたのサインかは存じ上げませんが、一番右のサインだけは何となくわかったような気が。“ドクターY”と書かれていてサインから推察するに、俳優の勝村政信さんではないでしょうか。管理人はテレビドラマ「ドクターY~外科医・加地秀樹」のファンでしたので、ほぼ特定できました。こんな有名人まで来店されているお店ですので、人気店なのもうなずけます。では、少し見づらくて申し訳ございませんが、改めてメニューを確認してみましょう。
豊富な定食類だけでなく、カレーや丼、うどんも用意されていて価格もリーズナブル。定食類なども含めて¥1,000を超えるものはわずかしかありません。定食も和洋中と揃っているだけでなく、「やんにょん卵」¥100といった韓国風の料理も見受けられます。「やんにょん卵」とは一般的には「ヤンニョム卵」と呼ばれ、煮玉子の形式が多いようです。韓国風のタレで浸けられた半熟玉子ですが、こちらでは生卵となっています。和洋中に韓国風とバラエティ豊かなメニューラインナップですので、当ブログでは「その他料理編」カテゴリーでREPORTしておきましょう。サテ、今回は予定通り「肉吸い定食」です。「やんにょん卵」が付くほか、唐揚げ2個またはアジフライ1枚も付いて¥850は相当にお値打ちです。アジフライをチョイスして「肉吸い定食」を注文してみました。
「肉吸い定食(やんにょん卵・アジフライ)」が到着。デカ盛りではないものの、なかなかにボリューミーではあります。ナルホド、「やんにょん卵」はよくかき混ぜて、卵かけご飯にしていただくのですね。付け合せのマカロニサラダもカレー風味の味わいで、食欲が高まります。漬け物の柴漬けも地味にうれしい。ではメインの「肉吸い」をいただきましょう。
カツオの風味が際立つダシが素晴らしい。具は牛肉に豆腐、青ネギとシンプルなものの、京都市内の一般的な肉うどんよりはわずかに強めの塩加減で、ご飯のオカズとしても十分に楽しめます。牛肉はバラ肉でしょうか、牛の脂の甘みと肉の旨味をしっかりと楽しめ、おそらく絹ごし豆腐であろうなめらかな豆腐と青ネギが良いアクセント。ズルズルと肉吸いをいただきながらご飯を食べると、心までホッとします。卓上には一味唐辛子も常備されているため、味変に一味唐辛子をプラスしてピリ辛にしても最高です。管理人はアルコール類を嗜みませんが、飲む人なら飲んだ〆に食べても満足できるのではないでしょうか。
アジフライはふっくら肉厚でカラリと揚げられていて、夏のご馳走です。やはりアジは夏に限ります。タルタルソースとの相性も抜群。卓上にはウスターソースや醤油も置かれていますので、管理人のようなタルタル派だけでなく、ソース派・醤油派の人にもピッタリです。アツアツ揚げたての大きなアジフライの贅沢な味わいを堪能することができました。
「やんにょん卵」の卵かけご飯です。これはおいしいに決まっています。卵かけご飯好きにはたまらないでしょう。この韓国風のタレの味わいとわずかなピリ辛、ノリの磯の風味が生卵のコクとあいまって、これだけで立派な一品料理となっています。卵かけご飯と侮るなかれ、自宅では再現が難しいお店の味わいです。この「肉吸い定食」は、頑張れば自宅でも再現できそうな気がしないでもありませんが、相当に面倒ですし、第一食材を揃えるだけでも¥1,000は超えるでしょう。そう、1〜2名の家庭なら外食の方が手軽にお安く食事できるのです。最近、余計なお金にならない仕事で忙しくてテキトーに自炊することが増えた管理人ですが、外食は手軽だの安いだの以前に、自分の手料理より圧倒的においしい。こちらのように夜でも定食類を気軽にいただけるお店が近所にあれば、ほぼ毎日でも通いたくなります。こちらは日曜日が定休日でお盆休みは8/14〜16のようですので、夏バテ気味で食事を作るのも面倒なときは日曜日とお盆の3日間をはずして、肉吸いをはじめ各種定食類やカレー、丼、うどんなどをぜひご賞味してください。
[2023年8月9日訪問]
くじら食堂
●住所…京都市右京区西京極郡町46 ラビットハイツ1F(Google マップ)
●TEL…080-1151-0920
●定休日…日曜日
●備考…禁煙
●ホームページ…Instagram
コメント